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ビルからの脱出

 悪魔から日本刀のような豪華な装飾の施された刀を渡された。当人曰く、ここの黒い霧と刀で戦えと言うことだ。


 安齋も剣を使った経験はない。でも、男として日本刀で敵と戦うシチュエーションは嫌いではなかった。

 対照的に、城沢は不安そうな顔をしている。

 

 悪魔は見守ってあげると言っていたが、ビルから落ちて、一人で先にどこかへ行ってしまった。


「俺らも行くか?」


「一つ質問なんだけど? 剣道の経験は?」


「ないよ。でも、修学旅行では一人で木刀買って、卍解ごっこはしていたから安心しろよ。この件に

名前とか付けた方がいいかな?」


「まずは、瞑想でもして剣から名前聞きなよ」


「え。そっち系、分かる人なんだ」


「一応ね。。。ブリーチの話は後でしてあげるからその刀でどうにかしないさ。多少なら私がサポートしてあげる。格好良いところ、見せてよね」


「任せろ」


 安齋は、拗らせ陰キャで、結果として硬派みたいになっているが、内実は女子と話したことない、耐性のない男子。

 猿も煽てれば、木に登ると言うやつだ。


 屋上に現れたのは三体。取り囲むように二人を包囲している。

 

 適度な距離を置いて、襲いかかってくる様子はない。

 安齋は刀を鞘から抜き、それっぽく刀を構える。鞘から、刀身を抜く。鞘の重さが消えた刀はありえないくらいに軽い。まるで、柄の重さしかないようだ。


「私も完全に素人だけど、見た感じは様になっているわね」


 思わず、その姿に城沢は誉めた。しかし、集中しているのか安西には届かなかった。


 一歩、踏み込む。剣の間合いで、右肩から斜めに黒い霧を斬った。

 斬られた黒い霧は霧散して、学ラン姿の男子生徒がその場に倒れた。


「黒い霧が晴れて、人間に戻っているわ」


 城沢は驚く中、安齋は止まることなく、返す刀で二体目を斬る。流石に、何かを感じたのか黒い霧は、ウォーと何か叫び声を上げて襲ってきた。


 黒い霧は輪郭の境界がぼやけているけど、基本的には人間。襲ってくると言っても、霧が伸びて攻撃して来ることもなく、普通にへ素人が殴り掛かって来るような感じだ。


 その様子は安齋の目でも普通に捉えられた。

 後ろに下がってかわすのでなく、前に踏み込むことで拳をかわして、そのまま斬る。


「意外と何とかなるもんだな」


「薬を返せ」


 地獄から聞こえたのかと勘違いするような低い声がした。

 さっきまで黒い霧に覆われていた学生服の男が立ち上がった。目の隈が酷く、ゾンビのように青い顔をしている。


「ねぇ、もう復活しているんだけど? 刀で斬ったのよね? もしかして、核を破壊しないと何度でも蘇るとかじゃないでしょうね?」


「俺にそんな苦情を言われても知らないわ。この刀、見ての通り物理的には効果がないからな。コンクリート貫通するし」


 コンクリートに剣を刺しても、傷一つつかずに貫通はする。


「何とかしてよ」


「いや、ドラえもんじゃねえよ。軽く言ってくれるなよ」 


 安齋は復活した一人を殴った。軽く1メートルくらい吹っ飛んだが、安齋は納得行かなそうだ。


「やっぱり素人の拳だと、一発でダウンは無理だよな。城沢、全力で逃げるぞ」


 安斎が走り出し、城沢は後に続いた。


「いや、ありえないくらい吹っ飛んでいるけど?」

そうか? 俺、あんまり喧嘩したことないからさ。どれくらいが平均なのか基準が分からないけど、少なくとも親父にはもっと飛ばされたたな」


「父親に殴って、飛ばされる事態が想像できないな」


「死にたくないなら、無駄話してないで走れ」


 二人で廃ビルの階段を駆け降りる。来た道を戻るだけだから、道に迷うこともない。黒い霧はどうやら視覚が弱くなっているのか彷徨っている。そうなれば、さくっと倒せるからかなり楽だった。


「数が地味に多いな」


 黒い霧は普通に動きが鈍いので、余裕で斬れる。

しかし、刀で斬るだけだと、数秒後にはすぐに立ち上がり、こちらを追いかけて来る。黒い霧が晴れた方が断然、動きが早い。それに対抗手段が素手なので、なかなか倒すまでには至らない。


「後ろから来ているわよ」


「分かっているけど、俺だけだと間に合わない。後ろの相手を任せるわ」


「か弱い女子に何、言っているの? 刀で斬るが楽そうだから、貸しなさいよ」


「別にそれでも良いけど」


安斎は刀を手渡しするが、城沢の手を通り抜けて地面に落ちた。


「あれ? 触れないのだけど?」


「え? 実は城沢は魔族だったりする?」


「失礼ね。私は人間よ」


「後でこの理由は確認するか。なら、分担は・・・」


「走って逃げれば問題ないわ」


「分かったよ。これでもくらえ」


 追って来る集団の先頭にいた男を安斎は全力でぶん殴った。後続の連中を巻き込んで集団が倒れてきた。階段の下にいるのは安斎たち二人なので、結果としてはより距離が詰まることになった。


「馬鹿なの」


「そこまで考えてなかったんだよ。でも、結果オーライだ」


 追いかけて来た男たちは階段で気絶したようで、追いかけてはこない。

 なんとか二人は廃ビルからは脱出することが出来た。



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