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ある日、女子高生がゲーマー男子を拾った話(仮)  作者: 七海


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1/1

一章 

タイトルも未定で仮となっています

五章前後予定で書いています。ブックマーク、いいね、評価などして貰えるとモチベーションに繋がるのでよろしくお願いします!


今後を書いていく内に少し内容が変わる可能性があります。すみません

『家探してます。出)FPS知識 求)家』

 なんだこれ。掲示板でこんな募集している人なんているんだ。

 いたずらか何かなのかな。


 何故かその書き込みが気になり、どうせ悪戯だろうと、何気なく返信してしまったのだ。

 それが始まりだった。


 そこからやり取りを交わしていくうちに、少しずつ現実味を帯びていき、最終的には現実になってしまった。


 どこかで引き返せばよかったのかもしれない。

 でも、相手の言葉を聞いていくうちに、自分に出来ることならしてあげたいという気持ちが湧いてきたのも事実だった。


 最後の最後まで葛藤していたが、色々込みでこうなってしまった。

 生憎一人暮らしだったし、相手が悪い人でなければ別に問題ない、と思える程度には軽率な考えでもあった。


 そして、予定時間を三十分遅れてやってきたのは、少年だった。




 喫茶店での待ち合わせ。そう、よくカップルなんかがやっているやつ。

 今の私たちも、傍から見たらそう見えなくもないのかもしれない。


 何故こんな形を取ったのかと言えば、最終チェックのようなものだ。

 万が一、出会った瞬間に「この人無理!絶対嫌!」となった時、最初から家だったら逃げ場がないから。


 正直、その理由一点でしかない。


 小さく中性的な面立ちに、しばらく手入れされていなさそうな長めの髪。

 年齢より幼く見えるその容姿が、私には少し魅力的に映った。


 それは異性的な意味ではない。要するに、家に泊めてもいいかどうかの評価点の話だ。


 私より一つ下らしく、こんなことをしたら本来捕まったりするのでは、とも思ったが、困っているのは本当らしいので決行した。


 ちなみに彼の年齢は十六歳。

 そんなのが家を探して困っているという事実の方が、私にとっては重大だった。


 出会ってから、挨拶以外の言葉は特に交わしていないまま今に至る。

 無論、私は観察して今後どうするか考えているだけなのだが。


 おおよその話はチャットでやり取りしていたし、今さら何か深い質問をするほどでもない。


「じゃ、そろそろ家に行こうか?」


 まるで男性側が言いそうなセリフ。

 彼は頷き、私の後ろをついてくる。


 私が彼に持った第一印象は、大人しい、だ。

 正直その性格にしてはやけに大胆な行動に出ているなとも思ったが、それを言うのは野暮かもしれない。


 先ほどと同様に特に会話もなく、彼は私の後をとぼとぼと付いてくる。


「上がって。特に何も気にせず、我が物顔で過ごしてくれていいから」


「分かりました」


「言葉も無理に敬語にしなくていいからね。気楽にしてくれていいから」


「はい」


 こりゃしばらくはこのままかな。

 お互いに適切な距離感があるし、彼が気にしないなら別にいいんだけど。


 私も必要以上に気を使いたくないし、そうならないように自分でも気を付けよう。


 それからこの家の中を説明し、これからの共同生活のルールを作ることにした。

 とりあえず私の家なので、私優先にレールを敷いていく。


 一、家事などは基本私が行う。疲れている時やしんどい時などに代わりにやってもらう可能性あり。

 二、この家に外からの面倒事を持ち込まない。

 三、緊急時以外、私が寝ているところを起こさない。

 四、お金は必要以上無駄に使わないこと。

 五、時々私のお願いを聞くこと。


「こんなものかな。生活していて不自由に感じたり、何かあったほうがいいなってことがあったら、その都度追加したり消したりする予定。何か不満ある?」


「不満どころか、ルール少なくないです……? あと、最後のお願いってなんですか?」


「いっぱいあっても面倒だろうし、まだ分かんないけど最低限でいいかなって。お願いってのは……分かんない!なんとなく入れただけだし、特に深い意味はないよ。無理難題を言うわけでもないし、本当に嫌だったら断ってくれていいから」


「分かりました。自分は最初の条件通り、パソコンでゲームができればそれでいいです。あとはゲームの知識を出すことぐらいです」


「それならおっけーかな。うちには生憎パソコンが二台あるし……片方はしばらく使ってなかったけど、多分使えるはず。ちょっと確認しよっか。もし動作に問題あったら、今使ってる方を貸すし」


「いえ、そこまでしてもらわなくても……」


「流石に困るでしょ。それが条件だったわけだし。ま、ひとまず確認しよっか」


 動作には問題なさそうだった。スペックも不足ないし、多分大丈夫だろう。


「これなら大丈夫そうです!」


「何かあったらすぐ言ってね。それに生活面でも、これがあったらいいとか嫌なこととか、遠慮せず言ってくれていいから」


「ありがとうございます。多分大丈夫だと」


「それならよかった」


 しばらく生活してみないと分からないことも多いだろうし、一旦はこれで大丈夫だろうか。

 出来る限り、少ないトラブルで済むことを祈るばかりだ。


「冷蔵庫とか棚に入ってる食べ物飲み物も適当に使ってくれていいから。食器とかも自由に使って。あとはタオルとかも……そういえば着替えとかって入ってる?」


 彼はリュックサック一つで来ているわけだが、何が入っているのかすら分からない。


「着替えを一式一着だけです。パソコンのデバイスと、少しのお金しかないです」


「んー、了解。私はそこまで汚くなければ特に何も言わないタイプだから。流石に一週間とかお風呂に入らないのはやめてほしいけど、その辺どう?」


「流石にできるだけ入ろうとは思ってました。とりあえず一日一回。着替えがなかったら二日に一回とか」


「そだねー。とりあえず部屋着だけでももう少しあったほうが楽かもね。特にこだわりなければ私のでもいいし、あれなら適当に買ってくれてもいいし、私が見繕ってきてもいいし」


「え、いや……流石に服を借りるのは……」


「やっぱそうだよねー。人の服着るのは抵抗あるだろうし、適当に買ってきとくよ」


「いや、そういう訳でもなかったんですけど……そうしてもらえると助かります」


「うんうん」


 ま、大丈夫そうか。

 やはり初対面での会話は相手の考えが読めないから難しい。不快な思いをさせていなければいいのだけれど。


「えーっと。あと今のうちに聞いておきたいことある?別にいつでもなんでも聞いてくれていいけど」


「いえ、多分大丈夫だと思います」


「ならおっけーかな。じゃあ、あとは好きなように過ごして。私も自由に過ごすので」


「はい。分かりました」


 彼は椅子に座り、パソコンを触り始めた。


「あ!ちょっと待った!」


「どうしました?」


「すごい今さらなんだけど、自己紹介だけお互いにしない?まあ、そこまで干渉しないなら必要ないかもだけど、一応一緒に過ごすわけだし、名前くらい知っておいても不自由ないかなって」


