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29.ミキとアイザック (三)


A:ミキ、組合プログラムとクエストについて説明を求める

M:はい、まとめています

  組合プログラムというのは、委員会に申請して

  道具や燃料の割り当てをもらい

  組合が実行をサポートするプログラムのことのようです

  委員会は、公共事業と評価できるもの、と言っています

  もっとも重要なのは下水工事ですね

  下水管は遮断されていますので、汚水溜めが溢れるところでした


  成島河の下流まで下水管を通すのが最終目的ですが、

  今は仮工事で、沈殿池を作って最短距離で汚水を河に流しています

  成島河の上流、セレシオンの北から生活用水を引く計画も

  組合プログラムです


  他に、長谷川百合子が主宰する、初等、中等教育及び図書室の設置

  石黒徹也が主宰する、高等、大学教育に相当する理科系教育

  が出ていました

  こちらにには、私も参加します


  組合プログラムは、公共事業ですが

  クエストというのは、多くのヒトが親しんでいる

  ゲームから来たようです

  誰でも個人の資格で、一階受付に設置してある受付ボックスに

  自分を助けてほしい、報酬はこれだけ

  というオファーを出すことができます


  生活用水を上階に運び上げてほしい、というクエストが最も多く、

  このクエストについては

  刑部健一郎が労働負荷によって係数を出しており

  組合から補助金が出ました


  現在は、運営委員会からの常設クエストとなっていて

  技術者がウインチを使って

  水を各階まで所定数持ち上げています

  持ち上げた水は、保管場所から誰でも持ち帰っていいという

  システムを構築しました


  他に、ジョイック・ホービックが植物図鑑つくりを

  クエストとして提出しました

  これについては、委員会がクエストとせず組合プロジェクトとすると決定

  ホービックは日本語がまだ十分に話せないため

  篠村利理の主催ととなり、篠村プロジェクトとなりました

A:ふむ


M:アイザック、わからないのはどこでしょうか

A:ミキ、どこがわからないのかがわからない


M:そうですか

  こういう社会システムがもともとあったのです

  寺島委員長と刑部委員長はそれがヒトの性質に馴染んでいると考えて

  大規模な社会システムを千人の集団向けに簡易化、小型化しているのです

  皆さん必死ですよ、できるかどうかも、正解かどうかもわかりませんから

A:そうか


M:アイザック、私からリクエストがあります

A:聞こう

M:ペットフードを供給してください

A:ペットフード?


