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32.ウエスト一〇〇一号室 ホービック/カーワン (二) おまけ:文系ピープル向けの科学的な何か (4)発生:異星の人間と地球から転移した人間では子孫はできないのではないか、と倉名が思うのはなぜか

 

「哺乳類がいないから、牛糞のような効果の高い肥料が手に入らないってこともあるわよね」

「だなぁ。大問題なんだがな、セレシオンでは哺乳類がいないことにまだ誰も気が付いていないようだね」

「荷を運べるような大型草食動物がいない。哺乳類でなくてもいいんだけど」

「そうだねぇ、文明が産業革命にたどり着くまでは、大型動物は必須だからねぇ」


「川には魚がかなりいた、大小色々ね。川でしっぽの短いトカゲかカエルのような動物と、岸辺でカタツムリのような巻貝を見て、浅い水辺にも巻貝がいた。

 ちょっと外見はは違っていたけど、大き目のトンボがいて、セミかな、と思う鳴き声も聞いた。蚊やダニのような虫に刺されたから、虫は大丈夫ね。数は少なかったけど、鳥もいたわ」

「貝類、魚類、昆虫類、両生類、ここまではいいね、で、爬虫類がまだ不明で、鳥類はいる。鳥類がいるのだから、爬虫類はいるかもしれないよね。でも、鼠一匹、ウサギ一羽出会わないんだ」

「図鑑を提案したのは、できるだけ早く気が付いてほしいからなんだけど、どうかな」

「そうだね、教えるのは簡単だ。でも自分で気が付いた方がいい」

「そうよ、私たちは文化が異なるところから来た異分子なのよね、ここでは。

 気が付くように誘導して、向うから聞いてくるのを待つのがいいのよ」

「私の本分は教えることだよ。学生が自ら気付くのを待つのはいつものことさ」



「アン、君は僕が植物情報アクセス権をとれるように、新種登録を中断してくれたね。だから見られないのだけど、奇妙なことがあるんだよ」

「なに?」

「今書き出そう。

 SORIMACHI Miki、いいかい、日本人だよ、漢字がたくさんあるから、ローマ字表記が同じでも同じ漢字とは限らない。だが、この惑星の名は、Planet Mikiだ。そして、ソリマチミキは、僕よりも早く植物分野全アクセス権をとっている」

「え、まさか」


「ソリマチは植物の専門家ではない、麻酔医だ。たとえ仕事以外で植物観察が趣味だとしても、ありえないんだ。

 僕は植物観察のプロだ。その僕がこのあたりの植物を片っ端から新種登録したのに、全アクセス権を獲得した時にはすでにその権利を持っていたどころか、新種登録した植物はこのあたりでは見つからないものが大半だったんだ」


「ジョック、どういうことかしら」

「わからない、そう言うしかない。だがソリマチは、医師養成を目的とするイシグロ・プログラムに参加する医師だ。決して気楽に接近できない。手術に麻酔医は不可欠で、セレシオンで大けがをした者がでた時、帝王切開術が必要とされる時、イシグロの手術を成功へと導くだろう」

「そうね、たしかに。よく麻酔医がいてくれたものだと思っていたけど、もしかして特別な配慮か何かなのかしら」


「そこもわからない。

 ただ、僕らはソリマチが何か特別な役割を果たしているかもしれないということを覚えておこう」

「植物分野全アクセス権は、他にシノムラが持っているわよね」

「彼女は、地球から持ってきた植物を登録して、五十種に到達した。SHINOMURA Riri登録の多くに参照が付いていて、ソルテルシウスの○○と同じ、登録者は第一次移民、運ばれてきたものと断定、とある。五十種類の新種登録を一か所で達成するのは簡単ではない、まして僕がほぼすべてを先に登録してしまっている。シノムラはこの先地球の植物とこの惑星の植物を掛け合せるために、どうしてもアクセス権が欲しかったのだろう。よく思いついたものだと思うよ。彼女は賢い人だ。


「侮れないね。見えないところを論理推定して正誤を確認することが仕事である僕ら学者は、慎重でなくてはならない」

「ええ、もちろんよ、ジョック」

「アン、移動したら君も植物アクセス権をとるだろうね。そうしたら再び僕とともに考えてほしい。

 鳥の羽で、鑑定が発動したんだよ。五十種類を集めるのは簡単じゃない、だけど全動物情報アクセス権をとろうと思う。そこにもソリマチミキの名があれば、確定だ。彼女はこの惑星に僕らより前に来たことがある」


おまけ:文系ピープル向けの科学的な何か (四)発生:異星の人間と地球から転移した人間では子孫はできないのではないか、と倉名が思うのはなぜか


はーい、なろうの文系ピープル! 