「あ、そうですね……忘れてました。僕の名前は三上誠みかみ まことです」


「まこちゃんねー。おっけおっけ」


「まこちゃん……」


 少し嫌そうな表情をしているが無視。


「私は七社美也ななしゃ みや。呼び捨てで好きに呼んでくれていいから」


「分かりました」


「そういえばご飯とかってどうする?特に要望なければ私が食べる時間に用意するけど」


「え、僕の分も用意してもらえるんですか?」


「そりゃするよ」


「そこまでしてもらわなくても……」


「まあ、用意するから。食べなかったらそのまま置いておいて。余ってたら私が次の日食べるし」


「分かりました……」


 まあ、私が色々気を使いすぎるのも良くないのかもしれない。

 別に気を使っているわけでもないんだけど、向こうからしたらやりづらいかもしれないな。


 ご飯は大事だし、流石に言わないわけにはいかないんだけど。


 ま、最初に必要な儀式みたいなものか。

 ある程度、お互い慣れる必要があるだろう。


「じゃ、あとは自由に。夕ご飯、七時前後には多分できるから」


「はい」


 表情は硬いが、私的にはこれくらいで今はちょうどいいかもしれない。

 逆に馴れ馴れしかったら、鬱陶しく感じていた可能性もあるし。


 むしろ、ちょうどいい。


 さて、当の私は寝ることにしよう。今日は迎えに行く用事があって、あまり寝られていない。


 壁際にもたれかかり、そのまま目を閉じた。









 気が付くと、少し重たい身体を無理やり動かして時間を確認した。


 時刻は午後七時。

 沈みかけた光を見て、随分寝ていたことを察したが、思っていたよりも長く寝ていたらしい。


 彼の様子を見てみると、寝る前と変わらずパソコンに向かっている。

 特に問題はなさそうだ。


 一言謝るか迷ったが、ゲームに夢中なところに水を差すのも違う気がして、そのままご飯の準備に取り掛かることにした。


 普段なら、まだ体がだるくて起きない時間だ。

 けれど、作ると言ってしまった手前、それも逆に気まずい。


 こうして動いているのも、きっと最初だけだろう。

 それでも、こういうのも悪くない。


 そもそも何か理由がないと自分を無理やり動かせない性格だし、ちょうどいい。


 そんなことを考えながら、晩御飯の支度を進めていく。


 一応、逃げて帰る以外の選択肢を取るなら、最初から二人分作るつもりでいたので、食材はすでに買ってある。


 ……そういえば、食べられない物や好きな物の話も、そのうち聞いておかないといけない。

 食べられない物だけは出したくないし。


 ご飯を作るのって、思っていたより難しい。

 母親の気持ちが、少しだけ分かった気がする。


 もちろん自分がそこまで出来ているとは思っていない。ただ、想像するだけでも大変そうだという話だ。

 自分がそこまでやるかと言われれば、きっとやらないだろうけど。


 手を動かし始めてから、ふと気付いた。

 ご飯、炊いてない。


 急に作り始めたせいで、すっかり忘れていた。

 自分の分だけなら困らないけど、今日は大目に見てもらうしかない。


 豚キムチとサラダ。

 食べやすさと楽さを兼ね備えた、なんともありがたい組み合わせだ。


 もし彼が食べられなかった場合は、冷凍食品かカップラーメンで我慢してもらうことにしよう。


 ……それにしても、面倒だな。


 今までフライパンのまま食べていたから、わざわざ皿に移すのが少し億劫に感じる。

 皿だけ持っていって、食べる分だけ勝手に取ってもらうスタイルでいいか。


 正直、作ったものをいちいち別の容器に移す人たちの気持ちはよく分からない。

 だって、面倒じゃん。


「まこちゃんー、ご飯できたけど食べるー?」


 今さらだけど、家出でゲーミングデバイス一式とお金と服を持ってくるって、なかなか凄い。

 イヤホン越しでも聞こえるのかと少し思う。


 料理中にちらちら様子を見ていたが、特に変わった様子もなかったし。


「あ、はい!食べます!もう少しで終わるので」


「ああ、ごめん。慌てなくていいからね」


 それからゲームが終わるまで、食べる準備や軽い片付けをしていると、すぐに彼はテーブルまで来た。


「ゲームの途中、邪魔しちゃってごめんね」


「全然大丈夫です」


「とりあえず、味より先に食べられるかどうか聞きたいんだけど、大丈夫そう?」


「はい。全然大丈夫です」


「そっか。味は濃くもなく薄くもなく、普通くらいだと思う」


「分かりました」


「今日はパックのご飯だけど、いつもは炊いてる。量足りなかったらごめんね」


「そんなに食べる方でもないので、大丈夫です」


「あー、そういえば飲み物なんだけど、私いつもお茶か水くらいしか飲んでなくて。それしかないけど大丈夫?インスタントコーヒーならあるけど」


「水とかお茶で大丈夫です。ありがとうございます」


「そかそか。あと何かあったっけな……まあいいか。じゃ、冷めないうちに食べよ」


「はい」


「じゃ、いただきまーす」


「いただきます」


 家で誰かとご飯を食べるのは久しぶりだ。

 案外、悪くないなと思う。


 実家にいた頃は面倒でしかなかったのに、今は少し違う。

 久々だから、そう感じているだけかもしれないけど。


「ゲームは大丈夫そう?普通にできてる?」


「全然問題ないです。もったいないくらいの環境です」


「んー。なら、ゲーム環境の部分はクリアかな」


「あの……」


「どした?」


「特に見てはいないんですけど、データとか消してる感じじゃなかったので……大丈夫ですか?基本ゲームしかしないので、変なところは見ないと思うんですけど」


 一瞬、ご飯を吹き出しそうになった。危ない。


 確かにその辺りは何もしていなかった。

 動作確認すらちゃんとしていなかったくらいだし。


 見られて困るものはないと思うけど……実際に見てみないと分からない。


 パソコンのデータや履歴なんて、基本的には人に見られたくないものだし。


 今から初期化するのも面倒だしな。


「あとで軽くチェックしていい?初期化とかはしないけど、本当にざっと見るだけ」


「全然大丈夫です。嫌な思いはさせないと思います」


「まあ、その辺はやってみないと分からないしね。教えてくれてありがとう」


「特に問題なさそうでよかったです。それと、ご飯美味しいです」


「嬉しいこと言ってくれるね」


 この様子だと、何かあればちゃんと聞いてくれそうだ。

 こういう小さなところに人間性って出る。


「苦手な食べ物っていうか、これだけは無理ってものある?」


「ええと、梅は食べられないです。他は……」


 考えていることがそのまま表情に出ている。少し意外だ。


「あ、ありました。ナスも結構苦手です」


「梅とナスね。覚えた。他は買い物のときに聞ければ大丈夫そうかな。基本は食べてほしいけど、そればっかりも不公平だし」


「頑張って食べるので大丈夫です……!」


 なんか、凄くいい子っぽいなと思う。

 こういうので簡単に印象が変わるあたり、自分も単純だ。


「まあ、そうしてくれると助かるけど。無理しすぎると嫌になるだろうし、こっちでも気をつけるから」


「ありがとうございます」


 誰かと食事を共有するって、思っていたより難しい。

 毎日のことになると、なおさらだ。


 好みも違うし、それを知るのにも時間がかかる。

 合わせてくれることには、素直に感謝しかない。


「あ、そういえばお風呂なんだけどさ。シャワーは好きなタイミングでいいけど、服はまとめて洗いたいから、基本は時間合わせてもらっていい?だいたいご飯の後に入るようにしてるんだけど」


