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砂漠の少女   作者: 海月
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またあの季節


今日も日差しがあつい。

この時期はあんまり好きじゃない。体を溶かしてしまいそうなほどの太陽の陽の中、今日もスーツを綺麗に着こなして、出来る女を装ってるかのように7センチのヒールを履いて出勤。昼間の夏は、ただただ暑いだけで嫌い。


「おはようございます、桐生さん!今日も暑いですね〜」


後輩の真中くんが声をかけてきた。爽やかな感じで、モテそうな彼は、いつも明るい。


「おはよう、真中くん。あなたはこの暑さを感じさせないほど今日も元気ね。若さかしら。」


「何ゆってるんですか(笑)あんまり年変わらないじゃないですか(笑)」


「女の老化は17歳。男の老化は18歳。女の方が早くに老化してるし、体力も男ほどないから低下もはやいのよ。私にそんな若さがいつまであったかなんて思い出せないわ。」


性格には温度差のある組み合わせだが、意外と相性は良いみたい。彼はどんな人とでもこんな感じで接してる。私のようにあまり笑わない性格でも彼と話すのは嫌いじゃない。もちろん、彼のように明るいタイプの女子も彼のことが好きらしく、バレンタインの日の彼のデスクはたくさんのチョコで鮮やかに装飾されてる。


「俺は、桐生さんクールでかっこいいと思います!」


「それは笑わないって意味?(笑)」


「違いますよ、素直になりましょうよ(笑)」


「私はいつでも素直よ?(ニコ 」


「そーゆーときだけ笑うんすから〜(笑)まぁ、そこがいいとこでもありますけどね!」


それを思ってるのは多分君だけだよ、真中くん。なんて、心の中で思いながら資料をまとめる。午後から会議があるからその準備もしなくてはならない。広告代理店の仕事で、毎日がハード。クライアントの要望は、コロコロ変わったりするし、正直ムカつくことも多い。けど、この仕事は嫌いじゃない。やりがいがあって楽しいし、何より忙しいから余計なことは考えなくて済む。特にこの季節は...。




無事に会議を終え、久しぶりに夕方ごろに退勤。外に出ると、うっすらと暗くなってきて、駅前の提灯が少し明かりを灯している。夏祭りが近いのだろう。その提灯をただ遠くから眺めていた。夏の匂いがする。この夏の匂いは嫌いじゃなかった。でも、数年前からは1番嫌いな匂いになってしまった。


「桐生さん〜お疲れさまです!」


呆然としていたが、真中くんの声で我に帰る。横には同期で、多分仲のいい妃里がいた。


「お疲れ様。あら、妃里もいたのね。」


「何よ、その感じ(笑)相変わらず一言多いんだから!」


「桐生さん、何見てたんですか?」


「大したものじゃないわ。ただ、提灯があるからお祭りが近いんだなって思っただけよ。」


「あ〜〜そういやそうね。私、今度彼氏と行くわ〜。暑いのに浴衣着ろとか言うのよね。浴衣どこやったっけな。」と、タバコを片手にめんどくさそうに話す。こんな駅前で堂々とOLが吸おうとするなよと言おうとしたところで真中くんが


「そーそー!桐生さん、この後飲み行きません?ちょうど宮村さんと話してたんですよ!」


と、飲み会に誘ってきた。


「暑いからビール飲みたいのよ。付き合いなさいよ、椿。」


「嬉しいけど、今日はパス。」


「何?予定でもあるの?まさか、男?(笑)」


「え!桐生さん、彼氏いるんですか?!」


「そーよ男。家に愛しい男が待ってるから帰るわね」


そういって、妃里に無理やり連れてかれないようにさっさと、その場を離れる。今日みたいな夏の空気が強い日は、飲みになんか行かない。しかし、飲み会を断る口実に嘘は1つもついていない。


*

*

*


「ああ〜もう、椿のやつ。付き合い悪いわよねぇ。もう!!!真中くん今日は飲むわよ!!!!」


「....... 桐生さん、なんかいつもと違いましたよね」


「そうねぇ〜〜....。あ、そういやもうそんな時期なのか」


「え?時期ってなんですか?」


「ん?あ〜〜夏祭り。」


「祭り?提灯ずっと見てましたよね。何があるんですか?」


「どうなのかしらね?笑」


「えええ。てか、桐生さんって彼氏いたんですね。」


「あ〜〜笑笑 まぁいたのかしらね笑笑 ちっこい男が笑笑」


「え?!!!子供?!!!!」


「真中〜〜笑笑笑 お前ってやつは最高 笑笑 さっ!飲むわよ!潰れとけ!笑」


「ちょっ!宮村さんっ!!!」


僕は、そのまま何一つ、いやむしろ大きな疑問を残しながら宮村さんに飲まされ続けた。飲みすぎて、頭の中がわからなくなって、ふと意識のはっきりしない中思い出す。提灯を遠くから切なそうに、大切な思い出を思い出すかのように眺める彼女の姿を。いつもとは違う彼女の姿を。











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