表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
職業:番長 ステータス:不明  作者: 熱湯ピエロ
番長、異世界に立つ
15/121

5-2.トカゲ番長

ドワーフは山に穴を掘って、そこで生活してマス。来る者拒まずで排他的な種族ではないのデスガ、自分達は用事が無い限り滅多に外にはデマセン。ワイルドな引きこもりデス。

 グローリエルは早口で尋ねる。


「と、トカゲ? トカゲですか? 短い四本脚のうろこでしっぽで胴長の?」

「おう、そう見えたわ。デカいトカゲじゃ。こんなもんかのぉ」


 ダイセンは手で大きさを表現する。彼の横幅と同程度……つまり1m弱だ。

 グローリエルはそれを聞いて、少し落ち着きを取り戻す。二度ほど深呼吸をして、ダイセンに尋ねた。


「……他に特徴ってあります? 色とか」

「むぅぅ。何やら赤かったような……すまん、それだけじゃ」

「いえ! 十分です」


 グローリエルは考える。トカゲ。グラードにもそう呼ばれる生物は存在する。ドラゴンの遠い遠い眷属。その一種だ。ダイセンの言う『トカゲ』と彼女の考える『トカゲ』が一致しているとは限らないが、何となく大きな認識ずれはないように思える。そして、『赤』。

 グローリエルは可能性を感じた。もしかしたら。


「少しだけ、私に任せてもらえませんか」


 彼女はエメラルドグリーンの瞳に決意を込め、そう言った。



 精霊には『色』がある。

 風の精霊。これは『緑』。水の精霊。これは『青』。土の精霊。これは『茶』。そして、火の精霊。これは『赤』である。(ひかりの精霊とかげの精霊は両方『無色』)

 特定の精霊の影響を多く受けた動物はこの『色』が表皮に濃く現れると言われている。そして、精霊の影響を受けづらい『魔獣』は灰色や黒、あるいは白の体を持つものが多い。もちろん例外も数多くいる。カラフルな魔獣だって、いるだろう。

 ただ、『赤』の体を持つ『トカゲ』。それは精霊の影響を強く受けている可能性が高い。

 『魔獣』とは考えにくいのだ。



 グローリエルはダイセン達の前に立つと、大きく深呼吸する。


「スキル。『コミュ:アニマル』レベル2。『這いずる者』」


 そう呟き、前方を睨んだ。家族が待つフェンリルのためにも、この場を快く任せてくれたダイセンのためにも、ここで失敗は出来ない。グローリエルは口を開く。


「コルル! コル! クルルァ!!」


 彼女の口から発せられた言葉? いや、鳴き声と言った方が正しいか。それは何とも形容しがたい! すると辺り一面が、にわかにざわつきだした!


「くるるる? くるるるる?」

「ゲァ! ゲァ!」

「キュゥゥ。フシュル!」


 グローリエルは負けじと叫ぶ!


「クァ! クルァ! コルルル! コル!」


 おぉ、なんだこれは。一体何が起きている!? 周囲のざわつきがどんどん大きくなっていく!


「ギャァ!」


 ひと際大きい鳴き声が辺りに響くと、ざわつきがぴたりと収まった。そして、木々が揺れ、草むらが揺れ、何者かが這い出てくる。それは、ダイセンが言った通りの巨大なトカゲ……真っ赤な頭を持ったトカゲ達であった。

 ただ、異様なのはその数。到底数え切れるような量ではない。そして、トカゲ達が姿を現して、森の中を漂っていた熱気が一際増した気がした。

 グローリエルは目の前の光景に息を飲む。

 この赤頭のトカゲ達は『レッドキャップ』。本来なら火山が生息域の生物である。グローリエル自身も実物を見るのは初めてだった。どうしてそれがこんなにも、こんな森の深くにいるのだ。彼女は杖を手に身を強張らせる。

 その疑問を解消しようとでも言いたげに、他より一回り大きなレッドキャップが緊張するグローリエルの前にのしのしと進み出てきた。



「すっごいのぉ。本当に話しとる」


 巨大トカゲと話しているグローリエルを見て、ダイセンはしきりに感心していた。先の照明といい、動物とのコミュニケーションといい、本当に頼りになる。自分とフェンリルだけではこうはいかなかっただろう。ダイセンは隣でお座りをしているフェンリルに顔を向けた。


