特別話 そのいち 王城での夜
今回はガルスが王城に泊まった日のことを書いてみました。
これはガルスがマルティン近衛騎士団長と模擬戦を終えた後の話である。
俺は今模擬戦を終えたところ、アレックス国王に泊まっていけと言われたから王城に泊まるところである。正直とても楽しみである。
「ガルス!とりあえず汗書いてるから風呂に行ってこい。」
「なっ!なに!? やっぱり風呂があるのか!やったー騎士になって良かったー」
本当に嬉しい。俺はこちらの世界に来てからは風呂というものには出会えなかったからだ。スクルハラに拾われてからは水浴びは出来たもののお湯には浸かることはできなかった。魔法で水を温めることが出来てもそれを入れる風呂桶なるものは手に入らなかった。やはり日本人たるもの風呂は大切だ!
また、学院に通うためにこっちへ来たときも宿屋などには風呂がなくお湯で体を拭く程度のことしかできなかった。
「アイク!風呂は露天か?露天風呂はあるんだろうな!」
「ん?ロテン風呂?それはなんだ?」
なにっぃぃ!露天風呂がないだと…残念だが露天風呂は諦めるしかないか…だが、これでこっちの世界に来てから初めて本当にやりたいことが出来たな。
それは露天風呂を作ること、ゆくゆくは銭湯があちこちに立つような世の中にしてやるぜ!
俺が新たな野望に燃えているなか、アイクに率いられて風呂に案内される。
「ほほう!これがこの世界の風呂かー」
王城にあった風呂は、古代ローマにあったと言われるテルマエのような広々とした風呂だった。
なんか、こういった風呂は初めてだから落ち着かないな。
「ガルス、体を洗うからこっちに来い!」
「分かった、今いく。」
そういって来てみると5~6人のメイドがいるではないですか…
「んっ?おい、なんでメイドさんがいるんだ?」
まさかとは思うが…
「ああ、このメイドは体を洗ってくれるメイドだ。」
普通に真顔で真顔で言われたよ。まさかだったわー
えっ?洗ってもらったのかって?そりゃ最初は断ったさ。けどアイクを見ているとすごく気持ち良さそうなんだよ。あっ、気持ちいいって変な意味じゃないぞ!それを見てたらちょっと試したくなってってな。
めっちゃ気持ち良かった。
そうして俺はお風呂に存分に浸かり、それはもうのぼせるぐらいに満足いくまで浸かり俺たちは風呂を出た。アイクは俺に付き合ってられずすぐに出てしまったけどな。
そして、この後は夜ご飯だそうだ。どんな料理が出てくるか気になっている。しかも食べるときに家族を紹介するとアレックス国王に言われてしまった。たかが息子の騎士風情に家族なんか紹介するのだろうか?
そんな疑問を持ちながら、俺はディナーに招待された。
ディナーはよくあるような細長い机のお誕生日席にアレックス国王、その近くに位が高い順に座っているようだ。
「ガルス君、お風呂はどうだったかね?」
アレックス国王に尋ねられた。
「とても良いお湯でした。ひとついうと露天風呂が無いことが残念でした…」
「ほう、ロテン風呂というのは聞いたこと無いな?それはどのようなものなのだ?」
やはり露天風呂はこの世界の常識には無いのか…ならば俺が布教するのみ!素晴らしさが分かるまで語ってやろう!
ガルスが心のなかで盛り上がっているのを見たアイクはすかさずこう言う。
「父上、ガルスの話も良いですがまずは食事ませんか?家族の紹介もしてませんし。」
実は先程風呂場でガルスにさんざん露天風呂の素晴らしさを語られてのぼせかけたアイクはこの場では話させないぞという気持ちで話を中断させた。
「ガルス君の話は後で聞くことにしてまずは家族の紹介をしよう。まずは私は分かるな?私の左隣が妻のミーシャだ。」
アレックスが紹介するとミーシャさんが頭を下げてくれる。
「その隣にいるのが長女のアイシャだ。アイクの2個上になるな。そしてアリスの隣が次女のナーニャだ。5歳だ。見かけたら気にかけて欲しい。そして私の右隣が知ってると思うが長男のアイクだ。ガルス君はアイクの騎士となっているが、家族が困っていたら助けて欲しい。よろしく頼む。」
「力になれるか分かりませんがこちらこそよろしくお願いします。」
「では、食事といこう!存分に食べてくれ。」
ディナーが始まった。
はあ、食った食った。久しぶりのご馳走だったな。
「ごちそうさまでした。」
「ん?ごちそうさまとはなんなんだ?」
アイクに尋ねられた。
「ああ、ごちそうさまって言うのは遠い国の食事が終わったときにする合図みたいなものだ。」
「ほう。そのような合図が遠い国にはあるのだな。そういえばガルスはバトリシアに来る前にはどこにいたのだ?」
ディナーが終わって、お茶会に移行しつつあるこのタイミングでそのような話題になりつつあった。
どこにいたかね…スクルハラには別に好きに言えばいいと言われたから別に言ってもいいんだけど…俺もなんていうところにいたのか分かってないんだよな…
「俺は…、目が覚めたらよく分からない森に居てな。だからどこと言われても分からないんだ。」
「森だと?なんでそんなところにいたんだ?」
「俺も分からないが、赤ん坊のままカゴに入れられて置いてかれたみたいだ。」
「それでどんなひとに拾われたんだ?」
「うーん、言っても信じないと思うけど…ドラゴン。」
「「「「ハッ!?」」」」
王家の方々がお茶を思わず吹き出した。
読んで頂きありがとうございます。
もしよろしければ、評価やブクマなどよろしくお願いします。
また、何かありましたら感想にお願いします。
特別話として書かせてもらいましたが思ったより長くなりそうなのでもう一話書くと思います。
どうでもいいと思ったりすると思いますがお付き合いください。