39.九月一日
すぐ読んでくださった方、すいません、コピーミスがありました
修正してあります
(1)地球
五月一日の、誰にも説明できない怪奇現象で十五の首都から人が建物ごと消えて、四カ月。
九月一日、再び怪奇現象が始まった。
春も近いシドニー、午前四時。夜明け前であったために状況の把握が遅れ、世界に対する警告の発信は遅くなっり、明け方近いの神戸の住民にはほとんど届かなかった。次はスワトウ。こちらは少し余裕があったが、情報の詳細を欠いた。今度は巨大ビル群ではなかったのだ。
世界中のニュースサイトに速報がでた。
メダン、ムンバイ、アブダビ、イスタンブール、アレクサンドリアと続いたころ、これはどこも海沿いの都市で、首都ではない場所だ、と気づいた人々がいた。
では、アメリカはニューヨークかもしれない、となり、ニューヨークは一次パニックに陥りかけた。だが、今度はビル群ではなく、住宅地ともいえる場所の“一区画全部”であることがわかり、ニューヨークは一息ついた。
ケープタウン、パレルモ、カレー、サンタンデール、カルタヘナ、ヒューストン、バンクーバー。今回も十五の都市から、約千人の住民が家ごと、いや、今回は居住していた地区ごと、消失した。
一番焦ったのは、宇宙産業関係者だったかもしれない。何しろ、ヒューストンから何人もの天才科学者や宇宙開発関連技術者が消え去ったのだ。
だが、消え去った側の科学者たちは、あるいは欣喜雀躍したかもしれない。
多くの人が科学技術に長じているのだから、タブレットの”技術支援“にたどり着き、その価値に気付くのもあっという間だろう。特にリーダー権限を持っている人は躍り上がったに違いなかった。
「星間航行船を作って、帰るぞ!」
(2) 岩崎翔太と栗栖幸人
岩崎翔太と栗栖幸人は、ともにワールドマップを持っていて、それをきっかけにどんどん親しくなった。岩崎にしては珍しいほど幸人に馴染んでいる。おそらく、三歳年下というところが保護欲をそそって、抵抗感がなくなったのだろう。姉しかいなくて、弟が欲しいとか思っていたかもしれないし、幸人もそこは姉しかいないという点で同じ悩みを抱えていて、兄貴ができたようで親しみやすかったのかもしれない。
ふたりは、深刻な顔でマップを眺める。
「なぁ、これな」
「これだよね」
「最初はいくつあった?」
「重なっていて、数えられなかった」
「だよね」
ふたつのタブレットには、同じ場所が拡大されていた。ワールドマップで言えば、蝶の左下の翅の縁に当たるところ、そして、マップの最北西、小大陸の海沿いだ。
遥かに離れ、惑星の反対側と言ってもいいところだ。
「誰か来た?」
「かも」
「誰か、っていうより、第二次移民団かな? 俺ら第一次移民団だったよね」
「う」
ふたりは、こそこそと肩を寄せて話しあい、朝食の時くるみ、智花、久美に話をした。
「えーっと、第二次が来たみたいだよ」
「え?」
(3) セレシオン委員会
九月一日。節電のため、太陽が登れば起き上がり、沈めば活動をやめるという生活にすっかりなじんだセレシオン・ピープルの朝は早い。
委員会の立会いミーティングも、六時集合だ。
その日も必要事項の連絡のみで、十五分ほどで終わるはずだった。
だが、斎藤嘉彦が顔を出して、全員の顔色が変わった。
「すみません、皆さん。他のグループが飛ばされて来たみたいなんです、ふたつです」
この場でワールドマップを持っているのは、斎藤の他に寺島と刑部。すぐに模造紙が拡げられ、三人がかりでワールドマップを描き写し、青いマークの位置を示した。
さらに南西部海岸と北西の小大陸を別に拡大して描き、現在読み取れるだけの青い点を書き写した。
「うーん、第一次移民団は、冗談じゃなかったんですねえ」
「ええ、びっくりしましたよ、本当に」
「うーん、どうします?」
「とりあえず全戸にお知らせを出して、マップを東西のロビーに張り出しましょうか」
「ですね」
「この方々と接触できますかね、そうすれば事情も少しはわかるようになるかもしれませんが」
「どうでしょうねえ、距離が相当ありますから」
「それに、この方々と平和的に接することができればいいのですが」
「そうですね、日本人とは限りませんし、ホービックさんやカーワンさんのような穏やかな方々とも限りません」
寺島が、悲観的な方向を封じようとする。
「まあまあ、皆さん、出会えるまでに一年以上かかりますよ、この距離ですから。
我々は、マイペースで食料生産を続けませんか。
そうですね、青い点が向うから近づいてきたら、和戦両様の備えをして、こちらから探しに行きたい人がいたら止めないけれど、SOSサインの打ち合わせをしておく、とか、どうでしょう。
まあ、青い点の状態を見ながら、ゆっくり対応していきましょう。まずは、平穏な日常です」
「そう言われてみればそうですね、一年後を憂いて、無駄に騒がないように、そのあたりもお知らせに書き加えておきましょう」
「えーっと、ホービックさんとカーワンさんはマップを持っていらっしゃいますかね?」
「私が確認に行きましょう」
「そうですね、椿さんよろしくお願いします。
栗栖家の方は問題ありませんね、幸人君が持っているし、岩崎君も到着していますから」