「分かりました」


 少し気になることはあるけど、今言うことでもない。

 そのうち慣れてもらうしかないだろう。


「ご馳走様でした」


「食べるの早いね。食器はそこに置いといて。お風呂もう使えるから、先に入ってきていいよ。タオルとかシャンプーとか、必要なものは適当に使って」


「分かりました」


 この子はとりあえず「分かりました」と言うタイプっぽい。

 知らない環境なら、そうなるのも仕方ない。


 一応必要なものは揃っているはずだけど、自分も結構ずぼらだし、足りないものがある可能性は普通にある。


 パジャマと普段着を分ける必要すらあまり感じていないくらいだし。


 ……歯ブラシ、持ってなさそうだな。


 あの荷物でそこまで揃っているとも思えない。

 一応、替えを置いておくことにする。


 それにしても、随分軽装で来たものだ。

 新しく人が住むにしては、かなり少ない。


 何が必要で、何が足りないのか。

 正直、私にはよく分からない。


 あの様子だと、こちらから言わない限り「なくてもいい」で済ませそうだ。


 そんなことを考えているうちに食べ終わる。

 さっさと洗い物を済ませることにした。


 綺麗に食べてくれていたし、悪くない。


 洗い物って面倒に感じることもあるけど、嫌いではない。

 やっているだけで、自分はちゃんとしてるなと思えるからだ。


 手際はあまり良くないけど、その分一つ一つ丁寧に洗える。

 それも悪くないと思う。


 何も考えずにいられる時間も、結構好きだ。


 だから、できる限り自分で家事をやりたいと思っている。













 今更だけど、私、凄いことしてるな。

 彼の方が凄いことしてそうにも感じるけど。


 洗い物も終わったし、今のうちにパソコンでも確認しておいてあげようか。


 何で我が家に二台も使えるパソコンがあるのかと言うと、プレゼントキャンペーンで当たったからである。

 あれって本当に当たる人いるんだ、って思ったな。


 はは、懐かしいなこれ。


 んー。特別これといったデータは残ってなさそうかな。

 ブラウザも別に変なの見てないしなー。いや、私が変って感じてないだけで、彼にとっては変な可能性もあるんだけど。


 うーむ。


 というか、新しいアカウント作ってもらって、元の方消しときゃいいか。

 これで特に問題なさそうだな。


 もし気まずいものがあったとしても、彼が空気を読んでなんとかしてくれるだろ。


「お風呂あがりました」


 出来立てほやほやの彼が目の前に立っていた。

 ヴィジュアル、意外と悪くないね。


「なんも問題なさそー?」


「はい、大丈夫でした」


「パソコンも一応確認しといたけど、多分大丈夫だから。何か変なの見つけちゃったら適当に対応しといて」


「は、はい……」


 なんか、初めて狼狽えてるところ見たな。

 もう既に何か見つけちゃったのかな。まあ、いいんだけど。


 ……何か忘れてるような。

 いつものサイクルと少し違うと、変な違和感があるな。


「じゃ、私もお風呂入ってくるから、あとはご自由に」


「はい」


「あ、そうだ。大事なこと忘れてた。寝る時どうしたい? 当初の予定ではソファーでブランケットでも掛けて寝てもらおうかと思ってたんだけど、寒かったり他に欲しいものがあったら、できるだけ希望に寄り添いたいんだけど。流石にベッドをもう一つとかは難しいけどね」


「それで大丈夫です」


「別に私いない時とか、何かあったらベッド使ってくれてもいいよ。流石に二人で寝るのには狭いし」


「そ、それは大丈夫です……」


「じゃ、それで」


「はい」


 これから寝る場所の問題は出てくるよな。

 ベッド二個は流石にスペースがきついし、掛け布団を調達するくらいかな。


 あとは、ベッドをうまく二分割して使うとか?

 私はいいけど、彼がそこまでしてベッドで寝たいかは分からないな。


 ま、いいか。


 ちゃちゃっとお風呂に入っちゃおう。


 湯船、気持ちいい。


 あー、今までは先にシャワー浴びたり湯船入ったり自由にしてたけど、今後は私が先に入るなら、先にシャワー浴びた方がいいのかな。


 湯船の使い方とかも、多少気を使うな。

 明日には気にしてなさそうだけど。


 というか、彼、私の中ではもうかなり生活に溶け込んでるな。


 正直、いてもいなくても私のペースを乱すような存在ではないかも。

 つまり、馴染んでるってことか。


 いや、どっちかというと、彼が何にでもなれる存在なのか。

 存在感が薄いというか、主張が少ないからやりやすいのもあるだろうな。


 ま、せっかく一緒に生活するんだし、楽しんでもらえればいいんだけど。


 朝ごはんどうするかな。

 というか、彼、昼ご飯どうするんだろ。鍵とかってあった方が絶対いいよな。後で覚えてたら聞いとこ。


 ふー。洗濯機も回してっと。

 流石にタオル一枚でうろつくのは終わりか。せめてもうちょっと何か着ないと。


 ゲームに夢中なところに話しかけるのも難しいな。

 ちょうどいいタイミングで声を掛けられたらいいんだけど。


 その方法も考えとくべきか。

 その辺の話もしとかないとな。なるべく邪魔したくないし。


 明日学校行ったら休みだし、その時にゆっくり考えよう。

 彼の生活リズムも分かんないし。


 寝る場所も、もう少しまともにしてあげたい気はあるんだけどな。


 まあ、私もいつも通り適当にネットでも眺めておこう。




 うーん。だらだらゲームしたりしてたら、もう二十二時か。

 思ったより時間が経っていた。


 彼の様子を見てみると、私がパソコンに向かう前と何ら変わりなかった。


 少し話がしたかったが、邪魔をするのもなと思い、少し戸惑う。

 しばらく様子を見て、空いた時に声を掛けるのがいいだろうか。


「どうかしました?」


 そう悩んでいると、視線を感じたのか彼の方から声を掛けてくれた。


「悪いね。ゲームは大丈夫?」


「ええ、はい。大丈夫ですよ」


 視線を感じながらの方が気が散る、ということだろうか。


「とりあえず明日のことを話しておかないといけないなって思って。私は学校行ってるから日中はいないんだけど、外出たくなったりする?」


「ならないです。できるだけ家にいたいです」


「それは好都合だね。まあ、近いうちに一応鍵作って渡せるようにしておくよ。コンビニくらい行きたくなる時あるかもしれないでしょ」


「分かんないです」


「ま、そうだよね。私もそんなに買い置きするタイプじゃないから、ご飯切れてる時とかあるかもしれないし。その時はコンビニかスーパーで買ってもらうか、私が帰ってくるの待ってもらう感じかな」


「家で待っときます」


 思ったより出不精なんだな。

 行動力の印象で、少しバイアスがかかっていた。


「分かった分かった。お腹空かせないようにできるだけ頑張るから。で、とりあえず明日の朝ごはんと昼ごはんは作って置いておくよ。私の感だけど、朝くらいまで、もしくはそれ以上ゲームして起きてるでしょ?多分入れ違いになるし、まこちゃんが寝てる時に出ていくことになるから」


