第24話 『親として、師として』
お待たせいたしました。第24話です。
今回は閑話的なお話で、短めです。ご了承を・・・
王都からラルフ達が戻って来た。
リクとシルヴィアがギド・スパイダーの討伐を成し遂げた日より丁度3日後、二人の誕生日にギリギリで間に合った格好だ。
王都には一日滞在するだけで、すぐに帰るつもりだったのだが、手続きに時間が掛かる案件があった為、予定よりも遅くなった。
ライラックの村から王都リスティアまでは、乗合馬車で南西へと丁度一日走れば到着する距離だが、折角の子供達の誕生日。それに遅れる事は絶対にできないと思う四人の親は、徒歩で王都の門を出て・・・人気の無い脇道へと逸れた。
「よし、ロイは俺が。メルディアはエリスにしっかり捕まっててくれ。・・・全速力で行くぞ」
「私、一応魔法使いって職業なんですけど?・・・仕方ないけどさぁ・・・メル、絶対離しちゃダメよ?」
脇道に逸れて人目を避けたかったのはこの為だった。ラルフがロイを、エリスがメルディアをそれぞれ背負い。背負われた二人が荷物を全て背負う・・・この状態で全力で走って帰ろうとしていたのだ。
子供達以上の速度で走る事が出来るラルフ達が、本気で走る。それはもう馬車がどうとかいうような速度を遥かに超越し、下手に近くを通れば、駆け抜ける際の衝撃波で吹き飛ばしかねないレベルである。
「は~い。エリスは無茶しないから安心してるわよぉ」
「・・・これも子供達の為。ラルフ、準備いいぞ。思いっきり行ってくれ!」
一流の冒険者や騎士という程ではないものの、数多く修羅場を潜り抜けて来た薬師の夫婦は、この移動方法も何度か経験している。・・・最初は気絶していたのだが、今ではもう慣れっこだった。
兎にも角にも、親達は一刻も早く村へと帰る為と・・・エリスの魔法【風の疾走】を限界ギリギリまで強化した物まで使って、文字通りの全速力で駆け抜けた。
街道を避け、通り過ぎた道無き道には、大きく抉れた跡が残ったのは言うまでもない。それが今朝から昼前に掛けての事だ。四人は実に馬車の倍以上の速度で村へと帰り着く。
村長に戻った事を含め、色々と報告する事があるが、まずは一息つこうとラルフ達の家に向かう。そこでは丁度、子供達が昼食を取っている最中だったが、二人は親達の姿を見て立ち上がって迎えた。
「あ。父さん、母さん、おかえり。ロイおじさん、メルおばさん、おかえりなさい。・・・結構遅かったね?」
「お父さん、お母さん、おかえりなさい。ラルフおじ様、エリスおば様、お邪魔してます。おかえりなさい」
パンとシチューだけ、という質素なメニューだけの昼食を二人は食べていたようだ。勿論これには理由がある。出かける前にエリスとメルディアから、誕生日のお祝いをするからと言われていたのだ。
帰ってきたらご馳走にするからと聞かされていた二人は、朝食と昼食を簡単な物で済ませ、夕食のご馳走に備えていたのだ。
無論、自主訓練に影響しないように必要な栄養はきちんと取っている。リクとシルヴィアは少し異常と言える位に、日々の生活も訓練最優先の気がある。これはその典型だろう。
「ただいま。・・・二人共、色々と話も聞きたい事もあるけれど、取り敢えず私達もお昼ご飯頂いていいかしら?」
「話は村長に王都での事を報告した後でな。四人分、悪いけど頼むな?」
エリスとラルフは、子供達に『何かがあった』事を直感的に感じ取った。が、今は一息つく事と報告を優先するべきであり、後でじっくり話をすれば良いと判断する。
ロイとメルディアは既に席に着き、リクに冷たい水を貰って寛ぎ始めていた。こちらは娘達の無事を知れただけで十分満足なようだ。
シルヴィアの作ったシチューをパンと共に食べ、親達四人は村へと帰って来た事を改めて実感し、漸く肩の力が抜ける思いがするのだった。
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「・・・思った以上にとんでもない事が起こってたんだな、お前等・・・」
「ホント。呆れたけれど・・・良くやったわね、アンタ達・・・」
村長の元を訪れ、リスティアでの『仕事』について報告を行ったラルフ達は、ガタルキからリク達が行った『調査依頼』の顛末を聞き、正直肝を冷やした。
自分達が離れたその日に、村の存亡に係わる事件が起こっていた。それも『Aランク』以上の魔物が原因であり、一刻を争う事態であったものを、リクとシルヴィアが二人だけで討伐し解決してしまった。
特に。残骸から、その相手が『A++ランク』にまで至ったギド・スパイダーであった事を知ったエリスは、珍しく焦りの表情を浮かべて話を聞いていた程だ。
自分の分析では、リクもシルヴィアもそこまでの実力に至っているとは考えられなかった。
先日行った【スキル鑑定】でも、目立った変化は無く、新たな【スキル】や魔法の習得にはまだまだ時間が掛かるだろうと踏んでいた。しかし実際には、二人は飛躍的に実力を上げている事が実証されてしまったのだ。
誕生日のお祝いパーティを準備する為、一度家に戻ると言うロイ達と別れ、ラルフとエリスは子供達に話を聞くことにしたのだが・・・直接聞いてみると、やはりとんでもなかった訳で。
「・・・正直に言うぞ。今回討伐した相手はそれこそ、王都でも一流の冒険者や騎士が束になって掛かって・・・やっと倒せるかどうか、って奴だ」
「私達も油断は出来ない魔物ね。それを事前知識無しに、しかも二人の状況判断だけで倒せたのは、紛れもなくアンタ達が強くなったという証拠よ」
「「・・・そうなの?」」
「自覚無し、かよ・・・コイツはいよいよもって、鍛え方間違えたかも知れねぇなあ」
自分達がいかにとんでもない事をやってのけたのか、という事を全く無自覚な二人は顔を見合わせて、不思議そうに首を傾げる。その姿にラルフは苦笑を浮かべて、右手で髪を乱暴に掻いた。
「・・・私にも責任あるわね、これ・・・偏った成長こそしていないけど、実力が上がった分・・・引き際を間違えていないか本気で心配になるわ」
エリスも苦い顔をしていた。二人の想像を超える実力向上は喜ばしい事だ。しかし、もし相対した魔物がその実力を上回る物であったならば・・・リクとシルヴィアは即座に『撤退する』と判断が出来ただろうか?
二人は愚かな選択はしないだろうが、今回の様に村にとって脅威となる場合は、実力以上の相手にさえ挑みかねない危うさをラルフとエリスは感じたのだ。
「・・・お前達が成人するまであと二年ある。俺もエリスも、それを踏まえて明日からは訓練を行う。・・・一人前になる為の最後の試験、って感じにな」
「あらゆる意味で、これまでのアンタ達が学んだ物・・・全てを見せてもらうわね?・・・さあ、話はおしまい。ロイ達が待ってるわよ」
「「はーい」」
今日は自主訓練のみ、と言外に告げられたリクとシルヴィアは意外そうにしつつも、両家の親が誕生日のお祝いをしてくれる事が嬉しく、ついつい笑顔で返事をする。
その姿を見たラルフとエリスは、厳しい師匠から普通の親の顔へと戻り、子供達の成長を噛みしめるのだった。
遂に鬼師匠二人からの最終試練、となるのでしょうか?
次回は少し更新まで時間が掛かるかも知れません・・・
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