覇王伝のはずが溺愛伝説1
パルラ、パルラ、パルラ。
なんで、そんなにあおるんだ。
あの若草色の長い髪に腕を絡めて抱き込みたい。
美味しそうなあの唇をむさぼり尽くしたら…どんな顔をするだろう?
チェリーピンクの瞳が涙ぐんだら舐めてやろう。
あの華奢で小柄な身体を思う存分好きなようにむさぼりたいなんて私が思ってると知ったら引くだろうか?
「ラルーナ陛下?どうなさいましたか?」
パルラが私を見上げた。
自分の長身が悩んだ時代もあったが…。
パルラに見上げられるならいいな。
「パルラ。」
私はパルラを抱き締めた。
「不埒なエルフ!ラルーナ様から離れなさい!」
先にいってたセシルーシャが叫んだ。
まったく、邪魔な女だな。
ウライシア工業国との同盟国を続けるためには仕方ないが…。
いっそ、異母弟にでも…。
いや、だめか、あいつ自身はいいやつだが。
周りがな。
アオスイラ染めの工場は
機械化されず、地元民を使っていた。
地域還元にはいいな。
きちんとした賃金を払っていればだが。
「陛下まで、おいでくださったのですか。」
ギジエリス財務大臣が言った。
「興味深かったのでな。」
パルラをさりげなく、自分の後ろに隠して言った。
ギジエリス財務大臣が舐めるような目でパルラを見ている。
おい、パルラは男だぞ。
セシルーシャにせめてしたらどうなんだ。
「セシルーシャ姫にウライシア工業国の技術をお聞きしようと思ったのですが。」
ギジエリス財務大臣がニコニコ言った。
「こちらの手作り感のある方がウライシア工業国では売れますわ。」
セシルーシャが言った。
「そうですか?では取引を持ちかけてみますか…。」
ギジエリス財務大臣が言った。
その費用はまた、横領するのか?
「ギジエリス財務大臣、費用がかかったのではないか?」
私は背中にパルラを感じながら言った。
「ああ、それの追求ですね、ええ、横領ですよ、なにぶん、先王陛下の時代から、戦争資金がかさんでしまって。」
ギジエリス財務大臣が私の影から出ようとするパルラをやっぱり、舐めるような目で眺めてる。
気に食わない、確かに何かの焦燥感にかられるように戦いに身を投じてきた。
私が男の格好をし、男言葉をつかっていたのは、異母弟の存在だ。
あの弟の母親は、オーレウスの皇族でそのせいで余計、周りがあの男を押すんだ。
だが、父上は私に王を継ぐように言われた。
私が正妻である、母上の唯一の子供だからだ。
男に生まれたかった。
でも、今はパルラの反対の性で生まれてよかったと思ってる。
「…戦争が気に入らなかったのか?」
私は言った。
「ええ、先王陛下には何度も、こちらの地域の有用性を説きました、陛下にも一応、上奏いたしました、興味はなかったようですが。」
ニコニコとギジエリス財務大臣が言った。
「そうか、それで、独自にすることにしたのか?」
私はパルラの腰を抱きながら言った。
職人の方へいきそうだったからな。
「ええ、でも、そちらの秘書官のお陰で変わってきたようですね、私としては陛下にはもったいないと思いますが。」
ギジエリス財務大臣が言った。
こんな男だったのか?
もっと保身的なイメージだったが?
「では、不埒なエルフはこちらの方に任せればいいわ!ラルーナ様には私がいるのですもの、不埒なエルフは要らないですわ!」
セシルーシャが勝手なことを言った。
「いつでも、花嫁に迎えます、パルラさん。」
ギジエリス財務大臣が微笑んだ。
「あの、私、男なんです。」
パルラが怯えたように私にしがみついて言った。
ああ、離せない、この美貌なエルフは。
こんなにもか弱い。
「ええ、知ってます、別にいいんですよ。」
妖しくギジエリス財務大臣が微笑んだ。
「ギジエリス財務大臣、冗談はやめろ。」
私はパルラを抱き締めた。
「おや、冗談だと?」
ギジエリス財務大臣が言った。
すくなくとも、王都でこの男が
男色家という話は聞いたことがない。
「…ああ、冗談だろう?」
振るえるパルラを抱き締めながら言った。
「……まあ、冗談と言うことにしておきましょう、陛下は私を罷免なさいますか?」
ギジエリス財務大臣が言った。
この男のしたことは犯罪だ。
だが、なにかあるような気がする。
「ここの運営資金をワザワザ、横領した金でした理由は気がつかせる為か?」
ギジエリス財務大臣の財産なら、ティアーゼくらい買えるはずだ。
「ええ、こうでもしないと、動かなかったでしょう?エルフへの代金からにしたのも戦争抑制計画の一貫です、私は戦争で家族を失ったものですから。」
ギジエリス財務大臣が微笑んだ。
「では、ギジエリス財務大臣のおかげで、パルラに会ったと言うわけか…。」
あの契約書の見直しに行かなければ。
今、パルラは私の腕のなかにはいなかった。
「不埒なエルフなんて要りませんわ!」
セシルーシャが言った。
「ギジエリス財務大臣、あのものの擁護者と言うわけではないな。」
それならば、見逃せないが…。
「…陛下しだいでございます。」
ギジエリス財務大臣がニッコリ笑った。
ウェルスを返したのは失敗だったか?
「あの、じゃ、公共事業ということでいいんじゃないですか?利益率がこれくらいで、横領したお金分の数十倍出ますよ。」
パルラが言った。
大人しいとおもったら、通信機で計算していたらしい。
「もとが捨て値ですから、その分ここの開発に向ければよりあがりますよ。」
チェリーピンクの瞳キラキラしている。
「そうか。」
いいかも知れないな。
「ここの人たちの仕事もできます!蓮根農家のおじさんも若者の流出が多いのは仕事がないせいだっていってました。」
パルラが言った。
「陛下、パルラ秘書官、やっぱり、くれませんか?財務省で使いたいのですが。」
ギジエリス財務大臣がギラギラした目で言った。
「それはことわる!代わりにここはまかせる、予算をうまくとったように改ざんしろ。」
私はパルラを腕のなかに囲いこんだ。
「そんなエルフ、この人にやってしまえば良いのよ!」
セシルーシャが叫んだ。
「セシルーシャ!」
この女は!感情しかないのか!
「ラルーナ様の馬鹿!」
セシルーシャが工房から走りさった。
ついてきた護衛が黙礼してそっと追った。
ギジエリス財務大臣が雇ったものなら大丈夫だろう。
まったく、困った姫君だ。
私はパルラさえいればいいんだが。
外交上はセシルーシャは有用だからな。