「あー……それでしたら一食分で大丈夫です」


「そう?じゃあそうしとくね。これから二食分がいいとかになったら言ってくれればいいから」


「はい」


「後はー……ちょっと用事ある時とか、いい声の掛け方ない?ご飯の時とか、今みたいな時とか。あんまり邪魔したくないし、いい感じの呼び方があればいいんだけど」


「なんでもいいですよ。手を離せない時は少し待ってもらうかもしれませんが、いつでも呼んで頂いて大丈夫です」


「んー。そう?普通に声かければいい?」


「はい。それで大丈夫です」


「まー、分かった。一先ずそうするね。逆に今日過ごして何か聞きたいこととかあった?」


「特にないです。正直、自分には十分すぎる環境です」


 欲がなさすぎるのも困ったものだけど、彼は本当に当初の条件通り、ゲームさえ出来ればいいのかもしれない。


 必要以上にあれこれ言われるのも鬱陶しいだろうし、ここは素直に受け取っておこう。


「そういえばFPS教えてくれるって言ってたよね」


「は、はい!全然いつでも教えますよ!」


 初めて、少し生気のある表情を見た気がする。

 よっぽどゲームが好きなのだろう。


「今日はもう少ししたら寝ちゃう予定だから、明日でもいい?時間ある時で」


「是非!いつでも言ってください」


 今日じゃないと言った瞬間、分かりやすくしゅんとしたのが見えたが、そこは許してほしい。


「本当に下手だけど大丈夫かな」


「気にしないでください!一番大事なのは楽しむことなので!」


「そ、そっか。なら少し勇気出たかも」


「なんでも教えるんで、大丈夫ですよ!」


 教えられたからといって上手くなるとは思っていない。

 それでも、教えてくれる人がいるというのはありがたい。


 彼と私では熱量は違うだろう。

 それでも、だからこそか。少しだけ、頑張ってみようという気持ちが芽生えた。


「ありがとー」


 私は本当にカジュアルなゲーマーで、上手いとは言えない。

 ただ浅く楽しんでいるだけのレベルだ。


 彼は、見て分かるくらいには上手いゲーマー。


 そんな人と一緒にゲームが出来ることを、私は少し楽しみにしていた。










 朝起きると、暗い部屋の中で彼はまだゲームをしていた。

 別に部屋の電気を消さなくても気にしないよと言って、点けたまま寝たのだが、どうも彼は気を使ってくれたらしい。


 電気を点けたままでも、彼がゲームをしている音もさほど気にならないのだが、これが共同生活最初の距離感ってやつなのかな。

 彼が紳士的な人物であることを悪く思うはずもない。


「おはよー」


「あっ、おはようございます!」


「朝食作るけど一緒に食べるー?」


「食べます!」


「はいよー」


 朝食を食べるってことは、作り置きで昼ごはんはいらないのかな。

 まあ、寝てそうだし……?


 このままずっと起きてゲームしてる姿も容易に想像できちゃうけど。

 どっちにしてもそんなに変わらないし、一応作り置きで冷蔵庫に入れておいてあげよう。


 ……あ、忘れてた。昨日ご飯炊いてなかったから残ってないじゃん。

 いつもはお弁当用と朝用に残してるんだけど、完全に抜けてた。


 別に白ご飯抜きでいいか。朝は代わりに食パンとハムと卵で。


 良いことでも悪いことでもあるんだけど、人がいると考えることが少なくなっていい。




 ご飯を作り終えた頃には、既に彼は席に着いていた。


「はい、出来たよ~」


「美味しそうです」


「ちょーお手軽だけどね。一応お昼ごはん食べるなら冷蔵庫に入れといたから。別にお腹空いてなかったり寝てたら食べなくてもいいよ。別の時に食べるだけだから」


「は、はい。食べれたら食べます」


「うん。それでいいよ。無理に食べられてもこっちが気使っちゃうし」


「はい」


「はい、じゃあ、いただきまーす」


「いただきます」


「今日は、あー……どうしよっかな。多分五時ぐらいには帰れると思う」


「分かりました」


 色々多めに買って帰ろうかとも思ったが、明日休みだし、まとめて買った方がいいかと考えた。


「朝食も美味しいです」


「ありがとー」


 なんか、普通に良い子すぎ。

 一日しか一緒に過ごしてないけど、ちょっとペットみたい。


「もうしばらく起きてる?」


「すぐには寝ないかと思います。何かありました?」


「いや、どうするのかなーって思って」


「なるほど……。分かんないですね」


「りょーかい。まー何も無いと思うけど、呼び鈴鳴っても出なくていいから」


「分かりました」


「そういえば私学校行くから、私のベッドで寝てもいいからね?」


 その直後、出会ってから一番分かりやすく動揺した様子が見えた。


「だ、大丈夫……?」


「大丈夫です……。すいません。ベッドを借りるのは流石に……」


「まー、人の使ってるベッドって抵抗あるよねー。ソファーきついなーとか思ったら使うといいよ」


「分かりました……」


 生活リズムがずれてる利点だし、そんなに気を使わなくてもいいんだけどな。

 どうせならベッドで寝た方が疲れ取れそうだけど、抵抗と気遣いが勝っちゃうのかな。悲しき。


「今日の夜ゲーム教えてね~」


「はい!任せてください!」


 小さくご馳走様と言い、食器を片付ける。


「あ、すいません。自分の分まで」


「全然いーよー。ゲームしてきててもいいよ?」


「ちょっと休憩します」


「ははは。確かに休むのも大事だよねー。あれからずっとしてたの?」


「はい」


「タフだね~。疲れないの?」


「疲れないって言ったら嘘になりますけど、楽しいので。それに何もしてないと退屈ですし」


「確かにね」


 根っからのゲーマーらしい。私も気持ちだけは分かっちゃうな。


「倒れないようには気を付けてね。流石に倒れられたら困るし」


「それだけは気を付けます」


「うんうん」


 洗い物を終えて視線を戻すと、彼がこちらを眺めているのが分かった。


「どうした?何か珍しいものでもあった?」


「七さんって凄い良い人ですよね」


「今頃気づいた?って言いたいけど、別にそんなことないよ。まこちゃん目線だとそう見えるかもだけど、まあ、それだけが私の全てじゃないってことは知っておいた方がいいかも?」


