5.疑惑と困惑 1
惑星に残された12人の少年少女の物語
5.疑惑と困惑
その夜。
ブライとアルテ、レミ、ラミ、そしてハカセはブライの部屋にいた。
ブライとハカセは椅子に座り、アルテとラミはベッドに腰掛け、レミは寝そべっている。
そしてレミ以外の全員が深刻な表情を隠さずにいる。
「どういう意味なんでしょうか?」
ハカセが声を出す。困惑のままに。
「まるでわかんないわよ」
アルテも困惑したまま。
「セルケトも何も言ってくれないし……ちょっと喧嘩になっちゃったし」
あの後、ホテルに戻ってからアルテはセルケトと言い合いになった。
いくら頼んでもセルケトは『今は言えないのです』と繰り返すだけ。そしてセルケトを庇うトマ達と喧嘩になってしまった。
「キッズ達にとってセルケトは母親だからな。庇うのは当然だろう」
ブライの言葉に全員が納得した。アルテ以外は。
「でも私達は仲間なのよ。セルケトは機械じゃない? 人間じゃないのよ?」
立ち上がって言い切ってから……アルテは後悔した。
「ゴメン。言い過ぎだよね」
しょげてベッドに座り直した。
「気にするな。セルケトが何か隠しているというコトだけは事実なんだからな」
ブライの言葉にハカセが疑問を返す。
「でも……テミスが嘘をついている可能性もあります。ボク達を混乱させるために……虚偽の情報を言ったのではないでしょうか?」
「その場合はセルケトが否定するはずだ。即座にな。だがセルケトは『話せない何か』自体は否定していない。つまりテミスが言ったことは事実だというコトだ」
「つまり……どういうコトになるの?」
ラミが誰と無しに問う。
答えたのはハカセ。自分自身を納得させるかのように説明する。
「セルケトは僕らに何かを隠している。そして「それ」は遺跡に関すること。そして7日毎に行っている戦闘というか戦争は「それ」に関係している。そして「それ」に最も深く関係するのは……」
ハカセがブライとアルテを見る。
「……深く関係するのはブライさんとアルテさん。特にブライさんに関係している。そういうコトになりますよね?」
言葉の最後が疑問形になってしまったのはハカセも自信が無い所為だろう。
「そうだな。そういうコトになる」
ブライは腕組みし自分を納得させるように同意した。
「それで? 遺跡って結局、何なの?」
ラミが問い直す。答えたのはブライだった。
「遺跡……遺跡に関する記録が残っているのは第8次移民からだ。それ以前の記録は……この星系に移民船が向かったという事が記録されているだけで、移民船が辿り着いたかどうかさえ疑わしい。そして……第8次移民の記録はデータとして朽ち果てた移民船にあっただけで、継続する観測記録があるのは……」
ブライは言葉を切ってから椅子に座り直す。
「トマ達の親がこの星に移民してから。そしてある程度の開発が進んだ段階で第10次移民団は銀河中央政府に追加移民の申請を行い、そして来たのがハカセ達。それでも遺跡に関する調査は行われてはいない。遺跡の調査で訪れたのは……」
ブライはアルテを見る。
「オレとアルテの親達。オレ達の親は科学者で銀河中央政府から遺跡の調査を依頼されて来た。もっとも……それはオレとアルテの親にとっては序でのこと。オレ達の親はコロニーに住み続けるのを嫌がっていたからな。惑星への移住を申請していた。そして……なかなか、許可が下りなかった。どこの惑星も人に溢れていたからな。それで調査依頼は渡りに船だったというわけさ」
「レミさんとラミさん達は?」
ハカセが疑問を口にする。
ブライはレミとラミより先に事も無げに答えた。
「レミとラミの親は技術者。あの筐体のメンテナンスを請け負うカタチで来た。そうだったよな?」
「そうよ」
「そうですよ。ワタシ達の御父様は技術者で色々なモノを作るのが好きでした。ワタシ達が小さい頃なんかナノマシンで玩具を……」
「つまり……第12次移民は遺跡調査が目的だったのですか?」
ハカセがレミの思い出話を遮って疑問を挟む。レミはちょっとふくれて枕を抱きしめた。
「そうだな。そういうコトになるな」
ブライの同意にハカセが意気込んだ。
「ではっ! それだとしたらブライさんの御両親の記録を調べれば何かわかるかも。調査記録とかがあるんじゃないですか?」
この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』、『101人の瑠璃』などの後編となります。
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