二話 邂逅
「ん・・・?ここは・・・?」
目を覚ました。微妙な不快感とともに、体を起こす。
わずかに木の葉っぱがすれる音が聞こえ、思わず周りを見渡すと、どこかの山中のようだ。
木々は揺れ、葉っぱは風のせいでパラパラと落ちており、すこし地面がぬかるんでいた。ばっちぃ。
しかし、虫の気配がしなかった。不思議だ。
すこし日が沈みそうな角度まで落ち込んでいる。
「なんだ・・・?ここは・・・?」
小学校の時によく森に行ったものだが、雨が降る前日や雨上がりになると蚊が蚊柱という球状の群れを作る。
森ならなおさら作ってもいいと思うのだが。
記憶を確認する。
「たしか・・・学校に行く途中で・・・トラックに轢かれそうになったんだよね・・・・?」
うる覚えだったが、比較的鮮明に記憶となって思い出せた。
ガサゴソ!
背後から草むらが揺れる音がした。
振り返ると、
緑色の肌をしたずんぐりした小人が居た。いや、こう形容するほうがいいだろう。
ゴブリンが居た。
ここで思考がフル回転する。
なぜ??え??VR???最近の流行りのVRchatですか????ケモミミが普通居る世界じゃないの????
一つの結論に至る。
異世界転移。これだ。ゴブリン(?)にジャギーがなさすぎる。
取り合えず、こう考えることにした。
きっと夢であることも含めて。
ではどうするか。
戦います。
手元にある石をゴブリンに向けて投げた。
中学時代は野球部だった経験もあってか、胸のあたりにクリーンヒットした。
しかし、ゴブリンはものともしなかった。むしろ緑色の顔面がわずかに赤く変化しているのが分かった。
どうやら怒っているらしい。
ゴブリンの持っている槍らしきものをこちらに突き立て、突撃してきた。
あ、これよけてもダメな奴だ。渾身のストレートがだめだったわ、
逃げようとしたその時、
横から火の玉が飛んできた。そのままゴブリンの胴体に直撃し、纏っていたゴブリンの服替わりの布切れが燃えていく。ゴブリンは突撃をやめ、火を消そうとぐるぐる地面をのたうち回るが、勢いはなぜか変わらなかった。
そして、ゴブリンはそのまま動くのをやめてしまった。
息絶えたようだ。
確かではないが、たしか体全体に炎が包まれると炎が原因で死ぬのではなく、酸欠によって死ぬのだと聞いた覚えがある。
冷静に、この異世界に酸素と酸欠があるのだな、と認識した。
「大丈夫かしら~?」
すると遠くから女性の声が聞こえてきた。声の方向は夕日がしずみかけており、姿はシルエットでしか見えなかった。