12.遺跡へ 1
惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語
12.遺跡へ
再び空を飛び遺跡へと向かう。
「ブライ……手を離さないでよ」
アルテは巧く飛べずにブライに引っ張られている。
「……少しは自分でなんとかできないか?」
「気にしないでよ。アタシは気にしていないんだから」
妙な理屈をこねるアルテにブライは説得を諦めた。
先行するラミが急降下して、岩山の尾根の先、空中に突き出した岩棚の上に着地する。ブライ達も同じ場所に着地した。
「……でかいな」
ブライが呟く。ホテルからだと尖塔のようにしか見えなかったが、近づいてみると巨大な岩山としか感じられない。
辺り一面は岩だらけの平原。その中から天を突き刺すかのように遺跡が聳え立ってている。
遠くからは虹色に見えた遺跡が近づくと漆黒へと姿を変え、それでも所々が虹色に煌めいている。
「えーと。標高5千m。今居るこの場所が標高で500m程度みたいだから4,500mの尖塔ってコトね」
地に足がつき安心したようでアルテがいつもの調子を取り戻し、戦艦テミスからの情報を口にしてから……感慨を口にする。
「コレが総て……ナノマシンの塊だなんて信じられない」
「スコープで見てみな」ブライが自分の額の横を指先で叩き、眼前にスコープを出現させる。
「アタシは司令官で大将なんだからそんなコトは……あ、できた」
ブライの真似をするとアルテの眼前にスコープが出現し尖塔の表面をクローズアップした。その表面は……無数の漆黒の虫? いや総てが波打つナノマシンの塊だった。
「……うげ。アタシは虫が苦手なんだけど」
アルテは心底嫌そうな顔でスコープから目を逸らした。
「なんか……コッチを見ているような雰囲気なのですねぇ」レミが冷静に分析している。
「そりゃそうでしょ。アイツらはこの惑星の総てを統括しているつもりなんだろうし」
「でも、まだこっちを攻撃してきませんよ」
「いつでも対応できると思っているんでしょ。油断大敵って言葉を教えてあげないとダメね」
ラミが珍しくレミと会話を成立させている。
「油断はしていないみたいだが」ブライは冷静に分析していた。
「衛星写真では……遺跡の周りには虹色の湖が見えた」
「あ……」アルテ達はブライが言いたい事が解った。
「つまり……この岩だらけの場所にセドニウム遷移体というか液体となっていたナノマシンが溜まっていた……のね」
それらが今は見あたらない。岩の窪地があるだけ。
「つまりそれらを呑み込んで遺跡が自身を巨大化させているってコトね」
「ああ。随分と衛星写真よりもでかくなっているようだ」
「ワタシ達が来たので全部、呑み込んで巨大化したというコトなのですね」
「防御を固めるのは臆病者の証でしょ。準備万端、金剛堅固でも蟻の一穴で城が崩れるって言葉を知らないのね」
珍しくラミが諺を創作している。やはりレミとは姉妹だとブライは実感した。
「そんな言葉はない」
「やぁね。真面目に指摘しないでよ」
断言するブライをラミが肱で小突く。じゃあいつもの態度は何なんだと、ブライとレミとアルテは思ったが言葉にするのは止めた。
「……でも、全部相手しなきゃならないの? 何処かに弱点とか無いのかな?」
ラミがブライに少しの猫なで声で訊く。ブライは何かを探るような表情となってから遺跡の下を見るように示した。
「そのままスコープの種類を変える。そうだな。拡散ガンマ線スコープってのを選べるだろ?」
ブライに言われるままにスコープの種類を変えると視界が変わり……遺跡全体が透きとおって見える。
「そして下を見ると……コアが見えるだろ」
言われるままに視線を下に向けると……4つの尖塔の中心の下に巨大な球体が見えた。漆黒の球体が。
「多分アレが……コア。総てのナノマシンを操っているヤツだ」
「どうしてそんな事が解るの?」
アルテが訊く。レミとラミも同じコトを訊きたかったようでブライを見つめている。
「何でだろ? えーと……」
ブライが自分の頭をコツコツと指で叩く。
暫く悩んで出て来た答えは……
「たぶんナノマシン達の記憶じゃないかと」
この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。
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