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7.東京 五月一日

 

 それは妙な、しかし、現実に起こった怪奇現象だった。


 セレシオン成島というツインタワー・マンションが、千人弱の住民とともに敷地ごと消え去ったのだった。ニュースでなければ、一か月遅れのエプリル・フールかな? というほどばかげていた。報道各社が消えたマンションの元の写真と、地下駐車場までざっくり抉られた敷地映像を提供し、さらに衛星写真が公開されて、ようやくどうやら本当らしいと思えるほどだった。

 ニュース報道はされたものの、報道特集を組もうとしても解説者が見つからなかった。誰にも、何のことかわからなかったのだ。


 ヤジ馬がセレシオン成島の跡地に集まり始めた頃、世界各地から次々に似たようなケースがはいってきた。

 キャンベラ、東京、シンガポール、北京、ニューデリー、ドバイ、モスクワ、アンカラ、ケープタウン、ベルリン、パリ、ロンドン、ブラジリア、ワシントン、メキシコシティ。時刻はどこも現地時間午前四時頃、打ち合わせたように高層ビルで、リゾートホテル、マンション、オフィス・マンション複合ビルなど。北京とメキシコシティからの報道が若干遅れたが、二十四時間で十五都市の建築物とその内部の市民が”消え去った”。


 都市がすべて首都だったという事情もあり、各国は総力を挙げて分析と原因究明に掛かった。

 どのビルも、切断面も美しく地下施設ごと“切り取られて”いた。上下水道、電気・通信設備等は、切断された箇所に“蓋”がされていた。その蓋はなんと石製。プラスチックでもシリコンでもない、周辺土壌を固めて高圧力を掛ければできるもので、工事図面を確認しなくては見つからないほどに周囲の土と一体化していた。


 異常事態に世界が震撼した。現象が政治体制や国際情勢に関係なく発生していたために、どこかの国が非難されるということはなかったが、たとえ非難できたとしても、「どうやって!」と返されれば手段の可能性さえ言い出せないだろう。

 神秘主義者の中から、神の懲罰とか、宇宙人の攻撃と言い出す者が出たのはむしろ当然だ。およそ人類のなしうる技ではない。

 神に救いを求めたり、世界の終わりだと祈ったりすることのできる人はむしろ気楽だったといえる。各国首脳陣はこの十五都市、十五カ所の被害で終わるのかどうか、震えるような恐怖を覚えていた。これが一過性の異常事態ならまだ対処可能だが。そうとは限らない。


「次はどこだ」


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