今日の倉名は、おなか壊すし熱も出る系の、現在流行中らしいインフルにかかって、息も絶え絶え

寝てりゃいいのに、読み専しているなろう作品の未読作が尽きて、横になっているのにも飽きて、這い出してきました~



さて、と

昔々、中学生のころ、倉名は人類について地球発生説を採用していませんでした。

なんか、人口が溢れて自分の星で民を養えなくなったゴーマンな皇帝かなんかがいて、自星の民が居住できる環境の惑星を探して、冷凍睡眠かなんかで「配った」、ってか、移住させた、という当時の中学生の情報収集力レベルでは、オリジナル以外の何物でもない「奇説」を採用していました。

だから、もし人類が地球外に進出できる日が来たら、いつかきっと、同種同族に出合い、故郷と言える、人類が発生した「母星」に「挨拶に行く」イベントもあるのじゃないか、とか。

宇宙戦争になりそうな設定だよね!


もちろん、誰にも話したことはありません。あほ扱いされるためにわざわざSFネタを公開する必要なんかないもんねえ。将来、ハヤカワSF大賞を取って、小説家になれたら使おうとか思っていた中二だったわけです、はい

ってか、その後そういうアイディアに基づいたSFやらアニメやら映画やらに、山のように接することになって、人間が考えることには大したオリジナリティーなんかないんだなー、特に自分

誰にも話さなくてよかった、とそっと黒歴史として保管したのでした

今言ったけど……



その後、高校の生物で「発生」を習いました

正確には「発生と分化」ですかね

受精卵が細胞分裂して生命体を構成する手順が「発生」

すべての細胞が同じ遺伝情報を持っているのに、ある細胞は心臓になり他の細胞は骨になるのはどういう仕組みか、ってところが「分化」です


聞いてびっくり! 教育って凄いよね。 なんと!

地球上の生物の遺伝情報は、人類のみならず全生命体が、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの四種の塩基が、その四種の塩基だけが、持っていて、その並び順が遺伝情報そのものだというのを習ってしまったのです、ショックだったなー


倉名の「中二奇説」は、人類と地球発生の生物群の遺伝情報体にはある程度の差異がなくては成り立ちません。何の生命体もない星に、人類を送り込んで生きていけるわけがなく

発生惑星の異なる生命体が同じ遺伝子を持っているなんて、ちょっとないかなー、中二的には


地球発生の生物は、異星発生の人類とは異なる塩基で形成されていることになるでしょう、発生した星が違うんだから、当然そうなるはずですよね、中二の視点からすれば


えーっと、塩基というのは、この場合、体内でたんぱく質を作る命令書きと思っておいてください

あなたの細胞のひとつひとつの中にも、もれなく、チミン・アデニン・グアニン・シトシンが質量にしたら大したことなくても、数だけはぐわーんといっぱい、ある訳です



当分の間機嫌悪く通学して、無駄に生物の山本教論の瓶底眼鏡を睨んだりしていましたが、やがて、「高一版修正奇説」を思いつきました。

傲慢皇帝は、人類を送り込むとき、元の星にあった生命体を遺伝子状態で宇宙船に乗せた、それが地球では優勢だったから、もとの遺伝子を駆逐して、現在に至る

とか何とか


ノアの箱舟じゃないからね! 割とすぐに棄却できたのは、倉名の身は一寸の虫だとしても、比較的健全な精神を、五分くらいは持っていたからなのだと思いマス、はい




生物は、いろんな惑星で発生しているでしょう、当然です

ここに人類がいる以上、他にいないとは到底考えられません

でも、それがヒト型である確率はかなり低いでしょう。生物学者によると「知的生命体ならば、二足歩行をしていることだけは期待できる」とのことです


生命は惑星上で発生する以上、惑星環境に制約されますね

ヒジョーに運がよく、人類の誰かが飛ばされた異世界で出会った人型生物との間に子をなせるかどうかは:


1.同じ塩基で生命情報を管理しているかどうか

2.染色体の対が23であるかどうか 

  (染色体の数が違うと生殖できないか

   孫世代がうまれない一代雑種となる。 参照実例:ラバ、レオポン)


というふたつが、目先の問題であり、それに伴ってものすごい数の生物学的、遺伝学的問題が噴出してくる次第です



ここから描くのは「細胞の染色体の減数分裂」です

染色体っていうのは、遺伝子情報が上手に(らせん状に)集合したもので、分裂の時だけ化学物質で色を付けることができるために、染色体って名前になっているそうです

染色体は、有性生殖の場合、母由来が半数、父由来が半数で、子どもは父母の両方から「血を引いている」と言われますね

正確に表現するなら、子は母の染色体を23,父の染色体を23受け取って、23対46本の染色体を形成することに成功した受精卵から発生した、ということになります


体細胞のまま接合できるわけじゃないです。だって、できる細胞が「四倍体」になっちゃいますからね

単にコピーする、「同じものを作る」ことならできます。羊の「ドリー」が実例です


生殖細胞を作るためには、細胞が「減数分裂」の複雑な手順を実行します

全ての体細胞が持つ対になっている染色体の「つい」を解いて、半数になって、生殖細胞ができあがります


ふつうの体細胞は、分裂して二個になりますね。分裂の手順は間違うことを許されないうえに命令系統が厳格で、フローチャートを作るのだって困難だと思いますけど、「塩基は知っている」のです


もっと複雑な手順を要求され、間違ったりすると致命的なミスに(流産の原因のひとつらしい)もなるほど厳格なのが「減数分裂」、染色体の対をほどいて、半数にするお仕事


生殖細胞を作成するための手順書は、いくつもの手順を積み重ねて完成します

対になっている染色体の「片方」だけをもつ、特殊な細胞を作る手順書ってのがある訳です


結果として、普通の体細胞とは明らかに異なる、染色体を「対の片方」しか持たない、生殖細胞ができあがる訳です、すっげーめんどくさい手順だよ?


えーっと、そうだね、ニワトリのたまご!

あれ、生殖細胞だから。デカいけど。絶対にヒヨコが出てこないのは、精子の協力が得られないからだよね。減数分裂しているから、遺伝子の対がなくて、発生 (ひとつの受精卵を細胞分裂させて生命体を作る)の手順を辿れないわけ


あ、追加:染色体の数

ヒト   23対46本

ニワトリ 39対78本

ロバ   31対62本  ロバと馬の一代雑種ラバの染色体は63本、奇数

馬    32対64本  対が作れないために生殖能力がないらしい             

ライオン 19対38本

猫    19対38本



ここまで来ると、だいたいわかってもらえたかな、と思うんだけど、説明悪いかな?

もし、異星なり異世界なりで、人類に外見が凄―く似ていて、愛するしかない! というほど親密な仲になったとしても、子をなしうるかどうかは別の問題

遺伝子の塩基が互いに同じものであるか、という問題と

さらに

染色体の数が同じか、という、

最低限でもこれだけの問題があるんだよね

そもそも、同じ人類同士で塩基の種類も染色体の数も同じなのに、発生の手順はデリケート。子を得られない人は結構いるよね、それがまして相手は異世界人ともなれば、乗数倍で困難度は上がると思うなー



アンとジョイックが、植物の交配が成功するかどうかについて議論しているのは、だいたいこのようなことを踏まえてふたりが未来を憂いているからです

せめて、塩基の種類が同じで、植物が発生手順書を「だます」ことに成功すれば、地球産植物と美輝星産植物が、「雑種」、新種を作ることもできるでしょう

問題は、アイザックがそこまで考えたかどうか、です。キュリ・リシエラスのデータと、植物に特別な理解を持つ研究者サクヤの熟慮が、アイザックの移住星選択に反映されていればいいですね


Granite


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