「そうなんですか?」


「人間なんて色んな一面持ってるもんだしね。信用しすぎないのも大事なんじゃない?」


「そういうものですか。それでも、僕は信用しますよ」


 珍しくというか、少し踏み込まれてる感じ。悪い意味じゃないけど。


「調子狂うなあ。ほんと、私が悪い人間でも恨まないでね」


「はい」


 そんな真っすぐ目を見て言われても、困っちゃうな。


「ちょっと着替えたり、学校行く準備してくるね」


「分かりました」


 はーあ。

 今日も一日頑張るか。


 制服に体を通しながら、軽く気合を入れる。

 何事も起きませんように。


「よし、じゃ、そろそろ行ってくるねー」


「はーい。行ってらっしゃいです」


 私は新しい住民に手を振られながら、家を出た。




「美也~。朝から元気そうじゃん」


「そ?いつも通りだけどな。里穂も元気じゃん」


「まあね~」


 彼女は椎名里穂しいな りほ。中学からの親友といったところ。

 付かず離れず、互いに都合のいい関係だ。


「なんかいい事あった?」


「いい事~?あったらいいんだけどな~」


「そう?なんかいつもと雰囲気違く見えたからさ」


「へ~?特に何にもないけどなー。ま、明日休みだしね」


 私の微々たる変化を感じ取れるらしい。全く恐ろしい女だ。

 実際はいい事とはちょっと違うんだけど。


「確かにね~!ね、休み遊ぼうよ!」


「え」


「え、って何よ~!やなの~?」


「いや、そういう訳じゃないんだけど……」


 流石に男の子一人拾った、なんて言えるはずもない。


 なんか休みの日に遊びに行くって、妙に心配度が上がるんだよな。

 買い物とか学校と大して変わらないはずなのに。


 半日くらいならいいけど、一日出るとなると少し気になる。

 それに土曜日は、この二日で必要だと分かったものを買いに行きたい。


 けど、それを言うと一緒に行く流れになる可能性がある。

 普段買わないものを見られて、不思議がられて、最悪家まで来られたら終わりだ。


 それだけは避けたい。


 ……いや、どうしよ。

 本来なら全然いいのに、こういう時に限ってタイミングが悪い。


 に、日曜なら……?でもなあ……。


「も~、そんな悩むなら別にいいよ~。その代わりまた今度遊ぼーね」


「ごめん~。そうしてくれると助かる」


 流石親友。都合がいい。











 起きてるかな。流石に寝てるかな。


 こういう時って堂々と入るのがいいのかな。自分の家なのに。

 静かにこっそり入ると逆に驚かせちゃう気もするし、どーんって感じで入るのも絶対起こしちゃうだけだろうしなあ。


 共同生活ってむずかし。


 悩んでもしょうがないので、静かめに玄関を開けることにした。

 ていうか、中に入ったらどうせ音はするだろうし。


「ただいま」


 小さく、誰にも聞こえないように呟き、部屋に入った。




 彼はソファーで丸くなりながら寝ていた。

 起きてゲームしてる可能性もあるなと思ったけど、そんなことはなかった。


 別にベッド使ってくれても文句なんて言わないんだけどな。


 出会った時から思ってたけど、可愛らしい顔してる。

 なんでこんな子が家なんて探してるんだろうな。


 この子の将来に幸あれ。


 ソファーで寝るのって、枕あった方がいいのかな。

 私も時々ソファーで寝たりするけど、どっちかというと寝落ちみたいな感じだからなー。


 あった方が快適なのかは分からない。


 ソファーで寝てる姿勢でも、あるかないか変わるよな。

 彼の場合、頭をソファーの横に乗せていないから、これなら枕あった方がいいんじゃないだろうか。


 いやいや、わざわざ乗せないで寝てるんだから、無しの方がいいんだろうか……。


 今後もソファーで寝るんだろうし、枕あった方がいいか聞いておけばいいかな。


 ブランケットが崩れ落ちてきたので、そっと掛け直した。


「ん……。ふわぁあ……。あっ……ななさんおはようございます……」


「おはよーまこちゃん。ごめんね、起こしちゃった?」


「いえ……。多分結構もう寝ちゃったので、そろそろ起きる時間だったと思います」


「そうかな」


 間違いなく私は起こしちゃった原因の一つだと思うのだが、なんとも優しい受け答え。


「はい。ななさんが出かけてから寝ていたので……今何時ですか?」


「十七時二十分だよ」


「ならもう八時間ぐらい寝てますね」


「どう?ちゃんと寝れた?時間は確保できてるかもしれないけどさ、心的にというか、ゆっくり寝れたかなって」


「はい。ありがとうございます」


「どういたしまして」


 彼がいいのなら、別にいいのかな。


「そういえば枕とかいる?どうせなら明日買い物行くし、買っとくけど」


「多分無くても大丈夫です」


「そう?まあ、欲しくなったら気軽に言ってね」


「分かりました」


 睡眠時間も意外と普通なのかな。もっと寝たりするのかなとも思ってたけど。

 いや、気を使われてるだけなのかも。


「そういえばお腹減ってたりする?」


「え……どうでしょう……。寝起きすぎて分かんないかもです」


「む、難しいな……。うーん。普通に十九時ぐらいでも大丈夫そう?あれだったら、まこちゃんの分だけ先に作ってもいいよ」


「一緒で良いです!」


「そう?」


 まあ、先に自分の分だけ作られるのも気分的に良くないのかもな。


「ちょっと顔洗ったりしてきますね」


「はーい」


 普通だ。

 すんご~い普通。


 まるで今までずっとこんな感じで生活してるかのよう。


 人ってこんなにすぐ適応しちゃうんだな。

 私が異常なのか、彼の態度が異常なのか。はたまた両方か。


 そんなことはどうでもいいんだけど。だって、それで何かが変わるわけでもないし。


 まあ、私の眼は間違ってなかったってことだな。


「あ、そうそう。明日買い物行くんだけどさ、一緒に来てくれない?」


「いいですよ。荷物持ちでしょうか?」


「いや、そういう風に見られてる……?まあ、量によっては少しぐらい持ってほしいかもだけど。そういう訳じゃなくて、食べ物とか買う時の参考にしたいし。後はあった方がいいものとかも買いやすいでしょ」


「そこまで気を使ってもらわなくてもいいんですが……。分かりました」


「気を使うとかじゃないから、ほんと気にしないで。なんていうか、私の気分転換にもなるんだよね。普段と違うことするのって。だから、まこちゃんの為でもあるけど、私の為でもあるって感じ」


「そんなもんなんでしょうか」


「そうそう。そーいうもんだから。まあ、少しでも私の為を思うなら手伝ってね」


「分かりました」


 ずるい言い方だけど、これくらいの方がお互いやりやすいだろう。




「ねえねえ。こんな質問おかしいかもだけど、今って暇?」


「え。はい。暇と言えば暇ですかね?見ての通りです」


「ならさ、ゲーム教えてよ。私も上手くなりたいし、教われるなら教わりたいし」


「え!ほんとですか!勿論いいですよ!というか、こちらから是非って感じです」


「ありがとー」


 私たちの関係はギブアンドテイクで成り立っている。

 私も慈善事業で誰彼構わず助けている訳でもないし。


「まずはどうしたらいいのかな」


「そうですねー……。まずはやってるところを見させてもらっていいですか?」


「分かった……。なんか近くで見られながらって流石に緊張するなあ」


「ほんと気軽にでいいんで。特別にベストパフォーマンスを出そうとするよりは、いつも通りやっていただければ」


「はーい」


 恥ずかしい。

 それほど上手でもない腕前を晒すことになるとは。


 教えてもらうんだから、最初からこうなることくらい分かってたつもりだったんだけどな。

 思ってたより羞恥。


「ふー。ちょっと集中してやってみるね」


「分かりました」


 きっと彼なら、こんな状況でも集中できちゃうんだろうな。

 私も頑張らないと。


 というか、一試合終わるまで何も言われないのかな。さっきの会話的に。

 都度アドバイスされるのも頭パンクしそうだけど、これはこれで違う緊張感がある。


 試合前の今が一番緊張するかも。


 私には今、他に考えるべきことがあるはずだ。


 緊張するのも仕方ない。下手なのも仕方ない。

 そんな状況でも出来ることを精一杯やろう。


 出来るだけ行動に意味を持たせるように考えながらやらないと。

 普段はそんなこと全然やってないから、逆に怒られちゃうかもだけど。




 一つ一つ丁寧に。

 私らしく。


 そう考えると、手はいつもよりぎこちないものの、思っているよりは滑らかに動いている気がする。

 つまり、自分の中の及第点は出ている。


 アグレッシブなプレイは少なめに。まずは味方の動きに合わせて、上手くカバーを入れる意識。

 そうすれば、自分から発生するミスは少ないはず。


 味方が撃ち合ったタイミングで自分もカバーを入れ、キルを重ねていく。


 よし……今のはちょっと良かったんじゃない?


