87話 愚神の子
「おっしゃぁぁぁぁ!!全員のセット装備ゲットぉぉぉぉ!!」
私は声高々にガッツポーズを決めた。
すでに試練の道もかなり終盤まできているはずだ。
なぜってセット装備が揃ったからね!
大体全部の武器・防具が出揃った所で最後に、デデデン!と一番強いモンスターが控えているのは、この手のゲームの主流なのだ。
ちなみに。リリもコロネもレベルが1100になったので1200の武器・防具を装備している。
まぁ、流石に私の装備もセット効果があるものはSS装備だ。SSR全部揃えるとか無理ゲー。
「ね、ねこ様……一度是非休憩を……」
ゼェゼェ肩で息をしながらアルファーが呟く。
敵のヘイト(敵の攻撃ターゲット)を集める仕事のアルファーが一番疲労が濃いらしい。
「sion!アルファーに疲労回復の薬あげてくれるか?
あと他のみんなもとりあえず飲んでおこう」
私が言うと、何故か全員に「こいつ鬼だ!?」みたいな目で見られたが、気にしないことにする。
ダンジョン攻略とは常に非情なのだよ。
ゲーム中ではわりと、日常的な事だったし。
よく一緒に狩りしてた、仲良かった別ギルドの友達にも鬼畜とか鬼とか言われたしね!
なんだかVRMMO時代の事を思い出し、少し懐かしくなる。
みんな元気にしているだろうか?
まぁ、神様の件が気になるからあまりノンビリできないというのもあるけれど。
「そろそろ次は神龍あたりがでてきそうっすね」
腰掛けてポーションを飲むアルファーの横で遠くを見るようなポーズをとりながらsionがいう。
そう、この試練の道、神界の手前はレベル1200の神龍がラスボスのはずなのである。
以前、リリがカエサルに殺されそうになったとき、リリが召喚しようとしたドラゴンだ。
「ねね、ネコ」
その言葉にリリがひょいひょいと私のマントを引っ張った。
「うん?どうしたリリ?」
「えと リリ その戦いはちょっと…… オメメつぶっててもいい?」
申し訳なさそうに聞いてくる。
ホワイトドラゴンにとって神龍は私たちでいう神様のような存在なのだろう。
いくらシステムで縛られているとはいえ、倒されるところは見たくないとみえる。
「ああ、わかったじゃあコロネの隣にちゃんといるんだぞ?」
「うん!」
リリは嬉しそうに微笑むのだった。
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『よく来た 冒険者達よ ここまで来たことを誇りに思うがいい
我も全力をもって其方たちと合間見えよう――。
其方たちが、真に神々に会うにふさわしいか――試してみせようぞ!!』
黄金色に輝く神秘的な龍が咆哮をあげる。
それが――戦いの合図だった。
……が、わりとその戦いはあっさり終わる。
私達の圧勝で。
うん、別に神龍さんが弱かったわけではない。
ここはフォローさせてもらおう。
自分で言うのもなんだが、私たちが強すぎたのだ。
もう私も適正レベルの1200だし。守護天使たちも私と同レベルなので1200だ。
しかも全員硬質化を覚えてるし、並行思念まで覚えてるときてる。
そこにきて、コロネの魔法やsionのポーションアイテムの力アップやら素早さアップやらの補助効果つきだ。
神龍さんはシステムに縛られているせいで、わりとゲームのパターンが通用したため、動きが読みやすく楽勝だったのだ。
「神龍さま……よわい……」
リリが倒された神龍を複雑な表情で視ている。
ご、ごめんよ神龍様!威厳のために演技でももうちょっと苦戦してあげるべきだったかもしれない。
ちなみに、神龍さんからドロップしたのはSSRの剣装備だった。
うん。誰も剣装備できないから、いらんがな。
にしても、まてよ……ひょっとして神龍ドロップは全部SSRか!?
ならもう一回!!
私が思ったそう瞬間。
私たちは強制イベントで神界へとワープしてしまうのだった。
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強制イベントでついたそこは……とても美しい景色が広がっていた。
水晶のように光り輝くなにかで作られたものすごく天井の高い神殿。
神々の装飾だろうか、天使や女性や子供の石像が所狭しと装飾された壁がまるで天をつくかの勢いで上に伸びている。
そしてその天井は……あまりにも高すぎて私の視力では見ることができない。
また円上に一面に広がる水晶でできた神殿のような部屋には……かつて過去のコロネの部屋でみたような水晶に閉じ込められた状態で、眠る神々の姿があった。
つい先日、sionが見せてくれた映像にいた、光の神と闇の女神の姿もそこにある。
そして……過去のコロネのイベントムービーで見た、金髪美女の水晶もそこにはあるのだ。
私が思わずコロネの方を見るが、
「まさか……本当に神々が捕らえられていたとは」
と驚きの声をあげるだけだった。
その時――
「ネコ 異界の女神に似た何かが来る!」
リリが構えてそう言ったその瞬間。
アルファーがヘイトを集めるために、全ての攻撃が自分に向くようにスキルを発揮し――
「――ーぐっ!?」
突如アルファーが苦しみだした。
「なっ!?アルファー!?」
「がっ!!ぐはっ!!」
盛大に血を吐きながら、アルファーが倒れ込む。
その体は痙攣し、目はすでに光はなく、焦点があっていない。
「ね……こさま…お逃げ……くだ……」
痛みに悶えながらアルファーが私に手を伸ばす。
「ファルティナ!!アルファーに回復を!!」
そう言ってファルティナに私が振り返った途端。
ファルティナも血を吐きながらその場に倒れ込んだ。
レイスリーネも同じ症状で血を吐きながらその場に倒れ込む。
「く!!一体なにが!?」
鑑定しても守護天使達に状態異常は見られない。
コロネが慌てて、三人を石化し、私が3人をアイテムボックスにしまい込む。
「な、なにがどうなってるんですっ!?」
sionがガクブルしながら辺を見回すと――。
「やっと来たのね。愚神の子らよ。
私を待たせるとはいい度胸だわ」
言いながら、現れたのは――神々しい光をまとった女神のような女だった。




