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7.壊されたセルケト 2

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

 暫くは普段のままに過ごした。

 だが……突然の爆裂音が事態が急変したことを告げた。

「何っ? 今の音はっ!」アルテが大声で誰と無しに確認する。

「旧市街の方だ」ブライが音のする方を確認して呟く。

 そして……テミスが自分の耳に手を当てるような仕草をして『何ですって?』と困惑の表情を浮かべた。

 そしてセルケトがモニターの電源を入れ、回線を255に固定する。

 大きく映し出されたのは……インカムをつけたディアナ達。

 ブライはディアナ達のチョーカーとイヤリングに飾られた24という数字から宇宙戦艦『テミス』に残って制御しているディアナ達だなと推測した。

『すみません。昨夜のうちに大気圏に緩速突入を果たしていたようです』

『では先程の大気圏突入は?』テミスが訊き返す。

『囮でした。無人の突入機です。今ディアナ12が確認』

 モニターが誰も乗っていない小型の突入機の映像を映す。

『私としたことが……』テミスはギリッと唇を噛む。

『ディアナ1~3はホテルを警護っ! 4~9を現場に派遣っ! 派遣先は旧市街。急げっ!』

『はっ!』

 直後にホテルの庭先の惑星往還機が飛び立つ。3体のディアナを残して。

 モニターが再度切り替わり……衛星軌道からの旧市街地の映像になる。

 再び数箇所で爆裂し、粉塵が舞い上がる。

「やつらは……一体何をしているんだ?」

 ブライが呟く。予想とは違う相手の挙動に戸惑う。

『今……銀河中央政府から通信が届きました』テミスが報告する。

『彼らは……囚人。ただし、無人の星からの鉱石などの採取と売買は認められている……行動自由終身刑の囚人です』

 それは宇宙を監獄とした終身刑。自身の糧を自分達で探させ、社会は有益な資源を囚人達から得るという……コストを重視した宇宙時代の刑罰。

『昨日モニターに映したのは……自分自身の行動規範文書と採取可能対象星のリストの本と推定されます』

「それじゃ、アイツらが……この星に降りる権利はないんでしょ?」

 アルテの問いにテミスが肯く。

『しかし、内容はほぼそのままです。移民が成功していない星の場合、居住区以外の場所での「採取」は認められています』

 テミスの返答にアルテが怒った。

「でも旧市街はみんなが住んでいた場所よっ! 壊したりしていい場所じゃないわっ!」

『当然です。このコトは銀河中央政府に報告致します。ですが……』

 再び爆発音が響く。

 映像は惑星往還機からの映像に切り替わる。爆発箇所も詳細に解るようになった。

『今成すべきコトは実力による強制排除です』

 画像に往還機から飛び立ったディアナ達が映る。携えているのは……長銃身の銃器。

『そして先住者は……総ての行動を取ることが赦されています』

 テミスが微笑む。その笑みは……凄絶。

『私は先住者であるアナタ達、そしてアナタ達の代理人であるセルケトから彼らの強制排除を委託された。それで宜しいですね?』

 念のための確認にセルケト以下全員が怯えながらも首肯した。

 ただ一人ブライはモニターの中に違和感を覚えた。

「ちょっと待て。今の所の左下をズームしてくれっ!」

 指示されてズームされた映像の中には……

「トマっ?」アルテが叫ぶ

 トマは農作業ロボットを操作して走っている。

「アイツ、何でそんなところに……」ブライは唇を噛み締めた。



 トマはテミスが来た時、セルケトの後ろに隠れるようにしていた。

 そして直後のバグラン達の大気圏突入に一人で倉庫に走り……ロボットに飛び乗った。

 直後にディアナ達が飛び立ち……トマは自分が向かう必要が無くなったと判断した。

 しかし……自分の中の正義感はまだ燃え上がっている。

(賊はあのアンドロイド達に任せて……何をすべきか?)

 暫し考えても答えは見つからない。

(そうだ。取り敢えずパトロールすべきだ)

 いつだったか観た映画の保安官はいつも街を見回っていた。

 自分もそうすべきだと勝手に決め、旧市街へと向かった。

 誰にも告げることなく……


 そして今、旧市街で賊が暴れている。

 自分は正義の保安官だっ!

 トマは興奮していた。

 現場に向かい、不埒な暴漢をやっつけてやるっ!


 それが如何に無謀で無責任な行動だと何も省みずに……


 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 途中ですが感想をお待ちしてます。

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