 そう思い、彼の顔を横目でちらっと見るも、真顔。


 上手い人の目には当たり前程度にしか映らないのか、それとも最低限すら出来ていないのか。


 彼の視線なんて気にしてる場合じゃないな。


 ふっと一度深呼吸し、姿勢を正す。


 手なりでクリアリングをするんじゃなく、しっかり敵がいたら撃てるように覗く。


 人数有利。ここはしっかりトレードキルを狙えれば安全に勝てるはず。

 一人でのこのこ歩いて倒されないように気を付ける。


 味方が撃ち出した瞬間、飛び出してカバーに入る。


 けれど、私たち二人とも一人の敵に倒されてしまった。


 動きは悪くなかったはずなのに。


 こんな有利な状況で勝てないなんて、きっと酷評だ。


 その瞬間、体がぐっと重くなった気がした。

 まるで全身に重りがついたみたいに。


 いや、落ち着け……動きは悪くなかったはず。


 あとは当てられれば……。

 有利な状況での撃ち合いは出来ているはずなのに。


 そうして、試合は終わってしまった。




「どう……だったかな。あんまりいい所はなかったけど」


 自分でも、どういう返事を求めてこんな言い方をしたのか分からない。

 不甲斐ないな、私。いろんな意味で。

 もっと明るく振る舞えたら、相手も接しやすいだろうに。


「僕もこういう経験がないんで、言葉が変だったら申し訳ないんですけど」

「う、うん……。別に思ったこと、そのまま言ってくれていいよ」


 こんなところで無駄に強がる自分が、少し情けない。


「正直に言うと、このままプレイを続けていけば、アドバイスなんてなくても自然に上達していくと思いました」

「え、どういうこと……?」


「プレイ自体は、少し緊張してるんだろうなって部分が結構ありました。誰かに見られながらやるなんて、そりゃそうだと思いますし。それは仕方ないですし、気にしなくていいと思います」