「悪いの、フェン坊。わしよりグローリエルの方がよっぽどおんしを助けとるわ!」

「がう」


 応えるフェンリルは真紅の眼差しをグローリエルから離さない。ダイセンは太く笑いながらフェンリルの頭を撫でた。



「わかった、わかりましたよ! バンチョー!」


 レッドキャップとの話を切り上げ、嬉しそうにグローリエルがダイセン達の所へ駆け寄ってきた。ダイセンは手を上げ、彼女を迎える。


「お疲れさん! あんトカゲどもは何ゆうとったんじゃ?」

「まず、あのトカゲ、レッドキャップっていうんですけど」


 グローリエルはレッドキャップが本来は火山にいる生物であることを伝える。


「火山にドワーフがたくさん来て、動物達が追い出されちゃったみたいなんです。その中で水気に強いレッドキャップ達はこの辺りを新たな縄張りにしたと」


 簡潔かつわかり易い説明である。これならばダイセンも何度も聞く必要は無いだろう。彼女の説明スキルの向上が感じられる。

 口をへの字に曲げたダイセンがフェンリルと顔を見合わせた。


「奴等もフェン坊も一緒じゃのぉ」

「がう……」

「人に住処追いやられた動物が、別ん動物に迷惑ばかける……ままならん。フェン坊、あんトカゲ共とは一緒に過ごせんのか」

「がるる!!」


 ダイセンの言葉に食い気味で勢いよく首を振るフェンリル! それを見たグローリエルは苦笑した。


「レッドキャップは火の精霊の加護が強いから、熱いんです。あれだけいると、この一帯茹で上がっちゃいそう……こんなんじゃ寝られないよね、フェンちゃん」

「がう」


 フェンリルが同意するように吠える。……ちょっと待ってほしい。小話3でフェンリルがダイセン達の言葉を理解してない旨の説明があったはずだが、もう完全にわかっちゃってるように見えるのは気のせいか? まぁ、フェンリルもダイセン並みに察しがいいということにしておこう。

 腕を組み、唸るダイセン。


「この暑さはそういうことけぇ。カンキョーハカイゆうやっちゃな」

「環境破壊! なんか力強い言葉ですね! グラードだとこういうのは『属精流転ぞくせいるてん』っていうんですけど、そっちの方が深刻そう」

「わしんトコじゃよく聞く言葉じゃが、こんなん使わん方がえぇぞ! がっはっはっ!」


 太く笑った後、ダイセンはバシン! と自分の腹を小気味よく叩く。

 ダイセンの顔にはもう悩みの色は見当たらない。グローリエルの話を聞いて、既に彼の腹は決まっていたのだ。


「よっしゃ! いってみるか、そん火山! 『どわーふ』やらに会ってみんとなぁ!」


 ただ、意気込むダイセンとは対照的に、グローリエルはバツが悪そうに俯く。


「だ、大丈夫、ですかね……?」

「おう、なんじゃ。えらい弱気じゃのぉ」

「……あの種族、エルフとはソリが合わないとかなんとかで。ちょっと怖いというか」

「がっはっはっ! 大昔は一緒に戦ったのじゃろ! そう言うな!」

「ううぅ。食べられたりしないかな」


 グローリエルはがっくりと肩を落とした。

 ダイセンは学生帽のツバを撫でる。


「決まりじゃな! フェン坊、もうちょい付き合ってもらうぞ」

「がう!」

「じゃあ、レッドキャップ達には待っててもらうように話してきますね」

「ちょい、待ちぃ」


 ダイセンは一言二言グローリエルに伝える。

 グローリエルその内容に目をしばたたいたが、頷くと、再びレッドキャップの元に走った。



 やはり自分も動物と話してみたい。グローリエルの背を見ながらダイセンはそう思うのだった。


【トカゲ番長 終わり】


【おまけ】


ドワーフの歌


我は掘る! 我は振るう!

我は掘る! 我は振るう!

我は掘る! 我は振るう!


我が力 我が一族 繁栄のため!

見ろ この毛深き顔こそ気高き誇り!

掘れ そして一歩前へ さらに前を掘るために!

振るえ そして一歩前へ ツルハシはくすめど!

許したまえ ひかりの精霊よ!

光浴びぬこそ我等が誉れ!

ドワーフの歌の元ネタはラグビーNZ代表が試合前に行う『ハカ』という踊り。すごく力強くて圧倒されます。


【今日の最強ステータス!】

・グローリエル(杖)

職業:駆け出し魔術師

【基礎ステータス】

ライフ(最大):21

マジックパワー(最大):14

力:9

体力:8

魔力:15

素早さ:13

【累計ステータス】

攻撃力:14

防御力:13

魔法威力:27

魔法抗力:22

素早さ:17

【代表スキル】

強打:棒で 思いっきり ぶん殴る!

【一言】

まだ見ぬ世界に向かって、最初の一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