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3.束の間の休息 4

 惑星に残された12人の少年少女の物語

「ボク達のコントロール信号をテミスに送っているのは……交信しているのはセルケトです。ボク達のミスをセルケトが修正しているのではないでしょうか?」

 同じ事はブライも思っていた。

 戦争では同士討ちが殆ど無い。そしてレミやラミのヒット率が高いようにも感じている。さらにはキッズ達の砲撃で敵が足止めされ続けているというのも……常識で考えれば有り得ない確率だとも思う。

 こっちが次第に上達しているように相手がこっちの行動パターンを学習し、回避することがあっても良いはずなのだが、それもあまり感じられない。

 結果として最近はブライ達が連勝している。

「……結局ボク達は単にゲームをしているだけなのかも知れません」

「違うな」

 ブライは一言で否定した。

 ハカセが何か言い返そうとしたのを機先を制して言う。

 空を見上げて。

「あの戦場の空を見たことがあるか?」

「空?」

「ああ。そうだな、オマエ達の操作方法ではモニター画面だから感じないかも知れないが……あの戦場の空はリアルだ」

「リアル?」

「そう。高さがある。深さがある。何と言うか……あの戦場の端を確認しようと戦争が終ってから何度か走り回ってみたが端はない。それ自体は戦場が3Dシミュレーションだという証明になるが……空だけは違う。雲が浮かんでいることも殆ど無いが、高さというか深さは実にリアルだ。あの空は戦場の大きさの何倍も奥行きがある。少なくともオレはそう感じている」

「つまり……どういうコトでしょうか?」

「ひょっとしたらあれは3Dシミュレーションではなく何処か……実際にある場所なのかも知れない。別の惑星とか。そしてその場所でロボット達を操っている。敵は敵のロボットを、オレ達はオレ達のロボットを」

「だけどそれではレスポンスの感覚が合いません」

「確かにな。超次元通信で操作しているのだとしても、信号自体は光速を越えられない。信号はセルケトが本体である移民船に次元跳躍させているんだろうが……その先が何処かの惑星とかだったらレスポンスというか反応が早すぎる。だから……結局はオレにもよく解らない」

 起き上がり、視線を水平に戻すとアルテ達が水から上がってこっちに戻ってくるところだった。

 揺れ動くモノに反応して視線を固定するのは日頃の「戦争」による眼球動作の鍛錬の賜物であり煩悩ではないとブライは勝手に決めつけ視線を不自然に逸らしてから軽く手を上げて迎える事にした。

「ま、たぶんキッズ達はセルケトのサポートがあるだろう。それでもテミス側から抗議されていないというコトは相手も承知しているというコトだ。こっちが気にすることではないさ」

「そうでしょうか」

「それより、今の話はアルテとかには言うなよ。特にキッズ達には。ヤツらは真剣に操作しているんだからな。それに子供とはいえプライドもある」

「解ってますよ。特にトマは甘やかせているせいか……結構わがままですからね」

 話題に上ったトマは一番にセルケトにしがみつき、タオルで頭を拭かれている。他のユミ、マユ、ユマのキッズ達もセルケトと作業ロボット達に身体を拭かれている。

「キッズ達にとってセルケトは……母親代わりだろうからな。ま、それも……」

 アルテ、レミ、ラミがこちらに向かってくる。ユキ、マキ、アキのビージー達も。まるで美少女コンテストの入場シーンのようだと再び煩悩が騒ぎ始める。

「……成長するまでの辛抱さ」

「そ、そうですよね」

 同じく内なる煩悩が騒ぎ始めたであろうハカセも口調が怪しくなっていた。

 そして目聡くハカセの変化に気づいたユキ達にハカセはからかわれ始めた。

「あー。ハカセったら勉強するフリしてアタシ達のことをずっと見ていたのかな?」

「それで、ハカセの好みってどんなの? 教えてよ。努力してあげるからネ」

「でもハカセも努力してくれないと相手してあげないんだヨ?」

 どう返せば解らないハカセは無言でブライに助けを求めるがブライもどう助けに入ったらいいのかが解らない。

「ブライ様。ずぅぅっとワタシ達のことを見ていたのでしょ?」

「ブライも年頃だものね。それで誰のが好み? もちろん水着のデザインのことだけど?」

「ブライ。ハカセと変な事を話し合っていたんじゃないでしょうね?」

 結局、ブライもレミにからかわれ、ラミにもからかわれ、アルテの冷たい視線を受けることとなった。

 ブライとハカセは「多勢に無勢だ」と心の中で呟いていた。



 この小説は『イシスの記憶』、『ラプラスの魔女』などの後編となります。

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