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僕が異世界常駐でゲームのデバッグをさせられた件  作者: s_stein
第一章 異世界にもVRゲームがあった
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寝転んでプレイできるスーパーリアルなゲームの世界

 壁にめり込んだままになっている女生徒を放置して、コントローラで言われたとおりに『Config』で『View』を『Real&Theater』に設定する。

 それから、メニューをクリック……、おっと、Real&Theaterだから念じればいいはず。

 なんと念じればいいのだろう。


 こういうときは、簡単な単語から当たってみるのがベストだ。

『メニュー』という単語を心の中で思い浮かべる。

 右下を見ても何も表示されない。

 ならば、メニューが表示されるのをイメージして『メニュー』と念じる。

 今度は画面右下にメニューが現れた。そうか、工夫が要るみたい。


『終了』と念じる。

 何も起こらない。

 そうだ、メニューでは『Exit』だ。

『Exit』と念じる。

『Save? Yes No』と表示された。

 ここで、『No』と念じる。


 すると、画面が真っ暗になり、音楽も終了し、中央にロゴが表示された。

 しばらくして、ブルーの画面でアイコンが一つ表示されている状態に戻った。

 なるほど。


 まだ試したいことがある。

 まず、それまで起こしていた上体を後ろ向きに倒して、ベッドの上で寝転んだ状態、つまり仰向けの状態にする。

 それからゲームをもう一度起動。


 ロゴが表示された後、昇降口の場面になった。

 今は、昇降口に突っ立って正面の壁を向いている状態。

 あれ? ベッドに寝転がっているのに、なぜ仰向けになって天井を見た状態にならないのだろう?

 これはそういうモードらしい。

 寝転がりに適している。


 そしてメニューも自動的に表示された。

 ここで試しに『Config』を念じてみる。

 『Config』を選択したことになって、項目が現れた。

 次に『View』を念じると、『View』を選択したことになって、項目が現れた。

 なるほどである。


 設定項目を見ると『Real&Theater』のままだ。値が保持されているらしい。

 さて、メニューを抜けたい。

 『Quit』と念じる。メニューが閉じた。


 なお、メニューにある『Exit』ではゲームが終了するから危険だ。

 似ているから注意しないと。メニューではそれらが2つ並んでいるので、改善の余地あり。

 さて、初期起動のメニューを閉じて、ゲームスタートだ。


 首を上下左右に振ると、その向きに視点が移動する。

 違和感がない。

 首を元の位置に戻す。今度は正面を向いた。


 次は目だけ上下左右に動かすと、その向きに視点が移動する。

 これも違和感がない。

 首を振りながら目も移動するが、視点の移動に違和感なし。


 次に、ベッドに寝転がっている状態から上体を起こしてみる。

 画面がちょっと揺れたが、まっすぐ前を向いている。

 揺れたのは首が動いたからだろう。


 ということは、腰から上、頭の先までがまっすぐ前を向いた姿勢を保っていれば、上体を起こそうが、寝転がろうが、同じになるらしい。


 試しに、真横に寝転がってみる。変わらない。

 もう一度、上体を起こしてから、頭だけ動かして天井の方角を見てみた。画面も天井の方に移動する。

 仮説が成り立った。

 なるほどである。


 さて上体を再び倒して、仰向けのままプレイを続ける。

 初期起動のメニューを閉じたから、ゲームスタートである。


 ここで彼女が登場する前に、移動を試したい。

 どうやったら前後左右に歩けるのだろう。

 ジャンプとかスキップとかできるのだろうか。


 試しに『歩け』と念じてみる。

 動かない。

 そもそも歩くときは無意識だ。自然と前へ足が出る。向きを変えるときは体をひねる。

 どうすればいいのだろう。


(前に歩けるといいのだがなぁ。……あっちへ行きたいなぁ)

 と何の気なしに思ったその瞬間、画面の景色がこちらに向かってゆっくり動き出した。

「なな……っ!」

 こういう画面の移動は、ゲーム中の主人公が前に向かって歩いている証拠だ。


 急に動き出したので慌てた。

(止まれ!)

 止まった。フーッ……。急に動くなよ。


 まさかと思って、他の行動を試してみる。

(右のすのこの上を歩きたい)

 おお! 確かに、右のすのこの上を歩いているように見える。

「これだ!」

 思わず叫んでしまった。


 ある方向に歩きたい、という気持ちを起こせば、勝手にその通りに歩けることがわかった。

 自分の思いが、ゲーム中の主人公を動かすのだ。


 動かしているうちにコツがつかめてきた。

 ぐるぐる回ることもできるようになった。

 原理はわからないが、とにかく歩ける。


 そろそろ経過報告をせねばなるまい。

 メニューから『Chat』を選択するイメージをして『Chat』と念じると、チャット画面が現れた。

 ここで閉じる練習をしてみよう。

 チャット画面を閉じるイメージをして『Quit』と念じると、画面が閉じた。

 単に単語を念じるのではなく、動作をイメージしつつ念じるのがコツのようだ。


 もう一度チャット画面を開く。

 発言はあれから更新されていない。

 完全に、僕の発言待ちらしい。今まで向こうから発言してきたことはないし。


 この状態でキーボードもなく入力できるだろうか?

 まさかと思って、発言したい言葉を念じてみた。

 やっぱりというか当然というか、入力画面に言葉は現れなかった。

 もし言葉が画面に現れるとすると、間違って心の声がチャット画面に現れかねないので、この仕様の方が助かる。


 今寝転がったままなので、これではキーボードが打てない。

 いったん、上体を起こす。

 そして、『Keyboard』を選択するイメージをして『Keyboard』と念ると、画面下半分にキーボードが見えるようになった。

 後は、キーボードを叩いて普通に文字を入力する。


『DBT>Real&Theaterは今のところ、違和感がありません。動けます』

 あれれ? 無反応。

 僕の発言がしばらくなかったので、油断しているのか。


 しばらく待っていると、怒濤のようにレスが飛んできた。

『イカヤ>あら、そうなの?』

『センダ>初めてなのにさすがですわ』

『カケホ>マジで?』

『イイン>おめでとうございます』

『ノシマ>Real&Theaterがリアルにいけるってことで』

『やまだ>安心しました。続けてください』


 おおかた不思議がられているようである。

 言われる僕も不思議ではあるが。


 画面の中で手を伸ばせば物に触れることができる。その温度も感じる。

 イメージして念じれば歩き回れる。

 さきほどスキップにも挑戦して、なんとかできた。


 再度ゴロリと仰向けになる。

 デバッグ体勢の準備完了。


 そろそろ、尻尾が生えた女生徒が登場するはずだ。

 今度は何が起こるのか。

 もし壁抜けが再現したら、僕も抜けてみようか。

 などと考えながらキョロキョロして彼女の登場を待っていた。


 しかし、登場しない。


 では、先ほどと同じく下駄箱をいじってみた。

 とその時、左耳から聞き覚えのある女の子の声がした。


「ヘイジー」


 きたーーーーー!

 僕は、声のする方へ振り向いた。


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