第8話 『これからの事』
今回は閑話的な物で、短いです。
テキストエディタを変えてみました。メモ帳はダメだという事らしいので・・・
魔法具制作開始からおよそ3時間。
リクとシルヴィアはネックレスに魔力を流す作業を続けていた。
魔力を通す為の道を、教えられたように慎重に彫っていくのだが…
「……あっ。魔力多すぎた!?」
リクが声を上げて母の方を振り返る。息子の疑問に無言で頷き、やり直すように目で促すエリス。
一方のシルヴィアはというと…
「ん……しょ………、ゆっくり…………正確に………」
じわじわと。数ミリ単位で魔力を刻んでいた。物凄く進みは遅いが、失敗するような様子はない。
魔力を流す為の道が刻まれた、魔具や魔法具を構成する根幹の部分。これを魔力回路という。
単純な作りの物なら、一本の線を終点から始点へと、真っ直ぐ逆方向へ繋ぐだけでよい。
今回、エリスが二人の課題に選んだ魔法具…『魔力貯蔵具』は複雑な回路を必要とする。
それは、「貯蔵する」行為と、「放出する」行為の二つの動きをさせる道具という特性の為だ。
お互い相反する動きを制御するには、最低で二系統の魔力の道を、干渉しないように彫り、流れを整える。
これを大きな箱の様な物に刻むのならば、二人もこれほど苦労する事もなかったのだろうが…相手は小さな紅榴石だ。
最終的な「固定」の作業を行わなければ、何度でもやり直しが出来る。但し、使った魔力は戻ってこないわけで……
「……やり直しかぁ…………疲れた………魔力切れるまでに出来るかなぁ、これ…」
「リク。口を動かす暇が有るなら手を動かしなさい。シルヴィアを見習って、ね」
弱音を吐く事をエリスは許さない。そもそも、リクは流す魔力が多すぎだった。燃費が悪いのは当然である。
それを踏まえて、より慎重な魔力操作を行い、作業するシルヴィアを手本にするように、と指導する。
「シルはホントに魔力操作上手だもんなぁ…わかったよ、かーちゃん。もう一回、やってみる」
「………………あと…………一回、同じように…………」
リクは気合を入れ直し、再度紅榴石に向かい、魔力の道を掘り始める。
隣のシルヴィアは、遂に半分の工程を終え、残りの作業を開始。
エリスが見守る中、二人は昼食を食べる事も忘れて没頭するのだった。
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「そうかそうか……いや、留守の間に随分と娘が成長した様に見えたが、本当に成長してるんだなぁ」
「ホントにねぇ……ラルフもエリスもありがとうね。色々迷惑掛けてないかしら、あの子」
リクとシルヴィアの魔法具作りの翌日。
シルヴィアの両親、ロイとメルディアの夫婦が半年ぶりに村に帰ってきた。連絡無しでの帰宅だったので、流石のラルフやエリスでさえも驚いていた。
無事の再会を祝い。積もる話をしようと、夜に大人たちはラルフ夫妻の家のリビングに集まり、果実酒を酌み交わしていた。
旅での出来事や、手に入れた薬草の話。そして、大切な子供達の事……話題は尽きる事がなさそうだ。
「シルヴィアは本当に良い子にしてたわよ。寧ろ、あの子に迷惑掛けてばかりなのはリクの方でね……」
「ホントになぁ。同い年とは思えない位、シルヴィアの方がずっと大人だしな」
「ははは……息子に厳しすぎないかい、お二人さん。リクは良い子だよ、間違いなくね」
「そうよねぇ。リクが居てくれるお陰で、シルヴィアも明るく優しい子に育ってる。私も感謝してるけど、一番感謝してるのはシルヴィア自身じゃないかしらねぇ」
夜も更け、二人の子供は既に夢の中。しかし、大人四人の酒は進み、話は子供達の事を中心に続く。
「まだ先の話だけどな。俺はリクとシルヴィアを、『アカデミー』に行かせるべきだと思ってる」
「アカデミーだって?……確かに、薬師になるにせよ何にせよ、役に立つだろうが…」
「シルヴィアが入学試験に合格できるのかしらぁ…」
「それは私が保証するわ。リクも含めて、あの子達なら、ね。…まあ、まだ10年先の話よね」
ラルフの提案に、ロイとメルディアは娘の実力で大丈夫だろうか、と疑問を口にするが、エリスが夫の見立てを肯定する。
何より、自分も師匠として二人の子供を見てきた自負がある。
『アカデミー』……それは、人族の王都「リスティア」に存在する、一流冒険者養成機関。
一流の冒険者を育成するために作られた、超の付くエリート機関であり、成人した者なら誰でも受験資格があるが、相当に狭き門である。
「ま……あの子達が将来何を求め、選ぶのか解らんが。選ぶための実力を得るにはあそこ程良い場所もないさ」
ラルフのこの一言が全てだった。願うのは子供達の幸せな未来なのだ。
その為にも、明日から訓練メニューを一段階引き上げようと、彼は心に決めていた。
スマホではまだ改行がおかしいと思います・・・
なるべく早めに全体を修正したいのに、暫く時間が取れそうにないです・・・
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