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42話 一緒に帰ろう

「もう、先輩……強引すぎです」

「ほんと、悪い。必死すぎたと自分でも思っている」


 高速道路を使って、夜中の道を爆走する。

 1月3日の夜、雨宮を連れて浜山市に向かって車を走らせた。


「元々4日には帰っていいかなーって思っていましたけど、3日の夜はさすがに早すぎです」


 俺は我慢できずに雨宮を3日の夜に連れ出してしまった。

 結局押し切って連れてきてしまい、今になって後悔する。


「先輩のテンションおかしかったですよね。何かあったんですか?」

「まぁ……隠すつもりはないさ。ちょっと平坂に連絡を取ったんだ」


「は? またあの女、先輩にちょっかいを!?」

「いや、今回は俺からだ。どっちかというと引導を渡した感じかもしれん」


 そう長くはない話だ。経緯と内容を雨宮に話すことにした。

 そのまま今の俺の気持ちを正直に話をする。


「恋愛って不思議だよな。めちゃくちゃ好きになることもあれば……あんなに好きだったのにたった1回のことで無以下になってしまう」


「どういうことですか?」

「いつまでも互いに支えていかないと……そういうことだ」

「……先輩がそれで納得するなら」


 そういう意味で、俺と雨宮の関係もそうなる可能性がある。

 大切にしていかないと……本当にそう思う。


「そのテンションで雨宮を呼び出してしまった。だからちょっと強引になっちまったんだ」

「先輩が強引なのは好きですけど……お父さんやお母さんに説明するのが大変でしたよ」


 そうか、その問題があった。

 雨宮の家は富裕層だ。マンガで出てくるような大豪邸ではないと思うが、俺からすれば似たようなものだ。


「さすがに悪印象だよな」

「そうでもないですよ。お父さんは苦い顔をしてましたけど母はわりと好意的です」


「そうか……でも何で?」

「私の口ベタがこの数ヶ月で劇的に良くなったからでしょうね。あと、謹慎のことや雪山のことで先輩は誠実な人ってイメージをもたれています」

「それは良かった」


 雨宮はうまく話をしてくれているようだ。

 それでも父親は仕方ないだろう。雨宮ぐらいかわいい娘ならそりゃ心配になるだろうし。


「でも」

「でも?」

「お父さんに先輩とお付き合いしていることを話したら今度一緒に食事をしたいから連れてこいって言われました」


 ぐぅ!

 彼女の父親とか……会うのに心労がやばそうだ。

 だけど、逃げるわけにはいかない。今度の春休みに時間作って伺うか。


「先輩のことは成績優秀者で将来性も高い。絶対大物になれるって推しといたので頑張って下さい」

「お、おお……任せとけ」


 せめて、成績上位者の評価をもらって会いにいくとしよう。

 バイト減らして今月は後期試験の勉強した方がよさそうだな。

 今、雨宮と別れさせられたらちょっと立ち直れないかもしれん。


 何気ない雑談は花が咲き、あっと言う間に浜山市に到着した。


「今日はどうする?」

「さすがに家に帰ろうかと思います。荷物を片付けたいですしね」


 俺は愛車を雨宮の家の方まで走らせた。


 俺の家の家賃を大きく越えるデザイナーズマンションへ到着する。

 玄関エントランスに続く道にハザードを付けて、車を寄せる。

 助手席の雨宮は椅子から離れた


「先輩、おやすみなさい」


 サイドドアが空くことで冬の冷気が舞い込んでくる。

 雨宮は道路へ降り、手を振った。


「行きますね」


 穏やかな雨宮の笑顔に、その言葉に俺は……。


 体を乗り出して、雨宮の手を引っ張った。


「行くな……。どこにも行くんじゃない」

「ちょ、先輩」


 再び車内に雨宮を引きずり込む。


「俺を1人にしないでくれ。側にいてくれ」

「わがままですよ」

「分かってる、分かってる……。だって」


 そのまま狭い車内で雨宮の柔らかいを体を強く抱きしめる。


「好きなんだ。俺、雨宮のこと……マジで好きなんだ」

「あ……」

「もう好きなやつを手放したくない」


 雨宮は両手を俺の肩にまわそうとする。

 コートの分厚いぬくもりが顔面に触れる。


「初めて、私のこと……好きって言ってくれましたね」

「もう惑わない。これからはずっと一緒だ。俺の側で笑っていてくれ。絶対に幸せにする」


「ねぇ……先輩」

「ん……」

「やっぱり今日も泊まっていくことにしますね」



 1月3日の夜、俺と雨宮楓は本当の意味で結ばれたと思う。




ここまで読了ありがとうございます。


本作の最大イベントはここで終了となります。


残すは過去話とエピローグ2話で本作は完結となります。


……話したいことはたくさんありますが……まずは完結してからですね。


では次話 43話〈過去〉雨宮楓③を宜しくお願いします



☆☆☆


「雄太が報われてよかった」と思って頂けた証に感想やレビュー評価やブクマを付けて頂けるととても嬉しい気持ちになれます。


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