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13.統べるモノ 1

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

13.統べるモノ

 ふと……水滴が落ちたような音が耳の奥に響いた。

(なんだ?)

 ブライが頭を上げると……白色の球体の中。

 ぼぉっと光る球体。その中に……玉座が浮かんで見えた。

 漆黒と金で飾られた玉座が。漆黒と金で織り込まれた分厚い敷物の上に。

(誰だ?)

 玉座に誰かがいる。

 精緻な飾りが施された冠、宝石が飾られた錫杖。煌びやかな刺繍がなされた法衣を幾重にも重ねている。

 その姿はまるで……

(法皇?)

 何処かの惑星にあるという荘厳な教会を司り統べるという法皇に見えた。

 だが……明らかに違うのはその顔。

 骸骨の上に乾涸らびた皮膚が張り付いているような顔。

 眼窩に光りはなくそこには……ただ闇があった。

『…………』

 骸骨が何か言った。

『……よくぞここまで辿り着いた』

 なに?

『惑星ルクソルの総てを統べる……我が玉座によくぞ辿り着いた』

 玉座だと? オマエは誰だ?

『我が名は……人としての名は既にない』

 なんだと?

『我は真理を知り得たモノ。アルファでありオメガであり、唯一であり総てである。宇宙の総てを知り、叡智の総てを知り得た。つまりは神となり、この世界の次元空間の総てとなったのだ。そしてこの星にて……完全なる調和を実現している』

 調和だと?

『美しい山、美しい海、美しい森林、美しき大地。それらを美しく煌めかせる風。様々な生物が、細胞が、物質が、元素の性質のままに反応し、生み出され、行動している。総てが……宇宙の総てを体現している』

 宇宙の総てだと?

『知らないのかね? もっとも単純な物質は素粒子。陽子と電子で構成された水素原子。水素原子が集まり恒星となり、核融合の光を放ち、幾多の元素が創り出され、超新星爆発と共に宇宙に撒かれ……再び集まり惑星となり、生命となった』

 それで?

『生命は美しい。ただ、存在するだけで美しい。単純な細胞が、その遺伝子が、重なり、絡み合い、幾多の生物となり、存在し続ける。本能と呼ぶ、神経細胞の脈動を自らの行動と変えて存在しているのだ』

 …………。

『だが? 人間はどうだ?』

 何が言いたい?

『人間は……人間だけが知能と呼ぶ不必要な精神活動を発生し、行い、積み上げる。まるで神々に逆らい土塊の塔を天上界へと建てていくかのように』

 悪いことではない。

『悪い。それが総ての罪悪。原初の罪。悪の根源、悪魔の所業。人類こそが悪魔なのだ』

 オマエもその悪魔のなれの果てだろう?

『黙れっ!』

 言葉が気迫となり衝撃波となった。

 ブライは気圧されて……壁に叩きつけられた。

(何?)

 見れば……人間の身体の自分が石の壁に鋼鉄の鎖で繋がれている。

 腕が吊り上げられ、足首も石の床に繋がれている。自由の総てを奪われている。

 まるで……罪人のように。

『ほう? 自分が如何に罪深き存在であるのかを自覚したようだな』

 なんだと? ここは何処だ?

『気づかなかったのかね? ここは……君達が「遺跡」と呼んでいた場所。その中の……』

 相手は笑う。嘲るように。

『我が玉座だ。君達の仲間もここにいる。解るんだろう? 仲間の位置が?』

 見渡せば……玉座の左右、石の壁に繋がれているのはレミとラミ。そして玉座の向うの壁に……アルテが繋がれていた。

『我が玉座をここに設けてから……ここまで辿り着いたのは君達だけだ。その無謀な行いに敬意を払い……我が意志を、宇宙の真理を君達に伝えよう』

 意志? 真理?

『宇宙には……人間は不要である……と』


 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

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