罪愛~夢路~
暗い路地に響く足音。
重なっていて分かりづらいが2人は居る。
自然と早足になるも背後の足音も遅れをとらずまた足音は重なった。
「おにーさん。」
背後から少女が呼ぶ。
その声に、はぁ、とため息をつき振り返る。
「なんだ、また勝手に家を抜け出して。」
「ふふん、遅いのが悪ーい。」
少女は悪びれる訳でもなくそのまま背後から回り込んできた。
「ねえ、ちゅーして?」
あまりにも艶めかしい流し目でお願いされ、断ることもできずそっと少女の腰に手を回す。
「こんな所で私にねだるか。」
「駄目なの?手、熱くなってるよ?」
おにーさんも欲しいんでしょ?そう言いながら少女も私の首元に腕を回し、更に密着してくる。
「せめて、こんな所ではなく家に帰ってからにしないか?」
「んんー、我慢できるかなぁ。」
「……1度だけだ。」
「やったぁ。」
2人の影が重なった。
熱い接吻に一瞬自我を失いながら少女を貪る。そのまま少女の服に手をかけボタンを外し始めたところで肩を叩かれる。
息が続かなくなったのだろう。荒々しかった喘ぐ声も次第に弱々しいものに変わり始める。
「誘って、来たのは、キミじゃないか。」
区切りながら言葉を発する。
目線を合わせ、少女の瞳をのぞき込むとなんとも扇情的な表情でこちらを見ている。ただ、苦しいだけかもしれないが潤んだ瞳に火照った顔、小さな声でやめてと繰り返すその姿にそのまま情事に移ってしまいたくなる。
「このまま、ここで、始めても、良いか?」
ふるふると首を振ろうとする少女。
口がもごもごと何かを喋ろうとしているので一旦解放し首筋や耳を甘噛みする。
「も、らめぇ、続き、しない…。」
息も絶え絶え呂律の回らない舌で必死に伝えてくるこの言葉を聞いて動きを止める。
「そうか、なら家に戻ろう。」
すっと立ち上がり何事も無かったかのように再び歩き始める。両の腕に少女を抱き抱えながら。
「着いたら続きか?」
「……すぅ、すぅ。」
眠ってしまったようだ。これでお迎えとは可愛らしい。
帰ったらこのしこりをどう処理しようか悩みながら路地を抜ける。
すれ違う相手がいなくて良かった。もし下半身の有様を見られたら社会的に終わるところだった。みっともない、そう自嘲気味に呟き抱きかかえられた少女に口付けを落とす。
愛おしい、そして悩ましい私の唯一の宝物。コレを守るためなら、私は何だってしよう。たとえ、世間に阻まれようとも。
自分、裏路地が好きなのかな……。
裏路地チョイスが多すぎることに気付いてしまった今日この頃。