「うん……」


「上達するには、やっぱり考えながらプレイすることが大事なんですけど、それを今の段階で出来てる人って、そんなに多くないんですよ」

「……」


「ななさんのプレイは、ちゃんと行動に意思があって。それに、ななさん自身の良さもちゃんと出てました」


「私、もしかして……褒められてる?」

「長く話しすぎて分かりづらかったですか……?!えっと、簡単に言うと、考えてプレイできてるから、すぐ上手くなりそうってことです」


 絶対に下手だったはずなのに。

 その中でも、ちゃんと見てくれて、私が頑張っていた部分を拾ってくれている。


 それが、ただただ嬉しかった。

 さっきまで胸の奥にあった不安が、嘘みたいに軽くなるくらいに。


 ていうか、本当にいい子すぎる……。


「ありがとー……」


「えっ……泣いてます……?もしかして、なんか酷いこと言いすぎちゃいましたか……?」

「な、泣いてないし……。逆だから。全然ダメだったなって、へこんでただけ」


「あれでですか?!それだと、僕がアドバイスすること、あんまりないかもしれませんね……?」

「いやいや、そういう訳でもないっていうか……」


 ほんと、調子が狂う。


「まこちゃんには、ちゃんと教えてほしいし。さっき色々言ったけど、見ての通り下手だから、どんどん教えてほしい!」

「それなら良かったです。僕としても、教え甲斐がありそうで嬉しいです」


 そう言って、彼は少しだけ嬉しそうに笑った。









「次は一緒にやってみましょうか」


「え、今?」


「はい。実際にやった方が多分分かりやすいと思うので」


 そう言われて、私は少しだけ考える。


 さっきまで見てもらっていた立場なのに、今度は一緒にやる。

 なんだか急に距離が近くなったような気がして、少しだけ落ち着かない。


「……じゃあ、一試合だけね」


「はい」


 画面の向こうで試合が始まる。


 味方の名前の中に、まこちゃんのIDが並んでいるのが少し不思議だった。

 さっきまで隣に座っていた人が、今は同じチームにいる。


 それだけなのに、妙に意識してしまう。


「最初は普通にやって大丈夫ですよ」


 イヤホン越しに、落ち着いた声が聞こえる。


「うん」


 私はいつも通りの動きで進む。

 無理に前に出ず、味方の少し後ろ。


 撃ち合いの音。


 味方が敵とぶつかる。


 その瞬間に顔を出して撃つ。


「ナイスです」


「え、今の?」


「はい。カバー上手いです」


 あっさり言われて、少しだけ照れる。


 けれど、次のラウンド。


 私はまた同じような位置に立っていた。


 味方の少し後ろ。前に出すぎない距離。


 しばらくして、まこちゃんがぽつりと言う。


「ななさんって、あんまり味方から離れないですよね」


「そう?」


「はい。でも近すぎないんですよ」


 画面を見たまま、彼は続ける。


「距離の取り方、結構いいと思います」


「距離……?」


「カバーできる位置にちゃんといるんです。意識してます?」


「いや、そんなつもりは……」


 言われて初めて、自分の動きを考える。


 ただ、一人で前に出るのが怖いだけだった。


 だから自然と、味方の近くにいる。


「FPSって、撃ち合いも大事ですけど」


 まこちゃんの声は、少し楽しそうだった。


「チームゲームなんですよね」


「うん」


「味方をちゃんと見て動ける人って、実はあんまり多くないんです」


 次の瞬間、まこちゃんが一人残った。


 画面に表示される人数差。


 1対3。


「え、大丈夫?」


「多分大丈夫です」


 さらっと言う。


 画面の動きがさっきまでと違った。


 視点が速い。


 迷いがない。


 一人目。


 すぐに倒す。


 二人目。


 角を覗いた瞬間に撃つ。


「え……」


 気づいたら、最後の一人になっていた。


 そしてそのまま、勝つ。


「……今の何?」


 思わず声が出る。


「ん?」


「いや、普通に勝ったけど」


「たまたまですよ」


 全然たまたまに見えなかった。


 さっきまで隣に座っていた人なのに。


 この人、やっぱりすごい。


「もう一試合やります?」


「うん」


 次の試合が始まる。


 そのあとも、何度か一緒にプレイした。


 途中でまこちゃんが、「今の距離良かったです」とか「そこ一緒に行きましょう」とか少しだけアドバイスをくれる。


 気づけば、さっきより自然に動けていた。


「……楽しい」


 ぽろっと口に出る。


「良かったです」


 それからも何試合か続けた。


「これラストにします?」


「うん」


 そう言って始めた試合が終わる。


 時計を見る。


「……あれ?」


 窓の外が少し明るい。


「……朝?」


「朝ですね」


 まこちゃんが苦笑する。


「やりすぎました」


「ちょっとだけのつもりだったのに」


 指が少し重い。

 頭もぼんやりしている。


 でも、不思議と嫌な感じはしない。


「楽しかったですね」


「……うん」


 その一言に、素直に頷いてしまった。


「でも、どうしよ……」

「何がです?」

「今日買い物行こうと思ってたんだけど、もう少し起きてるか、少し寝てから行くかで悩んでて」

「寝た方がよくないですか?寝不足で行くの、危なそうですし」

「……まあね。でも、寝たらきっと起きれないんだよなー。それに、言っとくけどまこちゃんも来るんだからね?」

「え、そうなんですか……?」

「え、って……あれ、言ってなかったっけ……?もー、あんまり覚えてないけど。そう、まこちゃんにとっても必要な物を買いに行くんだから」

「特にないような気もするんですけど」

「そんなことない。服だって最低限しかないし、他の物だって。勿論最低限の物はあるのかもしれないけど、うちに住む以上はもう少しないと駄目」

「そう言われたら、頷くしかありませんね」

「うん。で、まこちゃんは少し寝てから行くのと、このまま起きて行くの、どっちがいい?」

「僕も起きるの得意じゃないんで、このまま起きていった方がいいかもしれません」

「そうなるよねー。だとしたら、これからどうしよ。てか、お腹空かない?昨日の夜食べずに、ずっとゲームしてたし」

「流石に空きましたね。こういうの慣れっこなんで、大丈夫ですけど」

「ちゃんと食べてよ……。どうする?買い物ついでにどこかで食べるか、今から軽いの作るか。どっちがいい?」

「どっちでもいいんですか?」

「うん。別に外食で行きたい店があるとかだったら遠慮しなくていいよ?その店があるかは知らないけど」

「それなら、ななさんのご飯がいいです」

「そう?遠慮してない?私のご飯なんて、これから何度も食べることになると思うよ」

「はい。それでも、ななさんのご飯がいいです」

「そこまで言われたら、しょーがない。とりあえず、ちゃちゃっと作るから待ってて」

「はい」


 私としては、どうせならたまには良い物食べさせてあげたい気持ちもあるのだが、本人がそう言うんだからしょうがない。

 ちゃんとしたご飯じゃなくても、クレープとか、買ってすぐ食べられるものがあれば、その時提案してみようかな。


「出来たよー」

「待ってました」

「ありきたりな物だけどね。今日多めに食材買う予定だし」

「それでも嬉しいです」

「いい子だねー。そう言ってくれると、ご飯作るモチベーションになるよ。嘘でも毎日言ってください」

「嘘じゃなく本心で言うので、安心してください」

「ありがとー」


 そんなことを言われると、私までご飯を食べるのが楽しみになってくる。

 いつもと食べるものは、そう変わらないはずなのに。


 彼となんでもない話をしながら、お店が開くまでの時間をだらっと過ごした。




 荷物を運ぶ時に楽なように自転車を引き連れて、二人で近所のデパートへ向かった。

 沢山買う可能性があるときは軽いものから。そういうものだ。


「まずはまこちゃんの服選びから」

「僕はなんでもいいですよ?」

「まあまあ。どうせ着るんだから、せっかくだし見て良かった物を買おう」

「あんまり服の良し悪し分からないんですが……」

「絶対嫌な物とかもあるかもしれないでしょ?とりあえず見るところから!」

「はい……」


 世の母親とかって、こんな気持ちなのかな。

 昔見たことあるんだよな。服売り場で全く興味を示さない男子と、張り切っている母親。

 子供は「なんでもいいから早く行こう」と言い、大人はうんうん悩み続ける図。


 ごめん。私、それになっちゃうかも。

 それで大人は「あなたが服に興味を示さないから」なんて理由をつけてしまうのかもしれない。


 今日の基準は単純だ。

 私は彼の姿を毎日見る。つまり、彼の姿が私にとって良いものであるに越したことはない、という理屈。

 なんたって、彼は私の家に住んでいるのだから。


 だから、私にとってどうかが主な基準になる。

 勿論、本気で嫌がることをするつもりはない。

 どっちでもいいなら、そうするだけだ。


 何気ない日常が、楽しいに越したことはないのだから。


「うーん……。意外となんでも似合うなあ……」

「もう、なんでもいいです……」

「んー……」


 どうせいくつか買うのだから、この中からジャンルごとに分けて何着かずつ買えばいいかな。


「じゃー……これと、これと、これ!決まったー」

「え、そんなに何着も買うんですか……?お金足りるかな……」

「え?いやいや、当然私が出すよ?というか、必要だろうな~って物は流石に私が出すよ。そもそもそういう予定だったし」

「いや、流石に悪いですよ……。少なくとも僕のお金があるうちは出さないわけには……」

「それはそれ、これはこれ。一旦あるお金は、必要な時が来るまで持っておきなさい。残念だけど、これに関しては譲る気ないし、異論も認めない」

「……分かりました」

「素直でよろしい」


 大分ずるい言い方だが、しょうがない。

 私にだって、私なりのルールがある。


「後は~食料品と日用品と……何だっけな。あ、そうだ。枕ってあった方がいい?ソファーで寝る時って、あった方がいいのかどうなのか分かんなくてさ」

「今のままで大丈夫ですよ」

「ほんと~?気使ってない?」

「ほんとです。ソファーで枕使うのって、難しそうじゃないですか?」

「まあね……。私も実はそうなのかなって思ってたんだけど、あった方がいい場合もあるのかなーって。ブランケットはどう?今のでいけそう?」

「大丈夫そうですけど、正直分からないです。寒い季節とかになると、ちょっと厳しい時があるかもしれないですね」

「だよねー。今大丈夫なら一旦いいか。その時考えよう。なんか言ってないこと絶対あるんだけどなー……忘れた」

「またその時に来ましょう」

「まー、そうするしかないかー……」


 私の悪いところその一、忘れっぽい。

 紙にメモるようにはしてるけど、思い出すのはその紙を見た時なんだよね。


「あれ、美也?」

「えっ゛里穂?!な、なんでここに……?!」

「いやー、暇つぶしがてらに?美也こそ、休み誘ったのにここ来てるじゃん!なんでよ~!そんなに私と遊びたくなかったってワケ~?」

「ち、違うよ~!誤解誤解!」

「まー、私だってそう信じてるけどさ~。そんなことより、そっちの子誰?お友達?まさか彼氏?!だから私の誘い断って、こっそりと……!」

「それも誤解だってば……」


 寝てなくて、何の問題とも接したくない状況だってのに。

 というか、普通にこうなる可能性、考慮できたなあ……。何も考えてなかった。


 せめて彼には、こうなった時の回避方法を言っておくべきだった。

 ほんとーに私ってやつはさ……変なルール考えてる暇あったら、先に言っとけよって。


 バカ。バカすぎる。


 彼の受け答えは運否天賦。

 そうなる前に、私からレールを敷くのが丸そう?


「えーっと……まこちゃんって言って、私の親戚の子!ね、だよね?そうだよね?」

「え。は、はい。そうです。初めまして。誠って言います」


 ナイス……。

 苗字を言わないのは一番丸い。親戚なんだから違ってたって別にいいんだけど、そういう時の説明が正直だるいし。


「ほー?初めまして。美也の友達の椎名里穂って言います。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 いや、これ、どこまで説明すべき?


 里穂は私が一人暮らしだってことを知っている。

 だから「私の家に住んでいる」と言うと、ダイレクトにちゃんとした意味で伝わってしまう。

 普通の家庭に親戚が泊まっているのとは、伝わり方が全然違うだろう。


 相手の出方を見るのが無難か……?


