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第12話 『炸裂!10歳の本気』

お待たせ致しました。第12話です。

 


 ガル・キマイラ。冒険者ギルドの脅威度ランクは『A+』とされている魔物。


 体長が1~2m程度の個体を基準にされており、騎士や冒険者といった、腕利きの戦士や魔法使いの面々が10人以上で討伐にあたる様、推奨されている。


 しかし、リクとシルヴィアの眼前には、3mに届こうかという巨体の魔物が居る。

 

 当然といえば当然だが、体躯の大きさに比例して魔物の力は強くなり、脅威度は上昇する。


 この個体は差し詰め『A++』に到達しているだろう、と後ろに控えるエリスは見ていた。


 傍らで、倒れ伏した騎士を救うタイミングを計り、構える夫を横目に見つつ、防護結界展開の為の魔力(マナ)を『わざと』大げさに練り上げ始める。


 その途端。ガル・キマイラが一声、大きく吠えて駆け出した。猛烈な勢いの突進だ。そこへ待ってました、とばかりにラルフが飛び出す。



「ほら……よッ、と!!」


「魔物如きが……私に触れるんじゃないわよッ!!」



 雷光の如き動き。ラルフは一回の飛び込み…その一瞬で互いの位置を入れ替えると、騎士を小脇に抱えて一気に距離を取るべく駆け抜ける。


 そしてエリスは練り上げていた魔力(マナ)を、結界ではなく障壁として右手に展開させ…そのまま魔物を平手打ちした。



「グガァッ?!!??」



 ドゴオンッ!!! という有り得ない音を立てて、巨体がラルフとは反対側へ吹っ飛び。リク達ともやや距離を空けた位置へと、轟音とともに落下する。



「行きなさい!!リク!シルヴィア!…失敗は許さないわよ!」



 金髪(ブロンド)の髪を靡かせ、子供達へと号令を下すエリス。その声に頷き合い、リクとシルヴィアは『本気』を見せる為に武器を構えた。



「やるしかない、か!!…シル、最初から全開で行こう!!」


「うん!!私達もちゃんと成長してるんだって……見て貰わないと、だね!!」



 頷きあい、二人は魔力(マナ)を高めて解き放つ。そして全力の肉体強化(フィジカル・ブースト)の赤い光が、体を強く包み込んだ。


 最初に動いたのはリク。風は使わず、右手に抜き身の鉄の剣を構えての突進だ。【高速走行】の効果が遺憾なく発揮され、瞬時に魔物との距離を詰める。



「いくぞ、新技!!【壱式・紅蓮(いっしき・ぐれん)】!!!!」



 風を使わなかった理由。それは二つある。一つは、森林地帯での戦闘で【鎌鼬(カマイタチ)】を中心とした風系の技や魔法は、命中率が悪い事だ。


 乱れ打ちの様に、狙いを付けなければ当たりはするだろうが、その分周囲の被害が大きくなる。この状況では使えない。


 そして、もう一つの理由。それが、この五年間でリクに新たに発現した力…。


【魔法:火系統】とそれを応用した【戦技:火系統】…風の系統魔法や、戦技よりも攻撃力・殺傷能力に優れる破壊の【スキル】だ。そして、それを十全に使いこなす為の剣技をここまで磨いてきた。


 ラルフによる様々な武器を用いた戦闘術訓練…その中でも『ラルフ式剣術』と本人が名付けた戦技の基本である【壱式・紅蓮(いっしき・ぐれん)】を、この五年でリクは直伝されていたのだ。


 最初から全力、の言葉に偽り無く。自身で最大の攻撃力を持つ炎を刀身に宿らせ、リクは右袈裟に斬り掛かる。



「グギャアアアアアアアッ!!!!」


「……浅いッ!!…シル!!追撃、頼む!!」



壱式・紅蓮(いっしき・ぐれん)】は主に直接攻撃の技だ。得物に炎を宿らせ、斬撃や打撃の際、同時に焼き尽くす事を主眼としている。


 但し、燃え易い物が近くにある場合、引火して火災を引き起こす危険がある。森林地帯で飛び火すれば、大火事になる事が簡単に予想出来る事から、リクは無意識に炎の勢いを弱めてしまった。


