悪役令嬢に転生したら、婚約破棄されたので、最低な婚約者をざまぁします!
若くして死んだ私は大好きな乙女ゲームの世界に転生した。しかし私が転生したのはヒロインではなく、魔力持ちの悪役令嬢エリザベスだった。ゲームのエリザベスは過去にトラウマを持ち、それが原因でひねくれた性格になって、ヒロインを苛め抜き最終的にはモンスターに食い殺される結末が待っているのだ。是が非でもこの結末だけは回避しなくてはいけない。
ゲームのスタートは17歳だ。それまで私は懸命に魔力を鍛えた。よちよち歩きをしながら空中に火の玉を出現させ、氷魔法で水を凍らせ、サイコキネシスで自由自在にものを操れるようになった。回復魔法も練習した。四肢を切断しても再生できるほどになった。幼いころは上達が早いのだ。
おかげで10歳になるころにはそんじょそこらのモンスターなら1秒で倒せるようになった。
「これでモンスターに殺されることはないですわ」
15歳で恋をし、その相手と婚約した。彼は三つ年上でイケメンで優しくて最高の男性だと思った。が、現実は違った。
たまたま街で私以外の女とデートしているところを目撃したのだ。
「ちょっとリチャード、その女はなんですの? わたくしという女がありながら!」当然私は激怒してお嬢様口調で問い詰めた。
「や、エリザベス、これは違うんだ誤解なんだぞ」
「なにが誤解なんですの?」
「この子は、えっと、あっそうだ妹だ。この子は俺の妹のソフィアって言うんだよ」
「あらそうでしたのね。わたくしったら勘違いをしてしまいましたわ。おーっほっほっほっほ・・・ってなるわけないでしょ! あんたひとりっ子じゃない!」
言い訳が通じないとみると彼は開き直って豹変した。
「うだうだうるせえんだよ。最初からお前となんて本気で付き合ってねえっつうの。お前ん家が金持ちだからだまくらかして金を貢がせてただけなんだ。俺みたいなイケメンがお前みたいなガキ相手にするわけねえだろ。もうお前とは婚約破棄だ!」
「わかりましたわ。ではさようなら」
「おっ、意外とあっさり引き下がるんだな。まあお前も俺と付き合えていい思いをしたんだ。感謝こそすれ、恨むわけねえか。はっはっはっは」
「そうでございますわね。とてもいい思い出をありがとうございました」
「いいってことよ。たまに金借りに行くかもしんねえけどそん時はよろしくな。もちろんちゃんと抱いてやるからよ」
リチャードはソフィアの肩を抱いて歩いて行ってしまった。
ゲームの悪役令嬢エリザベスはこのことがきっかけでダークサイドに落ち悪役令嬢になったのだ。そのことが今わかった。
しかし私はゲームのエリザベスとは違う。私には今まで訓練してきた魔法があるのだ。この恨みはらさでおくべきかである。
私はリチャードに復讐するために郊外に地下室がある家を借りた。隣の家まで距離があるから、ちょっとやそっと大声を出したぐらいでは誰にも聞かれない。
リチャードを誘い出すのはとても簡単だった。やっぱりあなたのことが忘れられない、お金ならいくらでも出すから、もう一度会ってほしいと手紙を書くだけでよかった。
借りた家で待っているとリチャードが現れた。
「ようエリザベス、来てやったぜ。とりあえず30万ぐらいほしいんだがいいか?」
「そんなに少ない金額でいいの? 今日は100万用意したんですのよ」
「なに? そんなにくれるのか? ありがてえ。もちろん金は多ければ多いほうがいいぜ。で、その金はどこに置いてあるんだ?」
「この家の地下室の金庫ですわ。一緒に取りに来てくださる?」
「もちろんだ。俺は女に重いものを持たせたりはしねえ。紳士だからな」
私はリチャードとともに地下室に降りた。
「やけに殺風景な地下室だな」とリチャードは地下室を見回した。「金庫はどこだ? 見当たらねえけど」
「ごめんあそばせ。実はあなたにうそをついていたのよ。あなたにお金を渡す気なんてこれっぽちもありませんわ」
「おいおい冗談はよし子さんだぜ。金を渡さねえんだったらお前なんかに用はねえよ。このすっとこどっこいめ。俺はかえるぞ」
リチャードは回れ右をして階段を上り、地下室から出ようとした。
