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僕が異世界常駐でゲームのデバッグをさせられた件  作者: s_stein
第一章 異世界にもVRゲームがあった
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ここで紹介タイム

 ところで、今までの会話の通り、山本さんは結構ゲーム好きである。

 そして、同じ趣味を持つ僕と気が合う、一応の上司だ。

 なぜ『一応の』みたいな微妙な表現を使うかというと、僕はこの会社の社員ではないから。


 いろいろな委任契約の作業を僕の会社がこちらの会社から受注していて、そのおかげで切れ間なく僕に作業が回ってくるのだが、作業場所はいつも僕の会社のオフィスではなくてこちらの会社のオフィス。


 つまり、僕は客先常駐者なのである。


 専門学校を2年で卒業後、とある小さなソフトウェア会社に就職し、短い新人研修期間の後、初仕事が客先常駐でのソフトウェア開発支援業務。

 その常駐先がこちらの会社。


 主に、オンライン系のシステム開発を行っている。

 銀行系とか証券系とか官公庁系とかは内緒。


 名目はSE。でも、何でも屋。

 設計、製造、試験。すべての工程を経験済み。

 割合で言うと、デバッグが50%かな。


 そして、こちらにお世話になって丸3年。

 なんと、ずっと山本さんの下なのだ。


 長いこと指導していただいているので、うちの会社の上司よりも上司らしく思っている。

 そして、うちの会社の上司は現在、直接コンタクトが減って、顔の見えない上司と化している。名目上は、実施責任者なのだが。

 こうなると、僕は派遣みたいに見えてくる。


 山本さんは、いろいろな開発の現場で数々の修羅場をくぐり抜けてきた敏腕マネージャーらしい。

 武勇伝は周りからいろいろ聞かされている。それはもう、耳にたこができるくらい。


 この業界の古参の人々の多くは、武勇伝を持っているのがお約束。

 武勇伝ほどではなくても、苦労話とかも。

 業界をあまり知らない僕には、ちょっとした苦労話でも人生経験のためになることだってある。

 時には反面教師にもなる。


 山本さんは、飲み会では派手にはしゃぎまくるが、お酒には決して飲まれない。

 二次会に行こうが三次会に行こうが、翌朝は平然と定刻に出社するタフな人。

 体育系の人って、みんなお酒に強いのかなと思ってしまうのだが、世間一般はどうだろう。


 そんな体力自慢な彼は、普段は人なつっこい性格。

 お客様には低姿勢。


 ところが、理不尽な要求を出すお客様となると、会議の席上でも電話越しにでもガツンと言ってしまう、ちょっと熱血漢。

 お客様は神様ではない、とよく聞かされた。

 昔、その逆を言った人がいたらしく、今迷惑している人が少なからずいるとも。


 そして、何を隠そう、山本さんはゲーマー。

 フィギュアにも手を出しているらしい。

 その置き場に困って部屋をもう一つ借りたとは根も葉もない噂だと思うが、部屋が二つあるのはどうやら事実らしい。一人暮らしなのに、何をしているのだろう。


 本人は、自分のことを『戦うオタク』と称している。

 この自称は世間で通用するのかは知らないけれど、見ているとそれもありかなと納得してしまう。


 年齢不詳のような顔で、本人曰く『万年25歳』。

 いつかは鎌をかけて本当の年齢を聞いてやろうと思っているのだが、ガードが鉄壁なので、叶わない夢かも。


 そんな上司の山本さんに、僕は以前からかなり仕事で助けられているので、恩義を感じている。


 でも、今回だけはねぇ……。


 というのも、僕のこれからの波瀾万丈が、山本さんの『あの一言』から始まったので。


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