 結果、苦悶の声を上げるガル・キマイラの体に致命傷を与えるには至らず、大きく飛び退く羽目になった。


 そこへシルヴィアの魔法が着弾する。リクの退避距離を見極めた上での完璧なタイミングで…



「……【水系統:水槍・六連(すいそう・ろくれん)】…全力穿孔(フル・ドライブ)!!」



 解き放たれた魔力(マナ)が、水色の輝きを放ち、大気中の水分を集め…六本の槍の形状を成す。


 シルヴィアの得た新たな力、【魔法:水系統】の一つだ。応用次第で、エリスの様な凍結魔法も可能となる【スキル】である。


 極力、攻撃系の魔法や技を使いたがらない彼女だが、今回ばかりはそんな余裕は無かった。


 自身の持つ攻撃能力で『二番目に威力がある』物を全力で展開。六本の槍は狙い違わず、魔物の体躯へと突き刺さり、螺旋を描く。


 やがて分厚い皮膚を穿った水の槍は消滅し…魔物の巨大な体躯から鮮血が噴き出した。



「ガッ?!……グガアアアアアアアアアアッ!!!!!」



 先程、リクが与えたダメージと合わせて、ガル・キマイラも流石に堪えたのか、距離を取るべく大きく飛びずさる。


 しかし、傷は派手に見えるものの、決定打・・・致命傷には程遠い。



-----------------------



「……ありがとうございます。助かりました……す、すぐに子供達の救援を!」



 素早い救助と、エリスの治癒魔法での適切な処置が功を奏して、ガル・キマイラに殺される寸前だった騎士は一命を取り留めた。


 激しい戦闘の音を聞きつけ、駆け付けた他の騎士団員は、ラルフ達二人に頭を下げて感謝を伝えると、戦闘態勢を取る。



「礼は要らんよ、仕事だからな。それより、すまないがあの子達の邪魔をしないでやって欲しいんだ」


「……は!?いや、あんな小さな子供達だけで戦わせるおつもりか!?」


「そうよ?ちゃんとサマになっているでしょう?」


「……た、確かに……って、いやいやいや!!おかしいでしょう!!我々騎士団員が束になっても敵わない魔物を相手に…」


「心配するな。酷い言い方だが、お前さん等より…アイツ等は遥かに強ぇよ」


「ただ、まだ周りの被害を気にしてる感じがするわね。……少し、気合を入れさせましょうか」



 目の前で繰り広げられる、高ランク脅威度の魔物と、二人の子供の死闘に目を白黒させながら動揺する騎士団員達を尻目に、エリスは防御結界を張る。


 騎士団員達を守る為、そして、邪魔をさせない為に。



-----------------------



 一方、リクとシルヴィアはガル・キマイラを攻めあぐねていた。


 前足の鋭い爪の振り下ろしを、リクは剣の腹を滑らせるように受け流し、そのまま横薙ぎに体を斬り付けた…が。


「このッ!!…うわ、硬ッ!!!……って、あっぶねー!!」



 炎を纏った刃は魔物の頑丈な肉に喰い込み、止まってしまう。全力の肉体強化(フィジカル・ブースト)を使っていても切り裂くには至らない。


 間髪入れず、鞭の様にしなる蛇の尾が振り下ろされ、リクは強引に剣を斬り上げて大きく離脱する。


 そこへ入れ替わる様に、シルヴィアが低い姿勢で走り込み、足を狙って鉄製のメイスを勢いよく振り抜いた。



「ええーいッ!!……あいたたた…ホントに硬いよぉ。………ふえっ?!」



 ガイイィィィン!!と金属を叩いたような硬質な音が響き、シルヴィアの両手が痺れる。完璧に打ち抜いた筈の一撃が、ものの見事に弾かれたのだ。


 メイスを取り落とし、態勢が崩れる少女に、魔物が牙を剥く。



「グオオォォォォッ!!!」


「きゃああああ!!!」


「シル!!…【疾走】!!!……からのぉッ!!!」



 障壁を展開する余裕さえ無く、迫りくるガル・キマイラの噛みつきにシルヴィアは目を閉じ、両手で頭を押さえて叫ぶ。


 そこへ…剣を投げ捨て、限界まで前傾姿勢を取ったリクが風魔法を起動し、一息に飛び込んだ。



「【剛爆(ごうばく)】!!!ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇッ!!!!」



 いつか、あの山頂でベアを相手に放った跳び蹴り(ドロップキック)。その強化版が【剛爆】だ。


 命中(インパクト)の瞬間に風魔法を解き放つのは同じだが、魔力(マナ)の消費量を増やし、威力を倍増させている。


 宣告通り、魔物の巨体を遠くへと蹴り飛ばし、リクはシルヴィアを横抱きに・・・つまり、お姫様抱っこで持ち上げる。



「ふ、ふええええっ?!」


「一旦離れよう、シル。暴れないでくれよ?……【疾走】!!」



 安堵する間もなく、唐突な展開に顔を真っ赤に染めたシルヴィアはこくこく、と頷く。風を纏い、再び魔物と大きく距離を取る二人。…そこへ、冷たい声が響いた。



「アンタ達……何時までそんな魔物(ヤツ)に手間取ってるの?乳繰り合ってるヒマがあるなら……さっさと()りなさい…!!」


「「ヒッ……?!」」



 氷の様な冷たさだった。誰よりも恐ろしい師匠・エリスの『本気で怒る一歩手前』の声だ。関係ない筈のラルフまで、ぶるりと体が震えるのを感じる程、実際に彼女の言葉は冷え切っていたわけで。



