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攻略対象に転生した俺がヒロインを落とすはずだったのに、気づけば俺の方が落ちていた件。  作者: 続けて 次郎


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第九章 お祭りイベントは想定外だらけ

「……多い」


それが第一声だった。


学園都市の中央広場。

色とりどりの屋台、行き交う人々、夜空に浮かぶランタン。


原作にも“街イベント”はあった。

だがそれは中盤、ヒロインと特定の攻略対象が二人きりで行くものだ。


今は——


「わあああ! りんご飴! 射的! あ、あれ何ですか!? 揚げパン棒!?」


アリスが全方向に反応している。


そしてその後ろに。


アーク。

セシル。

カイル。

ミレイユ。

俺。


「なぜ全員いる」


「団体行動って言いましたよね!?」


アリスは満面の笑み。


言ったな。確かに言った。


「これは……修学旅行か何かか?」


カイルがぼそりと呟く。


「賑やかでいいではないか」


セシルは楽しそうだ。


ミレイユはアリスの腕を取る。


「まずはあっち行きましょう!」


「え、でも射的も!」


アリスの両腕が引っ張られる。


俺は一歩下がって、その様子を見る。


——本来なら、ここで二人きりイベントを狙うべきだ。


はぐれて、偶然出会い、夜店の灯りの下で距離が縮まる。


だが。


「レオンさん!」


呼ばれた。


「何してるんですか、こっち来てください!」


手を振られる。


……。


考えるより先に、足が動いていた。



最初のイベントは射的。


「レオン様なら全部当てられますわ!」


ミレイユが目を輝かせる。


店主が笑う。


「兄ちゃん、自信あるか?」


「……ほどほどに」


銃を構える。


身体が自然に照準を合わせる。


パン、パン、パン。


景品が次々に落ちる。


周囲がどよめく。


「え、すご……!」


アリスが拍手する。


「レオンさん天才ですか!?」


「練習の賜物だ」


クールに言うが、内心ちょっと得意。


店主が苦笑する。


「持ってけ持ってけ」


大量の景品。


困る。


「皆で分けろ」


アリスにぬいぐるみを渡す。


「いいんですか?」


「欲しそうに見てただろ」


「……見てくれてたんですね」


小さく笑う。


その笑顔に、胸がきゅっとなる。


やばい。



次は屋台の食べ歩き。


「これ半分こしませんか?」


アリスが差し出したのはチョコバナナ。


なぜ俺に。


「……甘いぞ」


「たまにはいいじゃないですか」


距離が近い。


半分、かじる。


甘い。


アリスが嬉しそうに笑う。


「間接キスとか気にします?」


ぶふっ。


飲み込めなかった。


「な、なぜその単語を」


「え、違いました?」


絶対分かってて言ってるだろ。


後ろでアークが肩を震わせている。


セシルは口元を隠している。


カイルは本を閉じた。


空気が妙に熱い。



そして、事件は起きた。


花火が上がる直前。


人混みが一気に動いた。


「きゃっ——」


アリスの声。


振り向いた瞬間、彼女の姿が見えなくなる。


「アリス!」


反射的に叫んでいた。


鼓動が速い。


人波をかき分ける。


視界が揺れる。


嫌な予感。


原作にはない展開。


「……どこだ」


焦りが滲む。


その時。


「レオンさん!」


小さな声。


屋台の陰で、しゃがみ込むアリスを見つけた。


ほっと息が漏れる。


「大丈夫か」


「すみません……押されて」


手を差し出す。


彼女がそれを掴む。


温かい。


そのまま、人混みから少し離れた場所へ移動する。


花火が上がる。


夜空に大輪の光。


二人きり。


……原作イベント再現?


「……怖かったか」


「ちょっとだけ」


素直な声。


「でも」


アリスは俺を見る。


「来てくれると思いました」


胸が熱くなる。


「なんでだ」


「レオンさん、私がいなくなるとすぐ探しますもん」


……図星。


「私のこと、気にしてくれてますよね」


直球。


逃げられない。


「……当然だ」


副会長として。


と言いかけて、やめる。


それだけじゃない。


アリスは静かに笑う。


「よかった」


花火の光が、彼女の横顔を照らす。


その瞬間。


俺ははっきり理解した。


攻略とか、勝負とか。


もうどうでもいい。


「アリス」


名前を呼ぶ。


彼女が振り向く。


言葉が、喉まで出かかる。


——好きだ。


だが。


「皆が心配している。戻るぞ」


言えなかった。


アリスは少しだけ寂しそうに、それでも笑った。


「はい」


手は、まだ繋がれたまま。


夜空に、最後の花火が咲く。


俺の中で、何かが完全に変わった。


これはもう、ゲームじゃない。


俺は。


ヒロインを攻略したいんじゃない。


——彼女を、選びたい。

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