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新婚さんいらっしゃい

結婚式でも、額にキスされただけのソフィアナである。


その他に腕は組むことはあっても、キスなんて単語は3年間なかった。ハグすらないのに、旦那様は手の甲にキスしてきた。キスである。これはもう由々しき事態。


それはもう、初心なソフィアナには効果覿面。恥ずかしくてこそばゆくてもう落ち着いてはいられない。真っ赤になって慌てる妻の姿をにこにこしながらエスコートするエリオールは、無事立派な宿へと辿り着いた。


正面玄関をくぐり、受付の前を通り過ぎて部屋への階段を登っていく段階で、ソフィアナの意識がうっすら戻ってきたのだが、それはもうあとの祭。


エリオールは上着をハンガーにかけ、呆然とするソフィアナの羽織りも取ってやり、ハンガーにかけクローゼットへ仕舞った。


「あの、あの、旦那様?」


「なんだい?ソフィアナ」


そう言いながら、ソフィアナをテーブルセットの椅子へと座らせ、自身はベッドへと腰掛けた。

良い宿屋と言っても、部屋が別れているわけではなく少し広めというだけなので、2人の距離は近い。


「ここ、私が手配した宿ではないのですが?!」


ソフィアナが真っ赤な顔で抗議すると、エリオールはまたもや眉尻を下げて困った顔をする。


「ごめんね、宿の部屋が一杯で、ソフィアナの宿屋の方は、キリムたちを泊めさせてあげたんだよ。彼らも夜通し走って疲れているからね」


キリムとは護衛の1人である。通りで、昼間のあの変な男の対処から姿が見えなかった筈だ。


「そう……なんですね、それは仕方ない……」


「部屋が一つしかないなら、夫婦である私達が泊まる方がスムーズだと思って」


「そ、それもそうですよね……」


「ぷっ」


「え?」


「あははははっ、ソフィアナ、そんなに緊張しないで」


突然エリオールが笑い出したので、ソフィアは恥ずかしさを通り過ぎて怒りが湧いてきた。


「な?!どうして笑うんですか?!」


エリオールはそんなに面白かったのか、目尻を指でなぞりながら肩を小さく震わせている。


「あの?!こっちは真剣なんですけど??」


「ごめんごめん、あまりに緊張していて可愛いから……」


「かわっ」


「大丈夫。今夜は一切何もしない。神に誓うから、あまり怯えないで欲しい」


「お、怯えてなんていません!」


目尻に涙を溜めていたエリオールの目が、すっと細くなった。その視線に、ソフィアナは背中がぞくりと震える。


「……なら、ソフィアナは私にあんなことそんなことされる気があるということ?」


「あっ」『あんなことそんなこと?!』


ソフィアナがたじろいでいると、エリオールはぱっと笑顔になって、両手を肩まであげて見せた。


「冗談だよ。風呂付きの部屋にして貰ったから湯浴みしておいで。大丈夫、覗いたりしないから」


「あっ当たり前です!!」


ソフィアナは勢いよく立ち上がると、そそくさと着替えを取り出して風呂場へ勢いよく飛び込んだ。扉の閉まる音が部屋に響く。




「……こんなところで手を出すぐらいなら、なんの為の3年だよ」



エリオールの呟きは、ソフィアナに届くわけがなかった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




その後。


恐る恐る風呂場から出てきたソフィアナは、既に寝てしまったエリオールを起こさないように、布団へと潜り込んだ。


『心配して損した……』


本来なら夫婦一緒に眠るのは当たり前だった筈の行為だが、ソフィアナはまるで新婚のように胸を高鳴らせたまま眠りへと落ちるのだった────



読んでくださってありがとうございます。

短編の筈が全部入らない!→短く3話ぐらいでまとめるか!→やばい……全然終わらない(今ココ!)状態です。

長くなりそうですが、お付き合いいただけたら幸いです( ・∇・)

いいねしていただいてめっちゃ嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします。


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