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6.乱入者 2

 惑星に残された12人の少年少女とアンドロイド達の物語

 アルテが直ぐに言い返す。

「だってっ! アタシ達だって戦いたいんだものっ! ブライだけに危険な方法をさせてまで……戦うなんてできないわっ!」

「そうなのです。つまりワタシ達は一蓮托生、輪廻転生、活殺自在なのです」

「レミ? 最初のしか合っていない。ま、とにかく、ブライだけに全部、背負って貰うっていうのもアタシ達には辛いの。苦しいのよ。だから……無理のない範囲で性能UPを図った。という訳。最初は平衡感覚の混濁みたいなのが酷かったけど、今は馴れたからもう平気だよ」

「レミやラミが言うとおり。アタシが……最初に始めて、レミとラミも無理のないように少しずつ……始めたの。ごめん。言わなかったのは謝る。でも……」

 ブライはアルテの言葉をテーブルを拳で小突いた音で止めた。

「……解った。最近の……レミやラミの動きがよかったり、アルテの指示が素早かったのは……そういうコトなんだな」

 ブライの中で……1つの疑問が解消した。それは……少しばかり苦さを伴って。

 総て自分1人で背負うつもりだった。だが、それは相手にとって重荷でしかなかったというコトが……苦い何かとなって心に残った。

 しかし、それは心苦しくはなく、自分が自分を叱責しているような、そんな感覚だった。

「オレが自分で……自分勝手に背負い込んでいたというのは解った」

 ブライは心の中の苦い何かを吐き出すように深呼吸した。

 そしてテミスに訊き直した。

「だが……最初のオレ達の問いにはまだ答えて貰っていないな?」

 テミスはふっと笑顔になった。

『そうですね。ビーチで言った言葉の幾つかは訂正しなければなりません』

 テミスは目を伏せて言葉の一つ一つを選ぶかのようにゆったりと間を開けてから答えた。

『……遺跡の前でお会いするのはブライ様の他にアルテ様、レミ様、ラミ様になるでしょう。そして遺跡に立ち向うのはその4人。或いはさらに私達。それでも最後の要になるのは……やはりブライ様だけとなるでしょう。ブライ様が戦う理由は……アルテ様、レミ様、ラミ様、そして今ブライ様の周りにいる総ての方々、場合により100光年以内の近傍の総ての星系の方々のため』

「なに?」

 いきなり、話のスケールが大きく変わりブライは困惑した。

「話がでかくなりすぎだな。それじゃまるで……」

 言いかけたブライの脳裏で「ある可能性」についての記憶が……イメージが展開された。

「……相転移炉開発時代、空間跳躍技術開発時代のお伽話。正体不明の魔女の話。ラプラスの魔女……だな?」

 テミスは黙って笑みで応えてから言葉を続けた。

『単なる可能性……としての話です。そしてその可能性を実現させないために私達が来た。と受け取って戴いても構いません』

「なるほどな。確かにそうだ。単に「避難」させるためだけならアンタが来なくてもセルケトに指示すれば済む話だからな」

『お解り頂けたようで何よりです』

 テミスは顔の前で合わせた手を小さく叩いて喜んでいる。

 ブライは行き場のない感情を抑えているようで息が荒れている。

 そして皆は……意味が判らずに疑問符を表情に浮かべている。

 セルケトは何やら肩の荷が少し下りたようで穏やかな表情に戻っていた。

『それでは皆様、お食事に致しませんか?』

 テミスの提案にブライが応じた。

「ああ、そうしよう。今すべきコトはそれだけのようだからな」


 食堂のモニターにテミスが映り、皆と一緒に食事をしている。

 テミスの食事はひと欠片の何かを食べただけの簡素の極み。その後はただ水を飲んでいるだけ、そして微笑みながら皆の様子を見ている。

 キッズ達は最初のうちはテミスを気にしていたが、その後は気にもかけずにいつもの調子。ビージー達は終始気にしているようだったが、それも敢えて無視するかのようにいつもの調子を装っている。ブライは無言のまま食べ、アルテはキッズ達に注意しながらもブライの様子を気にして、レミとラミはそんなブライとアルテの様子を気にしつつ食事している。

 たまりかねてアルテが小声でブライに訊いた。

「ねぇ。ブライ、さっきのコトを教えてよ。何とかの魔女って何なの?」

「後で言う。今は……オレも言いたくはない」

 だが……ブライが言わなかったコトは突然、明らかにされた。


 何の前触れもなく、食堂のサブモニターの電源が入った。

「なんだ?」

「超新星の前兆? それとも避難船の救難信号?」

 そのモニターは緊急回線用のモニター。近傍で何らかの災害が発生した時、発生が予想される時に強制的に立ち上がる。

 そして映し出されたのは……

「はろー。あろー? ボンジュール。グーテンターク。ボンジョルノ。ブエナスタルデス。ボアタルデ。フーテミッターフ。グディ。グター。グドッグ。ヒューヴェバスヴェ。ドブリジェン。ドーバルデン。ブナズィバァ。ヘレテ。シャローム。ナマステー。惑星ルクソルの皆様。お元気かな?」

 むさ苦しい髭面の男だった。

「ロバー? 今はアイツらの居住区は夜だよ。昼間の挨拶だけ並べても意味ないだろ?」

 後ろに響いているのは声の主が高慢ちきだと見なくても解るような艶っぽい声。

「そうそう。さっさと戴くモノを戴きましょ」別の男の声が響く

「バンデ? 物事には順序ってモノがあるんだよ。ロバー。さっさとお退きっ!」

 後頭部を蹴られたようで髭面の男の顔がモニターいっぱいに映り、そして消え去ってから、レンズの汚れが綺麗に拭き取られて……下目に見下ろす些か年が嵩んだような美女が映った。

「ごきげんよう。惑星ルクソルに現在、居座っているガキ共。ご機嫌如何?」

 ブライ達が口々に抗議しても相手に伝わる訳がない。



 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。

 途中ですが感想をお待ちしてます。

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