TS転生エルフの引きこもり日記1
……筋肉ない……良いけど……良くない。
集合住宅の自分の部屋で着替えながら身体を見ながらつぶやいた。
華奢過ぎる筋肉一つない身体にため息をつく、戦闘種族の男エルフとして間違ってるよね。そんなことを思いながら自作のワンピースと細みのズボンをはいた。
出稼ぎ労働者なみんながかえってくるから着替えておいでってヤリアーゼおばちゃんに出されたけど作業着なチュニックとズボンじゃダメなのかな? 皆んなはきがえないみたいだし。
そんなことを思いながら村の入り口まで出ていくとみんなが帰ってきたのが見えた。
村に続く細い道を歩いてくる。
村から少し離れたところまでは車ではいれるけど防衛上、歩きか自転車かバイクくらいしか村まで来れなくて不便なんだよね〜この家業続ける以上仕方ないけどさ。
一番後ろのがたいのいい若草色の男性が手を振った、隣の黄色の長い髪の小柄な女性もニコニコ手を振る……今世の両親だ。
「おかえりなさい」
ニコニコと手を振ると何故か帰ってきたみんなもざわざわしだした。
パルラ〜ただいま〜とジャステックが飛びついてこようとしてマリエスさんにとめられた。
その隙に両親が目の前にやってきた。
「パルラ、ただいま〜」
見上げるほど大きいお父さんがそういって私を抱き締めた。
お父さん、それ息子にする反応じゃないから。
お父さんは剣の一族の戦士なので、長身の細マッチョでかっこいいんだよね若草色の短い髪にプラム色の瞳なんだ、髪色がおなじなのです。
「お父さん、おかえりなさい」
心配なのはわかるけど、もう子供じゃないし。
私を抱き締める間があったらお母さん抱きしめなよ。
「パルラ、大丈夫だった? 」
お母さんが私の頭を撫でた。
「お母さん、おかえりなさい、私は別に健康体だよ、か弱いだけ」
もうすぐ成人男が情けないです。
お母さんは魔法の一族出身で黄色の髪にチェリーピンクの瞳で腰までの長い髪です、目の色が一緒なのです。
お母さんはたおやかで小柄で美人なんです攻撃魔法ぶちかます人ですが。
私はお母さんの美貌を受け継いだ……男です、どうせ似るなら魔法の腕前似たかったなぁ。
お父さんみたいにせめて身長が高ければ……はい、お母さんよりは流石に大きいけどエメルさんよりちっちゃい小柄な男エルフです。
なんか悲しくなってきたよ。
「男に近づいたらダメよ、パルラが襲われたら冷静に対処できる自信はないわ」
お母さんが私の頭を撫でながらジャステックたちをちらりと見た、ああ、そうだなとおとうさんも私を抱きしめる力を強めて同意した。
「私、息子なんだよ、二人とも」
私が妙に中性的なのがいけないのかな? それとも小柄でか弱すぎるのが行けないのかな? すごく過保護なんですけど、困ったよ。
「オレのパルラに手を出しやがったら半殺しにしてケルアス湖に沈めてやる。」
お父さんがギロリとみんなを見た。
わーっ、威嚇しちゃ駄目だよ。
仲間なんだからね。
「大丈夫、みんな優しいよ、ご飯出来てるからね」
お腹が空いててイライラしてるのかもしれない、食べさせて落ち着いてもらおうっと。
「……そうか」
「そうね、行きましょうね」
やっと開放されたと思ったら両親が何故か私の手を片一方ずつ繋いだ。
おててーつないでーって違う、あの~私そう言う年じゃ無いですよ?
「お父さん、お母さん、手を繋がなくても迷子にならないよ? 」
私が小首をかしげてキョロキョロと二人をみても取り合ってくれない。
「く、ずるいぞパリアスさん、美人の嫁、ラランさんだけじゃなく、うちの一族一の美人パルラちゃんまで独占して! 」
ピンクの髪のアイオンさんが拳をにぎった。
「ああ、パルラちゃん、なんで男なんだ~」
薄浅葱の髪のイリアスさんが天に腕をかかげて嘆いた。
「オレはパルラが男でも構わないぞ! 」
藍色の髪のジェスティックが私を見て叫んだ。
男でもいいって女の子の方が良いよジャステック。
ジャステックにお父さんの蹴りがはいった。
そのままお母さんに私を押し付けた、つかさずお母さんが私を守るようにだきしめた。
「あなた」
お母さんがお父さんに目で合図した。
ああ、とお父さんがうなずいて闘気を帯びた。
「オレの息子を不埒な目でみたら殺す!」
鋭い眼差しでみんなを睨みつける。
「お父さんやめて〜」
私はお母さんの腕の中で叫んだ。
「パルラ、大丈夫よ、お父さんが今不埒な男は退治するからね」
お母さんが私を抱き締めたままみんなを睨んだ。
わーん、剣の一族最強クラスなんだからみんな怪我しちゃうよ。
「やめて! 」
もう一度叫ぶとお父さんが少し考えるしぐさをした。
こ、このまま押せばなんとか……
そうだよ横暴だとアイオンさんがさけんだ。
お前ら懲りないみたいだなと恐ろしい声で言ってお父さんがアイオンさんイリアスさんとジャステックをまとめて相手にしだした。
三人がかりなのにお父さんの素早い蹴りや突きに翻弄されて反撃も当たらないって情けなくない? 剣の一族のエルフでも強い方なのにさ。
最終的に地面に倒れ伏して三人ともお父さんに踏まれてた。
仕事がえりなのにお疲れ様です。
「ゆるしてやれよ、過保護すぎだろう、まあパルラちゃんはか弱いからしかたないけどよ、女の子なら問題ないのにな」
マリエスさんがため息をついた。
「マリエス? おまえまでうちの子に不埒な想いを? 」
最初の三人を絞め終えたお父さんがマリエスさんに向き直って構えた。
「別にどうこうしたい訳じゃねぇーよ、ただパルラちゃんが超美人さんなのは確かだろう? 華奢だしな、妄想くらいゆるしてやれよ、癒しなんだからさ」
よく考えりゃ女も強いのばかりだしなとマリエスさんが続けた。
確かに、女の人も強いよ。
私よりよっぽど!
