覇王伝のはずが溺愛伝説3
本日はラルーナ陛下目線です。
このタヌキ…いや大アライグマどもめ。
「ラルーナ陛下、この度のご訪問は急でございました、何かあったのでございますか?」
ニコニコと愛想笑いを浮かべてフーマエルン峡谷国外交担当者が言った。
ひげに埋まった目が油断なく光ってるのが見えた。
「妹がしばらく世話になっている、様子をみにきただけだが。」
曖昧な笑みを浮かべて答えた。
ラミアーナからはアーティーの谷のそばの廃坑に騎士どもが出入りしてるのを突き止めたと聞いた。
それまでにセクハラ何百回っていってたな…あとでなんか請求されそうだが…どうせ戦闘事務官の能力で乗り切ったのだろうからまけてくれないだろうか?
「ラミアーナ様はいずれ陛下のお妃様になられるかたですので。」
外交担当者がニコニコ言った。
フーマエルンのアライグマ…本当によくわからん趣味だ。
容貌的にどうみても男な妹にけそうするとは…まあ、私も容貌的には男だが…パルラはきれいですと優しく抱き締めて…今はそんなこと思い出している場合ではないな。
「……そうか、では親戚にいずれなると言うことか。」
フーマエルンのアライグマが義弟…それはちょっと嫌だな…。
「ええ、チエアイス武王国と一緒に発展していきましょう。」
外交担当者が笑った。
「それは国の考えか?」
私は外交担当者を見つめて言った。
「ピールアシス国王陛下のおなりでございます。」
その時とりつぎ係が言った。
アライグマが…いやひげ男がわざとゆっくりとした足取りで入ってくる。
そのうしろから我が妹が無表情で入ってきた。
おい、何をされた?髪が乱れてないか?
「ようこそ、ラルーナ殿、いや義兄上と呼ばしていただきます。」
ピールアシス殿が微笑んだ…らしい。
ひげ男め…義兄上だとせめて義姉上と呼べ…義弟にするつもりはないが…。
「ピールアシス殿、ご健勝そうで何よりです。」
私はなるべくピールアシス殿から離れて座ろうとする妹を捕まえるピールアシス殿を見ながら言った。
「痛い。」
ピールアシス殿が苦痛に歪んだ顔をした…足を踏まれたようだ…仕込みの靴底だからな…刺さったか?
「しつれいいたしました。」
ラミアーナがピールアシス殿の足元にしゃがみこんで状態をみるふりをしながら血の出る足のこうをハンカチでしばった。
「ラミアーナ、そこまでしなくともいい。」
アライグマがにんまりした。
バカめ…あれは多分発信器をつける伏線だ。
「後で傷をみてもらってください。」
手を伸ばしかけたアライグマから身をかわすとラミアーナは私の隣にきた。
「ラミアーナに寝所でみてもらいたい。」
アライグマがますますにんまりした。
妹は無視することにしたようだ。
見事に無表情だな。
「ピールアシス殿、妹を気に入ってくれたのはよいが婚姻話がきちんとすんでからにしていただきたいです…最近はどうなのですか。」
主にアーティーの谷の方をききたいが…。
「特にかわりはありません。」
未練がましくラミアーナを見ながらアライグマが言った。
「最近輸出入の制限をかけられているとか。」
ウェルスが調べてきた限り戦でも仕掛ける勢いの買い方だな。
「すこし谷の発展のために制限しているだけですよ。」
アライグマがなめるようにラミアーナを見ながら言った。
そんなにラミアーナが欲しいのか?
だが、アライグマには愛人と子供がいなかったか?
側室でなく、愛人で済ます辺りがな…。
未婚という魅力を全面に出すのであれば髭そりを奨めるが…。
「アーティーの谷の開発をされていると聞きました。」
私はあえてその名前を出した。
部屋に緊張が走ったように見えた。
アライグマはおうようにわらった。
「ええ、変わった生き物がいるものですから…美しいウサギとかがたいのいいサルとか。」
アライグマにしては優雅な例えを言った。
美しいウサギとはパルラのことか?
がたいのいいサルはオルセリウスか?
脅迫されているのか?
「ぜひ、みさせていただきたい。」
別動隊が動いているが…もどかしい。
私が直接いくのはウェルスと護衛士隊長に目立ちすぎるととめられた。
「もう、とらえてはいるのですが、サルが狂暴で調教中なのですよ。」
アライグマがやはりラミアーナを見ながら言った。
ラミアーナは無表情に見つめ返した。
調教とはオルセリウスのことか!拷問をうけていると!
パルラは大丈夫なのか?
「私としましてはフーマエルンとチエアイスの発展のためにもぜひ同盟の強化をおねがいしたいですな。」
アライグマがひげを引っ張りながら言った。
「もちろんそのつもりです。」
場合によっては戦で征服してでもパルラを救い出して見せる。
「同じように考えていただいて嬉しいです、お互いの同盟の証としてラミアーナ王女殿下を私の正妃に迎えたい。」
アライグマ…ピールアシス殿があきらかに獲物を狙う目でラミアーナを見た。
ラミアーナが感情を無くした目で私を見つめた。
手を握りしめているのが見えた。
安心しろ、こんな利益のあがらないところにお前を嫁がせるわけないだろう。
「それは考えておきます…ところで…。」
私はうまくアライグマをここにとどめるために用意したチエアイスの輸出入の資料を出した。
さて…のって来るだろうか?
こちらには…豊かな農作物と圧倒的な武力がある。
こいつらの欲しいものでパルラの命が買えるなら。
私は暗君と呼ばれてもよい。
パルラ、私の運命の伴侶よ。
どうか無事でいてくれ。
ついでにオルセリウスも助け出せるといいが…。
最優先はパルラだ、すまん。
駄文を読んでいただきありがとうございます。