夏、君と。
前書き・・・短い話ですので、パパッと読んで頂けると思います。
あれ、美夢? 何してんの?」
撮影に夢中になっていて、晴君が近づいてきたことに、気づかなかった。
撮影を止め、晴君と少し話す。
「こんにちは。晴君。皆と遊んでいたんでしょ? 行ってあげなよ。待ってるみたい」
「少し休憩。この暑さだと、倒れちゃうでしょ。木陰だと、涼しいぃ。美夢は、大丈夫?」
「平気だよ」
カラッとした暑さの中、木陰にいる私たち。
子どもたちは、そんな中でも元気いっぱい。
「晴君は、宿題終わった?」
「宿題ねぇ。そんな言葉が存在するなんて、人間はどこで道を踏み間違えたのか……」
「面白い言い方だね。なんだか、年上の人と話してる感覚になるよ」
「同い年なんだけどね」
遊び足りないのか、男の子が一人、近づいてきた。
「お兄さん、もう一回遊ぼ」
「もう少し休まなきゃ。倒れちゃうでしょ」
「でもさー」
「だーめ。まだまだ夏休みは続くんだし、今日はこのくらいでやめよう」
「はーい」
踵を返した男の子の、しょんぼりとした背中を見送る、私たち。
「はぁ……」
「どうしたの? 美夢」
「ん? えっとね、実は、お母さんとお姉ちゃんが、こっちに来れなくなっちゃって」
「なんで? 何かあったとか?」
「お姉ちゃんは、部活を休めなくなっちゃって。お母さんも、仕事が忙しいみたい」
「それじゃあ、美夢だけなんだね」
「うん。もうすぐ夏祭りもあるのに、お母さんもお姉ちゃんも、来れない」
毎年一緒だったから、なんだか寂しい。昨夜、連絡をもらった時から、ずっと。
「それならさ。また、俺と屋台を見て回ろう」
「えっと、いいの?」
「嫌ならいいけど」
「嫌なんかじゃないよ。ただ、去年のことがあったから」
「もう、大丈夫なんじゃないの? 俺と話してる美夢、平気そうだし」
そんなことを、晴君は知っている。なのに、私はその事に気づけなかった。
平気なのはきっと、私が晴君を受け入れられたから。
多分、私は、晴君を……。
「今度は何食べたい?」
「見てから決めたいよ。今からじゃ決められない」
夏祭りが、今からとっても楽しみだよ。
後書き・・・読んでくださり、ありがとうございました。次回は蒼井真ノ介さんが執筆します。お楽しみに!