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10.イノーガ・エレメント 遺されていたモノ 1

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

10.イノーガ・エレメント 遺されていたモノ

『ブライ様とアルテ様、そしてレミ様とラミ様の御両親は遺跡を調査し……解明致しました。遺跡がナノマシンの集合体であることを。そして「あるプログラム」でナノマシンが制御されていることまで解明しました。そのプログラムとは……「ガイア神教」の規範、つまりガイア神教の……ある狂信者の意志が遺跡を司っている総てだと』

 セルケトの説明を聞きながら皆は倉庫へと向かっていた。テミスも、そしてディアナ達も数体従っている。

『この中に……皆様の御両親が辿り着いた研究の成果が、結晶があります』

 倉庫の端にあるブライが見つけたドアの前に立つ。三色の3つの菱形が六角形の中にある相転移炉動力室にあるのと同じマークが書かれているドア。セルケトがノブに手を伸ばし……そして動きを止めた。

『いけません。このドアの鍵は……何処に仕舞ったのか。記憶が損傷しています』

 セルケトは額に手を当てて記憶を探るが……損傷してしまった記憶は空白を返すだけ。

『お気になさらず』ディアナ1が前に進み出て、ドアノブに手をかけて力任せに回す。

 金属がひしゃげる音が響き、ドアノブというよりもドア自体が引きちぎられて……強引に開けられた。

『おや? どうやら長年の劣化で脆くなっていたようですね』

 ディアナ1の冗談に皆は引きつった笑いで「違うだろ」と心の中で返していた。


 ドアの中に入ると……様々な研究用の機材。そして……壁際に放置された壊れたアンドロイドが数体。その姿形は……

「セルケト? のスペアなの?」

「どうして……こんな所に?」

 訊くアルテとブライにセルケトは微笑む。

『調査用のロボット、つまり御両親が筐体で制御する調査ロボットに私のスペアボディを提供致しました』

 セルケトは微笑んだまま、自分のスペアボディを見つめる。

『……それしか私には協力できる術がありませんでしたから』

 セルケトを支えているテミスは『バカなことを』と呟いた。

『それで本体が停止したのですね。スペアが存在し、移民船本体で待機していれば、あのようなデジタルウィルスで移民船本体が停止することはなかったでしょうに』

 セルケトはテミスに微笑み返す。そして奥へと歩を進めた。

『私は移民船として失格ですから。何度も移民を……この星に来た方々を失っています。私が、私だけが何体も残っていても仕方ありません。私もでき得ることは総て成し遂げたかっただけです。私は……私自身は銀河中央政府からの指示で調査は禁じられています。ですが、人間の制御で遺跡に赴くことは……銀河中央政府から禁止されてはいませんでしたから……』

 ブライは「それで……記憶が無かったのか」と心の中で呟いていた。

 普段から見ていたセルケトが目の前にいて、別のスペアボディが筐体で制御されていた。

 だから記憶に筐体で制御していた調査ロボットの記憶が……無かったのかと納得していた。

『だから私は私の総てを賭けて協力を申し出たのです』

 テミスは目を閉じて呟いた。

『だからといって……アナタが停止してしまっては……』

『良いのです。私は……総ての元凶が遺跡だと信じていましたから』

 セルケトはアルテとブライを見る。レミとラミも。

『そして賭けていました。移民船としての運命を、使命を……皆様の御両親に。調査に賭けていました』

『バカなことです』テミスは一蹴した。

『イシス様の記憶にも在ったでしょう? 機械である私達は「バクチは禁止」だと。そんなコトも忘れてしまったのですか?』

 セルケトは力なく笑った。

『私は機械である前に……移民の皆様を御守りする責務がありましたから』

 そして言い直した。

『いえ……移民船として失格である私は……この星が人間を拒むのでしたら、それを取り除くことで失格であることから逃れたかっただけなのかも知れません』

「そんなコトはない。そんなコトはないからっ!」

 アルテがセルケトの手を握る。

「セルケトは……移民船として私達を護ってくれていた。失格なんかじゃない。私達にとってセルケトは……失格なんかじゃない」

 セルケトは微笑むだけ。

『もったいないお言葉。ですが……私はやはり失格です。何故ならば……皆様に星の運命を決めて戴かなければならないのですから……』

 部屋の奥に辿り着き、指差す。セルケトが示す先には……虹色に光る液体が満たされた大きなガラス槽が在った。ガラス槽には数個の電極が浸されており、そしてプレートが貼られていた。

 ブライ、アルテ、レミ、ラミと記されたプレートが。

『遺跡を構成するナノマシンを採取し、ブライ様、アルテ様、そしてレミ様、ラミ様用に再プログラムされたナノマシン。それが……』

 セルケトは数舜、言葉を止めた。まだ迷っているかのように。

『……皆様の御両親が遺されたイノーガ・エレメントです』


 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 途中ですが感想をお待ちしてます。

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