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11.意外な戦い 2

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

 テミスからブライへと質問の矛先を変えては見た。しかしブライもまた現実を受けいるのが精一杯で半ば上の空。それでもアルテの質問に答えた。

「つまり……なんでもありの超能力者か魔法使いになっちまったてことだな。エレメントのおかげで」

 アルテはまだ納得していないようだが、「もう解らないけどもうどうでもいい」という表情を露わにした。

 ブライは諦念して何度目かの溜息を言葉に変えた。

「古い……なんかの辞典に載っていたという『不必要な領域にまで進んだ科学は魔術と呼ばれるだろう』って言葉を思い出したよ。まあ、誤訳だけを集めた辞書だったと記憶しているが」

「いいでしょ? こういう姿にならないと元凶である遺跡を叩きのめしにいけないんだから」

 アルテは開き直りの極地にいるようだ。

「そうなのです。コレが正しいヒーローとヒロインの姿なのです。一気に思いっきり強化したのですから」

 レミは悪乗りの極地にいる。

「そうね。さっさと遺跡を叩き臥させて、この星を取り戻しましょうよ」

 ラミはレミを注意するのを放棄して同調している。

「そうだな。オレ達が遺跡を制御するか、破壊すればテミスは……銀河中央政府の使命を放棄できるんだからな。そしてセルケトを完全修復できる」

 ブライの言葉にテミスは肯く。希望を込めたような視線で。

『皆様、御武運を。途中までディアナ達が送ります。離脱ポイントで皆様と別れたディアナは自力でこの惑星往還機に辿り着きます。では……これで』

 テミスが深々と一礼し、セルケト共に船内に消えた。キッズ達ははしゃいで手を振りながら。そしてビージー達は……沈痛な表情を隠さずに地上にまだ留まっている。

「ブライさん。アルテさん。レミさん。ラミさん。頑張って下さい」

 ハカセが涙をこらえながら敬礼の真似事をしている。ユキもマキもアキも涙を拭いながら手を振っている。いつまでも。

「早く行けよ。オマエ達が地上に残っていると……遺跡と喧嘩できないじゃないか。いつオマエ達を人質に取るかも知れないんだからさ」

 ブライは敢えて軽く言う。ハカセの気持ちが解りすぎるぐらいに解っていたために。

「はいっ! エレメントは……総てボクが解明しますっ! 例えブライさん達が……」

 ぱしししし。

 軽い音が響いたのはアルテ以下、ユキ、マキ、アキがハカセの頭を前後左右から万遍なく軽く叩いた結果。

「ハカセ? その先は言わない」アルテがウィンクする。

「そ。ハカセって空気読まないんだから。それはクセなのかな?」ユキが肩で小突く。

「いくら頭がよくてもネ? 度胸とTPOがないとダメダメだぞ?」マキが指で突っつく。

「そうだヨ。英雄になるのはブライさん。ハカセは精々、家来だね」アキが止めを刺した。

 ハカセが涙目でブライに助けを求める。が、ブライはハカセの額を指で小突いた。

「さあ、さっさと行った。宇宙からオレ達のことを見ていてくれ。な?」

「はいっ!」ハカセは大きな声で返事を叫び、もう一度、敬礼して船内へと駆けていった。

 ユキ、マキ、アキが続き、往還機の扉が閉められ……空に舞い上がった。

 ブライ達とディアナ8体を残して。

「さあ。往還機が見えなくなるまで……」

『……見送っておられたら私達が帰れなくなります』

 ディアナ1が冷静に言う。

「は?」ブライ達が異口同音に訊いた。

『皆様が少なくとも私共と同じ性能、或いはそれ以上を持っておられるのでしたら、ここから戦艦テミスの外装検査ができるでしょう』

 いくら何でもそんな……と思い、今、真上に位置している戦艦テミスに見上げると……

「へ?」「え?」「あ!」「……できますね」

 確かに外装板の継ぎ目が見えた。

『現在、皆様の全細胞にイノーガ・エレメントが同化しているのが確認できます』

 ディアナ1が不敵に笑った。

『視神経もそうなのですが、驚くべきは……皆様が情報を無意識下で共有、解析していることです。皆様がもう少し立ち位置を広げられればもっと詳しく見えられるでしょう』

 試しに互いに数歩離れてもう一度見上げると……外装板を止めているビスまで見えた。

「はあ?」「あらら」「あ、あのビス、取れかけてる」「レミ、そんなコトは良いからっ!」

 ブライは脳裏から単語と知識を引っ張り出して感心してしまった。まるで合成開口望遠鏡のようだと。それは幾つかの望遠鏡のデータを付き合わせることで望遠鏡間の距離を口径とした巨大な望遠鏡と同じ分解性能を実現するシステム。

「つまり開口合成望遠鏡ってコト?」ブライの脳裏の情報を口にしたのはアルテ。

「便利ですね。邂逅豪勢って……豪華な歓迎会ですか?」何かを勘違いしているレミ。

「レミ? 音韻しか合ってなくて意味が全然違う。というか創作している」ラミは頭を押さえて指摘した。

「なんか……テレパシーというが情報共有機能もついていたとは」ブライは呆れるしかない。

『気にする必要はありません。私達も同じように互いに情報を共有しています』

 それは確かだろうとブライは思った。トマを救出した時のディアナ数体による連係攻撃は情報を共有していなければ実現不可能だ。

『では……参りましょう』


 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 途中ですが感想をお待ちしてます。

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