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2.ほんの先の未来 4

 惑星に残された12人の少年少女の物語


「それで……段々と呼吸が苦しくなって……アタシは気絶してしまった」



 次にアルテが気づいた時、酸素吸入器はアルテの口に固定されていた。

「……え?」

 ブライは? と見渡すとブライは部屋の片隅で倒れている。

 アルテは駆け寄り……何度もブライの身体を揺すったが起きない。

 ブライを呼ぶ声は段々と大きくなり……泣き声になり……叫び声になった。



「オマエの声が大きかった御陰で助かったんだよな」

 アルテの声に捜索していた救助隊が気づき、2人は助かった。

「だって、あの時ホントに死んじゃったんだと思ったから」

「バーカ。オレは緊急仮死睡眠薬を見つけて飲んだんだよ」

 緊急避難室のエマージェンシーボックスの中には様々な薬があった。

 その中にあった本当に緊急的な対処薬として一時的に仮死状態とする薬があった。冷凍睡眠で宇宙を移動するために開発された薬を応用したモノだ。

「ま、大人用だったからな。それで1年間も眠ってしまった」

 服用条件は15歳以上。当時8歳のブライには薬が効きすぎてしまった。

「そだよ。本当に心配して……毎日病院に行ったんだから」

 ぽとりとブライの頬に何かが落ちる。

 片眼で見上げるとアルテの大きな瞳が涙で溢れている。

「ふん。気にするな。選んだのはオレだ。あの時はオレが年上だったからな。年上が責任取るのは自然なことだ」

 今はアルテが年上。ブライが寝ている間に追い抜かれてしまった。

「でも……ゴメンね」

「何が?」

「いつも怒鳴っているばかりで……アタシは……そんな風にしかできないから」

「気にするな。キッズ達には母親とか父親が必要だ。母親役はセルケトにもできるからな。オマエが厳しく言うのは仕方ないさ」

「でも……ゴメンね」

 アルテが謝罪を呟いた後は何も言わずにブライの頭を抱きしめる。ぽたぽたとブライの頬に溢れ落ちるのは……アルテの本当の姿が滴となって落ちているのだろう。

「……気にするな」

 ブライはアルテの背中をぽんぽんと叩いた。

「今はこうして大気の底にいる。コロニーでは致命傷となるような隕石もここではただの流れ星になって消えていく。あんな事件は起こりようもない。だから……気にするな」

「うん」

「そしてまた7日後の戦争に勝って……オレ達が生きている間はこの星に住み続ける。それがオレ達の未来だ。違うか?」

 アルテは涙を拭い、微笑んだ。

「そだね。頼んだわよ。ブライ。次も期待している」

「それは大将として?」

「当然でしょ? 今はアタシが年上なんだから。ね?」

「おしっ! それで良いっ!」

 アルテの背中を景気づけにちょっと強めに叩く。

 と、その衝撃でホックが外れてしまったようで……巨大なブラが寝間着の中を通ってブライの顔にバサリと落ちた。

「ばかっ!」

 直後、平手打ちの音が盛大に響き渡った。



 頬を紅潮させて怒っているアルテがブライの部屋から出て行った後で……廊下で呟く声があった。

「ラミ、どうします?」

「ん~ 押しかける雰囲気じゃなくなったわね」

 2人は寝間着姿のまま枕を抱えて通路に隠れていた。 

「アルテとブライが妙な雰囲気になったら突入する予定だったけど……今夜はいいや」

「そうですね。そうしましょうか。今夜は2人で寝ましょうね」

「2人で?」

「そうです。たまには双子姉妹の交流を図りましょ。久しぶりにラミと擽りっこをしたいし」

「ば、ばかっ! そんな子供じみたことっ……」

「ラミは敏感ですから楽しいのです」

「い、一緒に寝るのは構わないけどっ。変なことしたら叩き出すからねっ!」

「はいはい。変なことにならない程度に擽ります」

「……レミって本当に人の話を聞かないわね」


 そうして惑星ルクソルの夜は更けていった。



 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』などの後編となります。

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