恋のシルエット
蒼井真ノ介&天城なぎさの初コラボレーション小説です。「叶わぬと知りながら~君想ふ~」を宜しくお願い致します!
私は夏休みに母親の実家に帰省していた。東京の喧騒から離れて安らぎを感じていた。久しぶりに会う、お爺ちゃんとお婆ちゃんにいっぱい甘えたい。
私は部屋に籠って本を読み耽っていた。夏の夕暮れ時、窓の外から下駄の音がするし笑い声や話し声が聞こえてきた。
私は小さく震えていた。幸せを感じたり気づいたり触れると心が締め付けられて切なくなるから。私は今すぐに誰かに会いたくなった。
私には分かり合える友達がいない。クラスメートに馴染めずにいて、まだ友達がいない。最近、東京に引っ越してきたばかりなのもあるけれど、長年、友達がいないことを恥ずかしいと思ったこともない。いつか私を受け止めてくれる友達が現れると信じているから寂しさに蓋をして頑張って独りを生きてきた。
私は不器用なので、たくさんの人と関わるよりも1人の人と深く関わりたい方だ。
それに、私を支えてくれる本さえあれば十分に幸せを感じることができた。空想の世界に自分を重ねて夢心地になることに安らぎを覚えた。
昔から強く感じていた不安と胸の痛みの原因。
それは過去の辛い思い出にあると自覚していた。
「いつか自分には悲劇が待っている」と考え過ぎたり、自分から幸せを恐れて背を向ける悪い癖があった。幸せへの憧れと恐れ。
自分は決して幸福になれない、と思い詰めたりする日々の諦めと慣れ。
いつだって私は悲しい。悲しくなるのには訳かあった。私が自分に対して正直になれなくなったからだと思うし、自分に苛立ちや嫌気が差すのだ。意地っ張りで偏屈な女の子なんて誰からも見向きもされなければ愛されることもないのにね。
私は今よりも幼い7歳の頃に両親の離婚が原因で、当時、神経性のノイローゼになり、自律神経失調症や心に深い傷を負い、自尊心が崩れてしまった。今もまだ完全には治っていない。
突然、発作を起こして、「この世から消え去りたい」とさえ思う葛藤に、日々に、苦しんでいた。本音では切望したい。何かを切望したいのに。それがわからない。私たちを捨てた父親に会いたいのかもしれない。父親を憎んでいるのにね。でも違う気がしてしまう。発作を起こす度に私は独りで静かに泣いた。涙の意味を悟られないようにいつまでも泣いていた。
心を閉ざす切っ掛けが明らかに両親の離婚にあって、私は全てに対して絶望的になって投げやりでいた。
母親を悲しませたくはなかったが、明らかに私の様子がおかしくて、異変を察知し危険だと見抜いた母親に連れられて、私は5年間も病院に通い続けた。今も飲み続けている薬が3種類もある。発作が出る度に苛まれる。自分が怖くなる。完治はしないのかな? まだ完治は難しいみたい。
私は母親から買ってもらった青い浴衣を着て鏡の前で髪を束ねた。
「美夢、綺麗よ。とっても似合っているわよ」と母親に誉められて嬉しくなった私は「ありがとう、お母さん」と言い顔を赤らめた。
「祭りを楽しんでおいでね。彩月に会ったら、晩御飯の支度を手伝ってね、と伝えておいてね」
「うん、分かった」
彩月は私の姉で13歳。中学1年生になって3か月目。姉は勉強ができて凄く美人なんだ。私も負けていないけれどもね。
引っ越して3か月目の今の心境は、怖さと不安感が続いている。見知らぬ土地に慣れようとしない自分にも原因はあるけれども、人と関わりを持ちたくないという意固地な気持ちを優先させて過ごしていた。
私は佐藤美夢、12歳、6年生。
少しずつ、大切な時間、貴重な時間を失う時期に差し掛かっているのを強く感じていて堪らなく焦っていた。
祭りには顔見知りやクラスメートはいなかった。正直、クラスメートの顔は覚えていない。
行き交う人が微笑んでいた。人の笑顔を見ると自信が失くなってしまう。息苦しさも忍び寄ってきた。私は途方に暮れていきそうだった。姉の彩月を探す気力も無かった。彩月は人に好かれるタイプだから、たくさん友達に囲まれているはずだからね。私は家にいても疎外感を感じていた。疎外感とは酷い言い方。考えすぎかもしれないけれどね。
私はうちわを扇ぎながらゆっくりと歩いていた。髪を束ねていたべっこう模様のかんざしが取れて足元に落ちた。私は浴衣を押さえて屈んだ。
「綺麗な浴衣だね。凄く似合っていて可愛いよ」と後ろから声を掛けられて驚いた。私は振り向いてはみたけれども、うつ向いたままだったので、声を掛けた男の子の足元のスニーカーしか見えていなかった。
私は顔を上げられないでいた。だって、赤面、信じられないほどに赤くなっているから。耳まで赤くなっているはずだから。相手の顔が分からない。
私は深呼吸をすると、照れを隠して真っ直ぐに男の子の顔を見つめた。
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あの日、貴方と出逢って私は生まれ変わった。
少しずつ私の気持ちが解れてきた。
新鮮な気持ち、
恋におちていき、
きっと本当の愛を知ってしまったから。
貴方が、
貴方が、
貴方が私を救いに、私を助けに来てくれたから。
読んでいただき、
どうもありがとうございました!