都会の雨
それは、梅雨に入ったばかりの夕刻。
外回りの営業中のことだった。
ポツ、ポツリ…
ふと見上げると、朝から曇っていた空から夕立が降ってきた。
私は書類ケースを頭に掲げ、目についたカフェへと急いで駆け込んだ。
とりあえず、ブレンドをオーダーする。
ハンカチで濡れたジャケットを拭き、パンプスを気にする。
(下ろしたての牛革なのに…)
オーダーしたブレンドは、酷く不味くて、思わず舌打ちをした。
(あと今日のノルマは…)
そんなことを考えながら、ぼんやりと窓の外を眺めていたら、街路樹が目に入ってきた。
人工的な木々の緑が、雑踏の埃を落とし、深呼吸しているように、雨あがりにその葉を揺らしている。
その何気ない光景に何故だろう理由もなく、雨の匂いを感じた。
(さあ、もうひと頑張り!)
にわか雨が止み、かそけき虹を映し出しても、そんな事は知らぬげに、再び都市は動き出す。
本作は、なななん様が活動報告内で主催されたお題小説です。
お題は、「葉もしくは木、樹木」でした。
又、本作は、銘尾友郎さま主催「笑顔でいこう企画」参加作品です。
なななん様、銘尾友郎さま、参加させて頂きありがとうございました。
そして、お読み頂いた方、本当にどうもありがとうございました!