子猫
冷たい雨が降り出した、夕暮れ時。
傘を忘れた私は、急ぎ足で自宅アパートに向かっていた。
……ァ、…にゃ……。
曲がり角に差し掛かった瞬間、私の耳に何かが聞こえた。
足を止めて辺りを確認すると、小さな段ボールが置いてあった。
しゃがみこみ、箱を開けると…一匹の、子猫の姿が。
私の家はペット飼育禁止のアパート。
この子猫を、連れて行くことは、できない。
そっと箱を閉め、その場を立ち去った。
帰宅後、シャワーを浴びて…ドライヤーを止めた時、雨音が強くなっていることに気が付いた。
……かなりの、豪雨。
頭を過るのは、先ほど見かけた、小さな子猫。
……誰かに拾われただろうか。
……見に行ってみようか。
……でも、見に行ったところで、私は飼う事ができない。
葛藤の末、私は傘を差して子猫のもとに向かった。
子猫はもう……、いなかった。
その晩、私は、夢を見た。
雨の上がった空に輝く、星の瞬き。
その星が繋がれて、小さな子猫を描いた。
子猫は、星座になったのだと……私は、悟った。