 美希は、そこからですか、と思った。もちろん十分予想していたが、説得は難しそうだ。


M:セレシオンには、ヒトが飼っている犬と猫がいます

  犬は、もともと狩猟のためにヒトが家畜化しました

  猫は、鼠のような小型害獣、ゴキブリのような食品を汚染する昆虫を

  排除するために家畜化されました


  ごく最近になって、都市部では犬も猫もそのような役割を終えました

  今では、ペットと呼ばれて、家の中で飼われ、愛玩動物となっています


A:それらの、猫や犬に特殊な食事を用意しているということか

M:はい

  ペットは外で自由に狩りができなくなっていて、

  ペットフードを与えられています

  人間と同じものを食べ続けると

  病気になったり、短命に終わったりするからです


A:ふーむ、そのペットフードというものを供給して、ペットに与えるのか

  元通り外に出してはどうか

A:はい、当然そうなるでしょう

  美輝には今現在、ヒトの他に犬、猫、おそらく鼠が運ばれてきていると

  思います

  犬も猫も短時間で再び戸外で生活するようになるとは思います

  ですが、今現在、生まれた時からペットフードしか食べたことがない

  犬や猫は短時間で死んでしまうかもしれません

  害獣や害虫が持っている細菌への抵抗力もありませんので


  そうすると、鼠が建物とともにここまで来ていれば、増えた鼠を

  狩るものがいません

  あっという間に、鼠は惑星中に広がり、生態系に大きな影響を与えるでしょう

  アイザック、鼠は哺乳類です

  歴史的には、ペストという感染症を媒介して、感染したヒトの多くを

  死なせたことがあると記録があるはずです


A:ミキ、少し待ってくれるか

  アマネとサクヤに意見を求める

M:わかりました

  アマネさんとサクヤさんにコンタクトするのでしたら

  ついでに意見を聞いてもらいたいことがあるのですが

A:言いなさい

M:自動車や自転車がいつまで使えるかわかりません

  馬とそれを育成できるヒトと施設を転移に含めてはどうか

  という点です

A:内容はわからない。だが、キュリおよびサクヤ、アマネと協議を行う

M:よろしくお願いします


 あまり間を置かず、調剤薬局みかんで、ペットフードの取り扱いが始まった。美希は説得に成功したのだ。アマネが強力に支持し助言したことは間違いないだろう。


文明の初期には、大型草食哺乳類である、牛や馬を飼育するかどうかで大幅に集団滅亡率が下がったと推定されています

大型哺乳類は、ヒトより体温が高く、蚤・虱・蚊のような伝染性の病を仲介する吸血虫類が、ヒトより牛や馬を好むため、伝染病の罹患率が下がったと推定できるそうです。

夜間や雨天時、牛や馬は同じ室内、たとえば洞穴のようなところなら入り口付近に柵囲いで、後になっては建物の一階部分とか、簡単な壁で仕切られた同じ建屋内に入れていたらしく(主に肉食獣から守ることと盗難防止が目的)、衛生上は問題があるとしても、それよりも尚、伝染病を仲介する吸血虫類を引き受けてくれる利点が大きかったとのこと


また、痘瘡については、牛が軽い天然痘ウイルスを持っており、牛の乳しぼりをする女性が軽い痘瘡にかかることで重い痘瘡にかからず、死なないのみならず、痘瘡痕が残りにくくて肌がきれいだということに気付いた人たちがいます。最初に画家が気付き、牛飼いの女というようなタイトルで肌のきれいな女性をモデルにしたことから、貴族の興味を引いたという美術評論を読んだことがあります 参照:ルノワールの絵画で牛飼いの女性を描いたものの数々

そこからジェンナーによる種痘が始まり、現在では撲滅宣言が出るまでになったわけだから、哺乳類もヒト、ネコ、イヌ、ネズミだけが転移するだけなら、遠い未来に突然理由が不明なまま爆発的に伝染病が拡がり、転移まで使って移住させた人類が絶滅する可能性もあるかな、と思って、この項目を入れました



直接関係ない無駄話を思い出しました:中世貴族と言えば痘瘡痕なのです、今では気付きにくくなっていますが、化粧の発達、女性のみならず男性がファンデ厚塗り化粧をしていた意味かも

痘瘡は高熱と死を伴う伝染病ですが、運よく回復した後もひどい痘瘡痕が残り、特に貴族女性の顔部分に残った場合、厚い化粧をすることになりがちでした。それでもカバーしきれず、唇の脇や目の脇下部分に付け黒子 (艶黒子とか泣き黒子とか名前がついている)を張り付けて、顔にできた痘瘡痕から対面する人の目をそらすように工夫した、という趣旨の記述を読んだ覚えがあります、三銃士だったかな?

「おい、いい女だなあ、色っぽいな」

「ああ、あれはナント伯爵の愛妾のカント夫人さ」

「あの色っぽさじゃあ、しかたがないねえ、伯爵に目を付けられたりしたら逃げられないだろう」

「いや、アラミス、よく見てみろよ、痘瘡の後が薄っすら見えるだろう、かなり化粧を盛っているがね。明るいところでは肌を見せてくれないぞ」

「うーん、それはおもしろくないな、泣き黒子がたまらんがね。それにしてもぐっとくるな、ちょっと声かけてくるか」

 とか言う、下品系の記述だったような。要するに、痘瘡は種痘が完成するまでは、誰も逃れることができない、命が掛かっていて、かつ、治癒しても美容的に致命傷を負う伝染病だったってことですね。痘瘡痕は男女を問わず全身に残りますし。

 会話記述については、記憶違いかもしれないので、アラミス・ファンの方がいらしたらすいません



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