小話3.がうがう番長
墓虎巣禍塾はグラード並みのファンタジーな学校なので1年生のダイセン君が13、16歳(中学もしくは高校の1年生)とは限りマセン。
小話3 がうがう番長
我は†深き闇の殺し屋†誇り高き『フェンリル』である。
闇を思わす艶やかな毛皮。鮮血を思わす真紅の瞳。全てを切り裂く鋼の爪。死の冷気を感じさせる鋭利な牙。この恐ろしげな姿からそう呼ばれるのだが、実はそんなに戦いが好きではない。人間が挑んできても我が闇の外套(霧)で辺りを包み、撤退することがほとんどだ。
それに狩り行為もほとんどしない。我等誇り高きフェンリルは闇の外套(霧)で魔力を魔素に変換し、それを吸収することで生きることが出来るからだ。つまり、生きるのに他の生き物を殺す必要はほとんどないのである。魔獣だからといって全てが人に仇なすと思われたら心外だ。それに普通は人などあまり寄り付かない森の深くに住んでいるのだ。逆にちょっかいを出してきているのは人間だろう、と我は言いたい。今は訳あってちょっと巣を移動させているのだが。あのトカゲめ……
エルフの村? いや、ここは魔力の満ち方が尋常ではなかったから、ちょっと分けて頂こうと思ったのだ。確かに何度か追い払われようとしたが、こっちだって巣には妻と子が腹を空かせて待っている。簡単には諦められない。
と、思っていたのだが、でかい人間にぶん投げられて叱られた。叱られた、とは言ってもでかい人間の言葉は理解できない。ただ、我のしていることはどうやらエルフ達にとっては生死に関わる大問題だった、その深刻さを体に叩き込まれたのだ。とても反省している。我も他種族を存亡の危機に陥らせることをしているつもりは無かったのだ。
しかし、このでかい人間、不思議な魅力を持った男だ。
対峙の時、撤退することも出来たのだが、何故かあの人間には真っ向から挑みたくなった。あの人間が発する殺意無き、だが力強い真っすぐな闘志。それに惹かれたと、無理に理由をつけるとしたらそんなところだ。まさか力で人間に負けるとは思わなかったが。
そして、戦いの後、我等は友となった。
このでかい人間は我を理解し、我と共に戦ってくれる。この男と行くことは我が家族への救いに繋がる。そう信じられる。だから、今は眠る。力を蓄えておくのだ。
ただ、奴の手はごつくて痛い。撫でるのをやめろ。撫でるならエルフの女だ。あのきめ細やかな手は最高だ。あれに撫でられるためなら尻尾を振るのもやぶさかではない。
【がうがう番長 終わり】