TS転生エルフのずっと引きこもり日記4
飛行挺がゆっくりと廃坑の底に舞い降りる。
一緒に飛んできた蝶もヒラヒラと舞い降りた。
何て幻想的なんだろう。
髭男どもにかこまれて思った。
飛行挺からあの女魔法使いが中年男性にエスコートされて降りてきた。
「あら、わざわざお出迎えしてくれたのね、カマエルフさん。」
まるで女王のように豪奢な毛皮をまとった魔法使いが嫌な感じに笑った。
「商品の体調管理も気を付けなければいけないよ、オルラータ。」
底知れない笑みを浮かべて男性が言った。
「あら、カマエルフさんはいわばおまけでしょう?」
魔法使いがふくれたようにいった。
そうだ…オルラータだよ…たしかそんな名前だった。
「大事なおまけですよ、オルラータ嬢。」
飛行挺のタラップから降りる見慣れた顔が…。
「アリアン陛下…。」
私は呟いた。
朱金の肩につく髪を一つにまとめた、朱金の瞳のウライシア工業国の美形の王が降り立った。
「やあ、僕の最愛の花嫁パルラ、狂犬共々引き取りに来たよ。」
アリアン陛下がにこりと笑った。
見惚れるはずの女性はふん、と言う顔でアリアン陛下を見た。
「契約通りに武器を卸していただきましたのでお好きにどうぞ、これで破滅の魔女として役割が果たせますもの。」
オルラータが言った。
中年男性は通信機を確認しだした。
飛行挺からアリアン陛下の部下らしき人々が現れる。
しかし…黒眼鏡に作業用つなぎにキャップって誰が誰だがわからない不気味さがあるな…。
…は、破滅の魔女?なに?そのイッチャッテる名前。
「では遠慮なく、パルラとハミルトン君はもらっていくよ、邪神ルートシルの復活を目論む破滅の魔女さん。」
アリアン陛下が艶やかに笑った。
もう一つの小屋からハミルトンさんが引き出されてくるのが見えた。
あのサディストが不本意そうなところをみると最高級の防御の魔法はきいているらしい。
アリアン陛下がついてきた部下に拘束されたハミルトンさんを受け取るように指示をだした。
「まったく…役に立たない男でしたよ。」
サディストがハミルトンさんを蹴った。
逆に痛そうな顔をしている…本当に防御魔法がきいてるらしい。
ハミルトンさんはなにもいわない。
「僕の幸せには必要だよ、パルラへの人質になるからね。」
アリアン陛下がそう言って部下にハミルトンさんを回収させた。
たしかに足かせになる…なんとか助けないと。
「しょせん仮初めの幸せでしょうけど…あのお方が復活されれば世界は再び混沌に戻るのですもの。」
オルラータがどこかイッチャッテる笑みを浮かべた。
邪神ルートシル…どっかで聞いたような…。
『ええ?ルートシル君の役目終わってるんだけどな…本人もて…こっちのはなしだよ、破滅の魔女か…学生が言い出しそうな2つ名だよね。』
グラが言った。
なんかしってるのなら教えてよ。
『おしえたいけど…世界の根幹に関わることだから…シャクラスアいたの?え?髭映像を今度の創造に使いたい?やめなよ、ごめん、パルラ、またあとでね。』
グラは向こうにいった。
シャクラスア神って時読神(月神)だっけ?創造と狂気を司ってる…天界どうなってるんだろう?
「どうしましたの?ショックのあまり固まりましたの?」
オルラータが目の前に来て言った。
「…破滅の魔女、なのですか?」
グラは心当たりないみたいだけど。
「そうですわ!麗しき邪神ルートシル様の最愛の愛人破滅の魔女オルセノアの生まれ変わりですの、あなたのような平凡なカマエルフと違いますのよ。」
誇らしげにいってオルラータは高笑いをした。
なんか設定に酔ってるみたいだな…私だって一応最高神グラ…なんだっけかのお墨付きを頂いた覇王の男嫁なんですけど…覇王の男嫁なるつもりないけどね…。
私の最愛の人はラルーナ陛下だし。
「ルートシル様ご復活の玉体はラルーナ陛下と決めておりますの、本当に邪魔ものがいなくなってよかったわ。」
上機嫌で自称破滅の魔女が言った。
ラルーナ陛下を…へんな邪神の餌食に?
「そんなことさせない。」
私はつぶやいた。
絶対に…私の大事な伴侶を守る。
何が出来る?うん、出来る、みんなが油断してるか弱いカマエルフの私なら。
「もったいないことだ、アリアン王の餌食とはな…。」
オイアグッダがそういって私に顔を近づけた。
「おい、オイアグッダ、優男なんぞに近ずくな、この悪趣味。」
アカゼンが引き戻した。
「アカゼンの方が悪趣味だと…まああの最高位の再生巫女は小柄で丸々しくて可愛いと言えば可愛いがな…。」
アカゼンににらみ付けられて長さまがたじろいだ。
油断してる…とりあえず…火の魔法を…風の魔法に合わせて…。
二つの魔法を練る調理ならいくらでもしてきた。
人を攻撃したことなんてない。
あの廃屋に力を集中して。
「さて、そろそろ行こうか、パルラ?」
アリアン陛下と部下が私近づく。
髭男たちが左右に別れた。
「ラルーナ様には男性にまずなっていただかなくては。」
オルラータがうっとり言った。
ラルーナ陛下を…そんなことさせない!
その瞬間に魔法の制御を忘れた。
一気に炎が廃屋焼き尽くす。
「な、オルラータ!何かしたかい?」
中年男性が慌てたように言った。
炎が風にのって次々に燃え移る。
「なにもしていませんわ、カマエルフさんの方からかしら?」
自称破滅の魔女が私に手のひらを向けた。
そして力が放たれる。
この前の衝撃を思い出して構えた。
「パルラに危害を加えたら許さない。」
誰かが私の前にたった。
キャップが吹き飛んで白銀の髪が目の前で散った。
そのまま抱き込まれて押し倒される。
魔法の衝撃が後ろの小屋の屋根を吹き飛ばすのがスローモーションのようにみえた。
「大丈夫か!」
黒銀の目が真剣に私を見つめる。
「ラルーナ陛下?」
私はやっと声を出した。
「ああ、遅くなってすまない。」
ラルーナ陛下がそういって私を抱きしめて立ち上がった。
「アリアン陛下、いったいどういう訳ですかね!?」
中年男性があわてて叫んだ。
「本当に派手なご登場だね、犯罪に手を貸しても利益はあがらないからね。」
ニコニコとアリアン陛下が言った。
部下たちが武器を髭男と中年男性と自称破滅の魔女に向けた。
「まあ、いいですわ、ラルーナ様をさらいにいく手間が省けましたもの、皆様、どうぞおくたばりくださいませ。」
破滅の魔女が妖しく微笑んで力を放った。
周囲が閃光と爆音に包まれる。
怖い…でも…私を抱きしめてくれる人…。
ラルーナ陛下がいるだけで…。
それだけでこのまま逝ってもいい…。
でも、ラルーナ陛下と生きたいから諦めない。
私は自分でできる限りの防御魔法を使った。
味方も敵も誰彼構わず多い尽くす。
選定できないし…ぐちゃぐちゃいやだもん。
フラフラになった頃に徐々に光が収まってきた。
うん、絶対に生きてかえってラルーナ陛下とみんなと幸せになるんだ
駄文を読んでいただきありがとうございます。