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12.遺跡へ 2

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

「何よそれ?」

 アルテが訊き返す。睨むような目で。

「オレ達が今まとっているナノマシンは元々は……あの遺跡のモノだ。それをオレ達の親が再プログラムした。それでも元の記憶というか記録は残っている。そんなトコロじゃないか?」

「でもアタシ達は解らないわよ?」

 アルテの問いにレミとラミも肯く。

「それは……」

 ブライは頭を傾げる。ブライ自身も何故理解しているのかが解らない。

「たぶんダイブインの経験時間の違いじゃないのか?」

 ありきたりな答えにアルテ達は「つまらない」とそっぽを向く。

 ブライは「どんな答えを望んでいた?」と訊きたかったがやめて空を見上げた。

 いつも見える月が見えない。

 移民船セルケトは軌道に沿って動き、今は地平の下、惑星ルクソルの反対側なのだろうか。さっきまで上空にいた戦艦テミスもセルケトに沿って移動しているのだろう。

 頭の中でタイマーがカウントダウンを続けている。タイムリミットまでの時間を。

 ナノマシンと合体し自身がサイボーグになってしまったという実感はあまりない。それでも便利だと思ってしまうのは……別れ際のキッズ達の反応だろうか。それともビージー達の願いだろうか。

 それともセルケトから伝えられた自分達の親の研究の成果だと理解しているからだろうか。

 或いは……これからの戦いを、その無謀さを理解しているからだろうか。


 不意に信号が届く。

「ん。信号を確認。惑星往還機が戦艦テミスに着艦。全員、保護された」

 ブライが脳裏に届いた信号を確認。アルテ達も同じく確認し肯き合う。笑顔で。

「キッズ達もビージー達も無事」ラミが確認するように呟き笑う。

「セルケトも……少なくとも端末1体分は無事」アルテも微笑む。

「後は……コイツらを叩きのめすだけ」ブライが気合を入れる。

 脳裏に浮かぶカウンターの数字が残り18時間ちょうどを示した。

「それでは突撃なのです」レミが宣言し、全員がウォーマシンの姿となって突撃した。

 彼らの数千倍のナノマシンの塊に向かって。


 もう自分の能力に疑いはない。

 戸惑いもない。


 総てはイメージするだけで、あらゆるモノになれる。

 あらゆる能力を実現できる。


 ディアナ達との戦いで実感した。

 総てはイメージするだけだと。


 アルテは岩山を駆け下りていく。足の形が変り無限軌道となり、岩を削るように破壊して突き進む。

 ブライは空を飛び、炎と化していく。炎の鳥となり尖塔の一つに突撃した。総てを炎で焼き尽くすかのように。

 レミもまた尖塔の一つに突撃した。自身を氷の槍へと変えて。

 ラミは遥か上空から尖塔の一つに急降下して突撃した。雷光と共に。

 アルテが尖塔の根本に突撃した。地面から叩き折るかのように。

 そして……長い戦いが始まった。


 ナノマシン達は虫の集団のようにブライ達にまとわりつき、自由を奪おうとする。ブライ達は炎となり、稲妻を放ち、虫たちを凍りつかせ、石へと変えて叩き壊す。

 だが相手は無数。

 たちまちのうちにナノマシンに呑み込まれていった。


 遥か上空。

 宇宙空間に位置している戦艦テミスは惑星ルクソルを回る軌道から離れ、外宇宙へと向かっていた。

 探査船であるランス02型数隻を遺跡上空の静止軌道に残して。

 そして全員が戦艦テミスのブリッジに集まり、巨大なスクリーンに映る遺跡の状況を見つめていた。

『始まりましたね』テミスが呟く。

『ええ。始まってしまいました』セルケトが祈るような姿で見つめている。

 遺跡からは紅蓮の衝撃波、青藍の衝撃波、稲妻や純白の衝撃波が数舜毎に放たれブライ達の戦いの凄まじさを露わにしている。


 その一方で……

 落下しつつある移民船セルケトではディアナ25以下12体が作業を続けていた。

『メインシステムは後っ! 空間跳躍システムを最優先っ! セルケトの落下を食い止めるっ!』

『ブライさん達は……勝てるのでしょうか?』

『ディアナ36っ! 無駄口は後っ! ブライさん達が勝ってもセルケトが落ちたら何にもならないからねっ!』

 それでもディアナ25は通信を繋いだまま作業を続けている。

 ランス02型からの映像を見続けている。

 遺跡の状況を見守りつつも自分達の作業を続けていた。



 ブライは疲れて途切れそうになる意識を繋ぎ止めていた。

 何度も挫けそうになる。総てを投げ出したくなる。

 もう何時間戦っているのだろう。

 サイボーグとなったが故だろうか。空腹感は感じない。

 それでも何かが……失われていく。

 心の中の何かが少しずつ失われていく。

 無限とも感じられる時の流れの中で……疲労が囁く。

(もう……いいんじゃないか?)

(充分戦っただろ?)

(戦いを止めても誰もオマエを責めない)

(止めてしまえ)

(戦うのを止めてしまえ)

(総ては無駄だったのさ)

(オマエは星そのものと戦って勝つつもりなのか?)

(不可能だ)

(勝つことは有り得ない)

(相手は幾多の移民を根絶やしにした……怪物なんだぞ)

(化け物だ)

(悪魔だ)

(或いは神だ)

(人間が勝てる相手ではない)

(止めてしまえ)


「やめねぇっ!」

 ブライの気迫が炎となり、周囲のナノマシンを焼き尽くす。

「やめるモノですかっ!」アルテの叫びが聞こえる。

「やめてあげないのですっ!」レミの声も聞こえる。

「勝つまでやめませんっ!」ラミの声が響いている。

 脳裏に響く仲間の声が、意志が、気迫がブライを奮い立たせる。

「そうだっ! 勝つのはオレ達だっ!」

 ブライの叫びが響き渡る。が、直ぐにナノマシン達に覆われ、落ちていく……奈落へと。

 ……漆黒の闇の中へと。


 ……落ちていった。



 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 途中ですが感想をお待ちしてます。


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