「マリエス、私たちにとってはパルラは宝物なのよ」
お母さんが微笑んで私をはなした。
「まあ、子供が出きるまで苦労したのは知ってるがな」
マリエスさんがポリポリ頬を指でかいた。
「そういうことだ、先に行くから奴らは頼んだぞ」
お父さんがマリエスさんの肩を軽く叩いた。
「みんな大丈夫かな? 」
なんかうめいてるし……私は両親の影から三人をのぞき込んだ。
「大丈夫よ」
「パルラ、気にするな、マリエス、たとえ癒しでも可愛い息子を不埒な目で見るのは許せない」
お父さんがそういって呻いている三人を睨みつけた。
もしかして今が一番負傷してるのかもしれない。
「ほどほどにしないとパルラちゃんにきらわれるぞ、な、パルラちゃん」
マリエスさんが三人の様子を見ながらウインクした。
幸い大きい怪我はないとつぶやいている。
「嫌わないけど、やめて」
お父さんを見上げるとやり過ぎたかとあたまをかいた。
本当なら、年齢的に私と一緒に戦闘業務に出たりする年齢…なんだよね。
友達なんだけど…女の子っぽい扱いされるしな…。
「パルラはやさしいな、命拾いしたな、ガキども」
お父さんがそう言って私と再び手をつないだ。
まあ、ふらちな事をしなければ仲良くしてやっても良いぞと少し憐れんだ目でジャステックたちを見ながらお父さんは私とお母さんをうながして食堂棟に歩きだした。
両親が過保護なのは…私がか弱い子エルフだったからだ。
転生である以上成長し直したんだけど……
赤ちゃん時代から前世の記憶があった私は元の世界に帰りたくてよく泣く子だった。
身体も一族の子より弱かった……今もだけど……よく寝込んだ。
熱出して前世を思い出すテンプレイベントはもちろんなかった、最初から記憶あったしね。
それを心配してお父さんもお母さんも大事に抱え込むようにして育ててくれたんだ。
あとグラのお耳に通信来たのーが一時的に意識が飛ぶんで余計に脳みそになんかあるかもって心配されたらしい。
私的には一番ショックだったのは自分で動けるようになってトイレトレーニングした時だよ。
「わたし……男の子なの? 」
ちび幼児の私そうにつぶやいて気付いた直後ショックのあまり寝込んだり泣いたりした。
なんとなく男かなっておもってたけど……覇王様って男だよね? 男嫁になれと? グラのバカバカバカ!!
怒りがぶり返してきたよ。
『うーん、大丈夫だよとしか言えないかな? 』
グラから頭に通信来たの〜がきたよ、お父さんたちに心配される。
今日のお供えはゆでジャガイモ決定!
わーん男嫁嫌だよ〜。
でも精神的には女だから女性でも……
いやーん、グラのバカバカ!
『ええ? ポテトグラタンがいいなぁー』
グラが関係ないことを言って小首をかしげた。
このワンコ神! もう少し考えて発言しなよ。
覇王嫁絶対回避〜
『べつにワンコでもいいからポテトグラタン〜』
まったく、贅沢なワンコだよ。
と言っても……多分ポテトグラタン供えるんだろうけどね。
「パルラ? 」
「疲れたか? 」
お父さんとお母さんが心配そうにのぞきこんでいた。
「大丈夫」
私は精一杯の笑顔を向けた。
ほらワンコ神のせいで心配された。
でも私は幸せだよね。
お父さんとお母さんが大事にしてくれたから……
男でも戦闘種族なのにか弱くてもこの世界で乗り切れたんだよね。
仲間も友達も村のみんなもいるし今日もがんばろっと。
優しい過保護な両親に親孝行できるといいな。
そのためにも覇王の男嫁は回避だよ。