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15.惑星ルクソル 1

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

15.惑星ルクソル

 惑星ルクソルの朝は早い。

 夜が明けると皆が起き出し、洗顔を済ませ、簡単な朝食を取る。

 そして畑に行き、収穫の時期となった作物を採り、雑草を取り、次に苗を植えるべき畑を耕す。

 作業が一段落すると……ブライは額の汗を拭った。

「ふぅ。今日は暑くなりそうだな」

「そうですね。そしたら皆で海に行きましょう。作業を速めに終らせて。ね?」

「レミ? だったら休んでないで、少しは手伝ったら?」

「あのね。ラミ、アナタこそ手伝いなさいよ。ブライの身体から出て」

「アルテ様こそブライ様の頭の上に乗らなくてもいいじゃないですか~」

「レミ? アタシはみんなの作業の進捗具合を見てなきゃならないの」

「つまり、もう尻に敷いている訳なのですね」

「レミ、それは的確すぎるわよ」

「ラミ? それはちょっとひどくない?」

 ブライは自分の頭上と両肩で行われる言い合いにうんざりしていた。

「あのな? 口喧嘩をするんだったらオレの身体から出てやってくれないか?」

 ばししっ

 アルテ達がブライの後頭部と側頭部を同時にはたく。

「文句言わないっ! こんなに綺麗で……」

「……気立てが優しくて、なおかつ可愛くて……」

「スタイルのいい娘を三人も独り占めしているんだからね。文句は言わないのっ!」

 妖精のように小さくなっているアルテ達がブライを睨んだ。笑いながら。


 遺跡との戦いの後、遺跡跡を捜索したテミス達が見つけたのは……岩の平原に降り積もった虹色のセドニウム遷移体の結晶の中に横たわるブライ一人だけだった。

 アルテとレミとラミの姿は何処にもなかった。……のだが、全員は生きていた。

 ブライの身体の中に。

 ブライの身体にアルテ達が何故か同時に存在している。本人達の気の持ちようによってはブライの身体から出ることもできるのだが……それでも離れることができなくなっていた。

 例えば指先でも触れていれば個々の身体が実物大で存在できるし、気分というか気合次第では数時間は離れても大丈夫なのだが、何かの拍子に虚数次元の何処かの次元空間に身体が呑み込まれて消えてしまいそうになる。……というのはアルテ達の実感として報告されている。

 実際、ブライ自身もアルテ達全員が離れてしまうと同じ感覚に襲われ、地面の下に呑み込まれてしまいそうになる。

 つまり全員が重なって存在していないと存在そのものが不安定になってしまう。

 唯一便利なのは、身体が重なっている時には隠れている3人の分身が現れるというコトだろう。今現在の状況としてはブライの頭の上と両肩にミニチュア人形のような大きさのアルテ達の分身が乗っている。

 知らない人が見たらブライを手品師か腹話術師、あるいはミニチュアドール蒐集家と勘違いしてしまうかも知れない。


 何故そんなコトになったのかと原因を探せば……やはり遺跡との戦いだろう。

 ナノマシン同士の戦い。マディアを叩きのめした時の全員の衝撃波が虚数次元にも干渉してしまい、ブライ達を護るナノマシン、つまりイノーガ・エレメントにも影響を及ぼし、存在確率というか存在できる次元空間が重なってしまった。

 ……とはテミスの推定。


 普段ならば兎も角、農作業をする時は腕組みとか背負ったりもできないので全員ブライの身体の中に重なっている。そして分身が頭の上と両肩に乗っている。

 仕方ない……のだが正直、鬱陶しいと思ってしまう。

「ブライ? そんなに嫌だったら耳掃除してあげないからね?」

「ブライ様。そんな嫌がらないで下さぁいませぇ。ご飯を食べさせてあげますからぁ」

「それともアタシがブライの身体を操ってしまおうかしら? ね?」

 ブライが何を思っても心の隅々までアルテ達には解ってしまう。身体の自由を制限できるのも事実だ。

 ブライは……何も言えずにぐったりと項垂れた。


 遺跡を崩壊させた衝撃波はブライ達が住んでいたホテルも破壊していた。

 テミスとディアナ達と作業ロボット達によって復旧作業が続いているが、完全復旧にはまだかかりそうだ。

 それでも悪いことだけではない。

 惑星ルクソルに響き渡った衝撃波は大気圏をも震わせた。そして落下し始めていた移民船セルケトをも弾き飛ばす結果を伴っていた。

 移民船セルケトは外装板が大きく破損する結果となったが、現在もディアナ達の手により修理が続けられている。

 完全復旧には時間がかかりそうだが、少なくとも落下することのない軌道を周回している。



 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 次で終わります。


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