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落とし物
新作です!どうぞ宜しく!
本当に、なんの気なしにただ、散歩を愉しんでいただけなのだ。 俺は独りで歩いていた。日曜日の朝から一緒に散歩を愉しんでくれるような友人、恋人、伴侶、などの類は一切いなかったし、いたとしても俺はどちらかというといつでもひとりきりでいるのが好きなのだ。 見上げれば薄青い空に、筋のよう浮いた雲だけが俺が歩くのに合わせるように、とぼとぼついてきた。 ウールの黒白チェック柄のチェスターコートに身を包んだ俺は、さして寒くはなかったのに、さも寒そうに肩を竦めて都内のとある道の歩道を歩いていたのだ。 小さい頃からよく、母親から、背中を丸めずに歩きなさい、とよく注意されたのをふいに思い出した。昔から、そうであった。背中を丸めて歩いていると、不貞腐れたかのように見える、と。 しかし、そんな、亡き母からの言いつけも守れない程には俺は疲れていたのだ。疲れ果てていたのだ。
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