チェイサー
私は一人、事務所からでていつもの帰り道を進む。いつもと同じに──。
しかし、その日は違った。
後ろから足音が聞こえる。振り返ると帽子やコートに身を包んだ男の影が、電信柱の裏に隠れるのが分かった。
恐ろしくなり、私は少し早足で駆け出す。すると、後ろの足音も早くなる。
最後には私は走り出していた。だがソイツも同じだ。恐ろしくて振り返ると、なにやら銃のようなものを持っている。
私は泣きながら助けを呼んで走り続けた。
すると通報があったのか、私たちの通路はパトカーにふさがれ、私は警官の胸に飛び付いた。警官は、あっという間に男を取り押さえた。
その男は、まったく見覚えがない男だったが、私の顔を見て悔しそうに叫んだ。
「くそぅ! 放せ! その女を生かしてはおけない!」
しかし警官はますます男を締め上げる。
「くぅ! 俺は未来から来たんだ! その女は将来独裁者になって、世界を滅ぼすんだぞ! 君も! 君たちの子どもたちも!」
「何を言ってる! あんな可愛らしいお嬢さんに何ができると言うんだ!」
「今はまだ芽生えてないが、彼女の心理操作は異常なんだ。それで誰しも従わせ、世界は破滅に……」
私は震えながら警官に言った。
「お巡りさん。こんな不審者怖いですわ。地域住民のために人目のつかないところで射殺してください」
「ええ、そうですね。さぁキミ! さっさとパトカーに乗りたまえ!」
パトカーはサイレンを鳴らして去っていった。私を保護してくれた警官は、家まで護送してくれたのだ。
「最近、あのような不審者が多いですから気を付けてくださいね」
「ふふ。本当ね」
私はパトカーを微笑みながら見送った。
「ふふふふふ。
ほほほほほ。
あははははははははははは!」