「……こうなったら、森の被害は……もういいよな?」


「うん……おばさん、怖いし………あ、あの…ね?」


「ん?どうかした、シル」


「リっくん………お、降ろして?」


「あ……ごめんごめん。……んじゃ、行くか!」



 真っ赤な顔のシルヴィアを抱きかかえていたままだった事に、ようやく気付いたリクは彼女を地に降ろしてやる。


 そして二人は、己の段階(ギア)を最大まで上げた。後先は考えず、全ての力を叩きつける為に。



「もう…逃がさないからッ!!【結界:暴風】…最大出力(フルパワー)ッ!!!!」



 気合と共に、シルヴィアが魔力(マナ)を解き放つ。それは、ガル・キマイラの周囲を取り囲む青い光となって…猛烈な嵐を巻き起こす。



「グオッ?!ガッ!!……ガアアァァァァァッ?!」



【結界:暴風】は名の通り、激しい風による結界だ。


 それは『風で身を守る』為の物ではなく、『暴風の中に相手を閉じ込める』という、攻勢型の結界。


 シルヴィアが現段階で扱える、最大の『攻撃魔法』であるその威力は、巨体を誇る魔物を完全に閉じ込め、自由を奪い、渦巻く風の刃が襲い掛かり切り刻む…


 普段ならば、まず使用する事自体考えない、凶悪な破壊力を持っていた。


 為す術なく、風に切り刻まれる魔物。しかし、『A+ランク』を上回る個体は未だに倒れる気配を見せない。



「あれでもまだダメか……だったらどうすれ……ば…………待てよ?」



 シルヴィアの最大魔法を確認し、打ち捨てていた剣に再び炎を纏わせたリクは、正眼に構えたままで斬り掛かるタイミングを計っていた。


 まだ、倒れない。その事実を認識し、更に魔力(マナ)を注ぎ込もうとした時だった。リクは吹き荒れる風に、村での経験の記憶を突如、呼び起こされた。


 それは、村の鍛冶屋のおじさんの依頼で、精錬用の炉に使う魔具を修理した時のことだった。


 調子が悪い魔力(マナ)回路を刻み直して、試しに使っていた時・・・



『魔具も重要だけどな、火ってのはこうやって、風を送り込むと・・・ほら、激しく燃えるんだ』


『おおーっ……ねえ、おじさん。何で風で火が強くなるの?』


『さあなぁ。おじさんも自分の親父や爺さんから教わったけど、詳しい事は解らんよ』


『なんだぁ…』



 他愛も無いやり取りの記憶。だが、それが天啓のようにリクに閃きを与えた。そう…風を使えば、と。



「シル!!そのまま最大出力(フルパワー)で維持してくれ!!今から、()()()()!!」


「ふえっ!?……う、うん!!」


「行くぞ…ガル・キマイラ!!……【壱式・紅蓮(いっしき ぐれん)】!!」



 そして。炎の剣をリクは…魔物でなく、嵐そのものにに向かって振り下ろす。そんな事をすれば、炎が風に巻き込まれ、消えてゆく……はずだった。


 だが、次の瞬間。シルヴィアも、ラルフも、エリスも、騎士団員の面々も…目を疑う光景を見る事になった。


 リクが魔力(マナ)を注ぎ続け、炎の勢いを更に激しくしていたのだ。やがて炎は風全体へと波及して…内外を燃やし始める。それは…紅蓮の業火となって。



「グギャアアアアアアアッ!!!!!!」


最大出力(フルパワー)…ッ……だあああああああああッ!!」



 裂帛(れっぱく)の気合と共に、大上段に振りかぶった剣を叩き付ける様に振り下ろし。全ての魔力(マナ)を解き放つ。


 膨大なエネルギーの融合に、炎は嵐と混じり合い、超高温の竜巻と化す。辺りの木々と中心点の大地を抉り取りながら…全てを焼き尽くさんと吹き荒れた。


 木々が発火し、一瞬の内に炭化。更に地表は融解し、一部がガラス化する。炎の暴威はあらゆる物を巻き込んで、蹂躙していった。


 そして、リクの眼前に居た筈のガル・キマイラもまた、断末魔の叫びを打ち上げ、炎の嵐に焼き尽くされてゆく。


 天へと立ち上る赤い竜巻は、巨大な魔物の体躯を骨一つ残さず。また、森のかなり広範囲を消し飛ばしてしまった。


 脅威の排除に払った代償としては大きいが、やむを得ない。と言える結果であった。



「はぁっ……はぁっ………や……やった…」


「ふうっ…………リっくん!!大丈夫!?」


魔力(マナ)が殆ど無くなったけど……何とかね…」



 炎の熱波が漸く治まり始め、遠くからラルフ達が近づいてくるのを見つつ、疲れた表情の二人は安堵して、その場に座り込むのだった。


 魔物討伐依頼 -ガル・キマイラ- 討伐成功。



月末までに10万字に届くか微妙ですが、ESN大賞に応募致しました。

皆さま、どうか応援よろしくお願い致します。

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