13.統べるモノ 2
惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語
相手は両腕を掲げた。まるで自身の上に総ての真理が存在するかのように。
『考えてみたまえ。人間が存在してもしなくても宇宙はそのままにある。恒星が輝き、惑星が周囲を巡る。恒星もまた銀河を巡り、銀河が集まり銀河団となり、超銀河団となっている』
(はい? それがどうしたって言うのよ)
アルテの声が響いた。
『……人間だけが宇宙を、その心理と美しさを理解せずにその足で踏みにじり、星系を渡り歩き、形を歪める。宇宙によって存在するという自分達の立場をわきまえず、神となったかのように宇宙を蹂躙する。世界を穢している。そのような存在は……不要なのだ』
(変なとこ見つめてそんなコトを言ったって感心なんかしてあげないんだからねっ!)
ん? 変なとこ?
『……理解した。君達は我が深遠なる意志を理解できないようだ』
(ワタシも理解などしてあげないのですっ! コッチを見ないで下さいっ!)
(何いってんのよっ! レミっ! このミイラもどきはアタシのコトをずぅっと気持ち悪い視線で見ているんだからっ!)
ブライは相手を見る。気づいた時から……相手は自分の方だけを向いている。
玉座に座り自分の方だけを見つめている。
しかし?
アルテもレミもラミも自分の方を見ていると言っている。
(つまり?)
ブライの脳裏で何かが答えを囁いている。だが……どんな答えなのかが聞き取れない。
『……君達を残しておいたというのは間違いだったようだ』
ふっ……と、玉座の大きさが変ったように感じられた。
いや、勘違いではなく玉座を巨大に感じている。玉座からの得体の知れぬ何かが圧力として感じられている。
畏怖が心の中を支配していく。
(残す? 残すって何よっ!)
アルテが叫ぶ。総てから逃れようとするかのように。
『疫病は……我が慈愛。不必要な人間を我が美しき星から一掃するための……真理の賜物。真理の具現。だが、幼き君達を残したのは……命を奪わずにいたというのは、我が情け。我が真理を授けようとした慈愛を理解できぬとは……』
(アナタは嘘つきなのですっ!)
レミが叫んだ。
(ワタシより幼い者も亡くなりましたっ!)
(そうよっ! ミヨ、マリ、ケータ、シーナも死んじゃったわっ! アタシより小さくて幼くて可愛かったのにっ!)
ラミも叫んでいる。涙声で。
(アタシ達が生き残ったのはねっ!)
アルテの声が震えている。恐怖ではなく、悲しみで、そして純粋なる怒りで。
(みんながアンタを叩きのめしなさいって護ってくれたからよっ!)
アルテの叫びが衝撃波となり響き渡った。
ブライの身体の自由が戻った。一瞬だけ。
『増長するのもいい加減しろっ!』
相手が巨大となった玉座から立ち上がり……掌を向けた。
直後に凄まじき衝撃波がブライ達を襲い……石の壁に叩きつけられる。そして石から伸びた冷たい無数の鉄の鎖がブライ達を縛めていく。
『……ならばその命、今奪ってやろうっ!』
鎖が身体を締め上げ……意識が霞んでいった。
この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。
途中ですが感想をお待ちしてます。