「そのまこちゃんと予定があったから断ったってこと?それなら納得だけど……なんか違和感ある受け答えだった気がしたんだけどな~」

「気のせいじゃない?」

「まー、そうなのかも。で、見た感じ二人で買い物?」

「そう!まこちゃんが服欲しいって言ってたからさ~。一緒に選んであげてたの!ね?」

「……そうです」


 ちょっと不服そうなのやめてよ……。


「ふーん……。ま、いいけど~。ごゆっくり。私、もう行くね?」

「う、うん。ばいばい~」

「さよならです」










 里穂は、かなり不服そうな顔で去っていった。きっと学校で色々聞かれるんだろうな……。


「はー、ごめん。何とか特にダメージなくやり過ごせたかな……」

「別にいいですけど……」

「ほんとごめん。ていうか、先に打ち合わせしとくべきだったよね。外に出るなら、なおさら」

「そうみたいですね。僕としても、何か問題が起こるのは避けたいですし」

「いやー、ほんとアドリブ助かったよ」

「服欲しがった覚えはないんですけどね。無さすぎるのは不衛生で嫌かもしれませんけど」

「とっさに思いついたのがあれだったんだよ~!ごめんごめん」

「気にしてませんよ。何にもならなくて良かったです」


「お礼にさ、晩御飯、何か好きなの作ってあげるよ!今から食材買いに行くし。それで許して」

 そう言って、困ったように笑うしかなかった。


「……少し、思ってた事言っていいですか?」

「何かあった?なんでも言ってくれていいんだよ?」

「何でそんなに、会ったばかりの僕に優しくしてくれるんです?」

「……え?」

「いや、こっちのセリフなんですが……。家に泊めてくれる事も勿論そうなんですけど、それ以外の面でも、かなり優しい気がして」

「そ、そう?特に意識してなかったな。なんか特別に優しくしてるとかはないよ?全然。……そう言うと、ちょっと酷く聞こえるかもだけど」

「誰にでも優しいんです?」

「ど、どうだろ。意識してないしな……。まあ、仲良くする人は選んでるつもりだけど」

「不思議です」


「それを言うなら、こっちもな気はするんだけどな。まこちゃんって、凄く普通の人と価値観違うっていうかさ」

「それは流石に否定できませんね」


「不思議に思うかもしれないけどさ、私がしてる事って、私がしたくてしてる事だから、基本。相手の為っていうより、自分の為なんだよね」

「自分の為、ですか?」

「そう。例えばなんだけど……自分で説明するのもなんか変だな。……さっきのさ、罪滅ぼしというか、お礼に好きなご飯作るってのも、結局は私の為なわけ」


「元々そんな、罪とかいうレベルですらない気がするんですけど」

「まこちゃん的にはそうなんだろうね。でも、私はそう思ったの。間違ってるかどうかは置いといてね。で、その気持ちをどうしたら収められるかって考えたら、何かしら返すのが一番なわけ」

「めちゃくちゃ損してません?払わなくていいものを払ってる気がします」

「あはは。そうかもね。でも、それでもいいの」


「例えば、私がまこちゃんの好きなご飯を作る。それにはお金も手間もかかるけど、それで喜んでくれたら、私の中ではトータルでプラスになるの。だから私の価値観だと得なんだよね」

「……」

「文字にすると、結構冷たく聞こえるかもしれないけどさ。要するに、私は損得で動いてるって事になるのかも。……見損なった?」


 どうして私は、こんな場所で、出会って間もない人間に、こんな話をしているんだろう。

 普段、こんな風に自分の考えを口にする事なんてないのに。

 私らしくない。

 そうさせる彼の方が、よっぽど不思議だった。


「変わってますね」

「はは。でしょ?」

「同じではないかもしれませんが、言っている意味は、少しだけ分かった気がします」

「ちゃんと伝わってるといいな。まこちゃんぐらいには」

「僕も、世間的に損だとしても、結果的にななさんが喜ぶなら、それでいいかもしれません」

「出会って間もないのに、変わってるね」

「お互い様ですよ」


 二人で、小さく笑い合った。

 その瞬間、ほんの少しだけ距離が縮まった気がした。


「ね、まあいいでしょ?こんなもんで。わざわざ険悪になる必要もないし」

「そうですね。それは困ります」

「よし、じゃあ食材コーナー行こ!まこちゃんの食の好み、ちゃんと聞きたいし。これからの献立にも関わるから!」

「ななさんだけに勇気を出させる訳にはいかないですね。僕も歩み寄ります」

「いいね。そうしてくれると助かるよ。一緒に過ごすんだから」

「そうですね」

「じゃー、れっつごー!」

「ご、ごー!」


 寝ていないせいか、少しだけ変なテンションのまま、二人で歩き出した。




 彼の好きな食べ物を聞きながら、それを軸にしばらくの献立を考える。

 まだ食べてもいないのに、不思議とそのメニューを少しずつ好きになっていく気がしていた。


「少し休んでいい?」

「そうですね。少し疲れましたし……あそこのベンチで休みましょうか」


 そう言って、二人でベンチに腰を下ろした。


「寝て、ご飯食べて、ゲームしようね」

「はい。僕もそうしたいです」


 その声をぼんやりと聞きながら、意識がゆっくりと遠のいていく。




「あ、あれ……?」


 気が付くと、ベンチで二人並んで寝ていたらしい。

 周りを見回して、荷物が無くなっていないか確認するが、大丈夫そうだった。


 彼も私も、ほとんど寝ていなかったんだ。

 ちょっと無理させすぎちゃったかな。


 太陽の高さを見るに、まだそこまで遅い時間でもないらしい。


 隣で眠る彼の姿を見て、ふと思う。

 まるで姉弟みたいだな、と。

 もし弟がいたら、こんな感じだったのかもしれない。


 ……もう少し、このまま寝かせておこう。




 その後、しばらくして目を覚ました彼と一緒に、ゆっくりと帰路についた。

 少し眠れたおかげか、体が軽い。


「ね、ちょっとゲームしよ?」

 帰ってすぐ、そんな風に声をかける。

 昨日の続きみたいなものだ。


 二人で並んでゲームをしている時だった。


「ねえねえ、まこちゃん。なんか二対二の大会あるらしいよ」

「ああ、定期的にやってますね。二対二は大会形式だと一番多いですから」

「へー、そうなんだ」

「出てみたいですか?」

「……出てみたいけど、私なんかが出てもなーって」

「そんな事ないですよ。それに、楽しむのが一番です。僕にゲームを教わっているなら、それは忘れないでください」

「ごめん……。でも、それなら出てみたいかも」

「分かりました。応募しておきますね」

「う、うぅ……もう既に緊張する……」

「緊張自体は悪い事じゃないですし。時間も限られてますし、とりあえず練習しましょうか」

「お願いします、先生!」

「くれぐれも体調と学校生活は疎かにしないでくださいね。ゲームは二の次で構いませんから」

「うん……」


 そう言われても。

 下手な自覚はあるし、やっぱり頑張らないといけない。


 出来るだけ、迷惑をかけないように。


 ――そうして、大会に向けた練習の日々が始まった。

五章前後予定で書いています。ブックマーク、いいね、評価などして貰えるとモチベーションに繋がるのでよろしくお願いします!


今後を書いていく内に少し内容が変わる可能性があります。すみません

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