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45話(終)楓と出会って報われた俺は今日も楓と生きていく

  東名高速を越え、駿臥(するが)湾沿いの海岸線をぐるりと走り、西伊頭(いず)の方まで車を走らせる。


 今日は当初からずっと予定していた楓と2人きりの小旅行だ。

 後期試験を終え、心臓に悪すぎる楓の両親とのお食事イベントも終え、晴れて俺と楓は2人きりで旅行に行くことができるようになる。


 ちょっと休憩で海岸線に車を駐め、浜辺へ出ることにした。


「楓、今日は……本当にいい天気だな」

「そうですねぇ。雄くんはずっと運転して疲れたんじゃないですか?」

「ん? ああ、楓が横で話してくれたし、そうでもないよ」


 このあたりは有名なデートスポットだ。

 この地方で生まれた人間はやはり恋人をここに連れてきて、綺麗な砂浜を歩くことを望んでいる。

 俺はその夢が叶ったということだ。


「私は夜の温泉が楽しみですね。お風呂上がって、美味しいお魚と日本酒をじゅるり……」

「酒好きにはたまらないだろうな」

「雄くんにも付き合ってもらいますから」

「俺はハイボールとかの方が好きなんだけどな」


 どうも楓の家系は酒が得意なようで、うまい酒の店に連れていくとすごく喜んでくれる。

 以前はテキーラを飲んでいたのに今は日本酒の方にハマっているようだ。

 でも好きではあるが、飲んべぇというほどではない。


「雄くんの顔を見ながら飲むのが好きなので……」


 楓の愛らしさは変わらずだ。

 大学ではもう以前のような芋女スタイルは止めて、今のような美女スタイルとなっている。

 当然、声をかけてくる男達は多いが、通学は行き、帰りは俺が一緒だし、同棲している話を聞くとさすがに引いてくれるので大きな問題にはなっていない。


 俺もバイトの量を少し減らして、以前参加していたサークル活動を開始した。高校までずっとやっていたサッカーをもう一度やりたかったんだ。

 そのあたりは久山にも相談して、以前のような関係に戻れたのが大きい。

 飲み会は楓がいる手前、なるべく遅くまで行かないようにはしているが、たまに試合などには楓も連れていき、応援してもらっている。

 後、恋人の可愛さをみんなに自慢する。

 みんな羨ましそうな顔をするのが楽しい。隠れて口説いてるやつもいるようだが、楓と俺の仲の良さを嘗めてもらっては困る。


 楓もまたサッカーサークルなどを通じて少しずつ交友関係を増やしている。

 さらに料理サークルにも参加して同性の友達を増やして楽しそうにしている。


 1年前のこの時期は精神的にどん底だったのに……たった半年で変わったものだ。


「何を考えてるんですか?」

「楓は今日もかわいいなと思っただけだよ」


「ふふ、お部屋についたら雄くんにマッサージしてあげますね」


 楓には淡い色のブラウスに白のロングスカートが良く似合う。

 髪を撫でてあげると嬉しそうに微笑んでくれる。……ああ、愛おしい。

 酒飲んでる時はわりと豪快なんだけど、こうやっておっとりとしている所は清楚な女の子だと感じる。


 と言っても、意外に脱ぐとすごいんだぞ。それを知るのは俺だけなんだが……。


「よっし、そろそろ行こうか」

「そうですね。夕方前には到着しましょう」


 楓の手を取り、雲一つ無い晴天の空の下で俺達は共に歩く。

 そうどこまでも……。


 ふいに俺は楓をさっと抱き寄せた。


「どうしたんですか?」

「何か抱きたくなった……」

「雄くんってここぞって時にしたがるタイプですよね。夜とかも」

「うるせー。猿みたいに発情したくないだけだっつーの。……それに楓のことは大事にしたいから」


「うん、ありがと……」

「楓、愛してる」


 瞳を瞑った楓の唇にそっとキスをした。


 本当に子供みたいな口づけだけど、今はこれでいいと思っている。


 楓と出会って報われた俺は……これからも誰かのため、楓のため、自分のため生きていく。


~FIN~


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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