もちろん彼を逃がす気はない。私は指をパチンと鳴らした。するとリチャードの目の前で扉が勝手に閉まった。
「あれ? このとびら開かねえぞ、どうなってるんだ?」、取っ手をつかんでガチャガチャやるリチャード。
「逃がしませんわよ」
「おい、いい加減にしろよ。俺は女だろうと容赦しねえぞ」
私が魔法を使えるということは誰も知らない。今まで巧妙に隠してきたのだ。もちろんリチャードもそれを知らない。この時点でリチャードは私よりも強いと思っている。
「実はわたくし、魔法が使えるんですのよ」
「魔法だと? そんなの初耳だぞ。まあどうせ手品程度の物だろ」
「見せて差し上げますわ」
「う、ぐぐぐぐ、か、体が動かねえ!」
「これはサイコキネシスと言って手を触れずにものを動かす魔法ですわ」
「サイコキネシス? それなら知っている。だが熟練のサイコキネシストでもせいぜいコインを浮かす程度のことしかできないはず」
「わたくしはハイハイをしているころから魔法の鍛錬をして世界最高の魔法使いになったんですのよ。おーっほっほっほっほ」
「わ、わかった。お前はすごい、認める。だからこのサイコキネシスを解いてくれ」
「わかりましたわ」
「やっと動けるようになった。お前すげえな。その能力を使えば金儲けできるんじゃねえか? 例えば強盗なんてし放題だぜ。俺と手を組もう。俺たちは億万長者だ・・・なーんてな、死ねっ!」
彼はへらへらしながら私に近づいてきた。が、1mほどの距離まで近づくと、急に真顔になって私に殴りかかってきた。
しかし彼のこぶしが私の顔面にヒットする寸前で私は彼の背後にテレポーテーションした。瞬間移動である。
「なに! 消えただと?」
「おーっほっほっほ、どこを殴ってるんですの? こっちですわ」
「い、いつの間に俺の背後に!?」
「これはテレポーテーションという魔法ですわ」
「くそが、ミスターマリックかよ! 卑怯だぞ!」
「じゃあ次はよけないから思い切りぶん殴ってもいいですわよ」
「よし、絶対よけるなよ。おりゃああああああ!」
「冷凍魔法」
「うぐっ、う、腕が動かねえ!」
「あなたの腕を凍らせましたわ」
「殴らせるって言ったじゃねえか、だましたな」
「殴らせるとは言ってないですわよ。よけないと言っただけです」
「お、おまえ、そのかなづちで何をする気だ! やめろおおおおお!」
「やめませんわ」
「ぎゃああああああ!」
「金づちで殴ってあなたの腕を粉々にしてやりましたわ」
「お、俺の腕がああああ! 俺の黄金の右腕がああああ!」
「大丈夫、治してあげますわ。ヒール」
「俺の腕が生えてきた! すげえ! まるでトカゲのしっぽだ」
「フリーズ!」
「わああああ! また凍った!」
「えいっ!」
「ぎゃああああああ! また砕きやがった。何するんだこん畜生!」
「ヒール」
「おっ、腕が再生したぞ」
「フリーズ」
「凍った!」
「えいっ」
「ぎゃああああああ! またかなづちで砕かれた!」
「ヒール」
「治った!」
「フリーズ」
「凍った!」
「えいっ!」
「うぉおおおおおおお! 砕かれた!」
「ヒール」
「も、もうやめてくれ、勘弁してくれ!」
「フリーズ」
「やめろおおお!」
「えいっ!」
「ぎゃあああああ! う、腕が!」
「ヒール」
「治った。もうやめてくれ、このまま続けたら俺は気が狂って・・・」
「フリーズ」
「また凍った!」
「えいっ!」
「また砕かれたあああああ!」
「ヒール」
三日三晩、何百回も何千回もこれを繰り返したことでリチャードの精神は完全に崩壊した。うつろな目でよだれを垂らし大小便を垂れ流し状態になった。
発狂した彼は精神病院送りになった。最終的にヒールで傷を治したから外傷はない。よって私が罪に問われることはない。リチャードが私にされたことを話したとしても、だれが狂人の言うことなんかをまともに聞くだろう。
復讐を果たして満足したことで私は闇落ちすることはなかった。よって性格がねじ曲がることはなく、ヒロインをいじめることもなく、モンスターに食い殺されることもないのだ。これからの人生を楽しむだけである。




