トイレはどうする?
途中休憩したい場合の方法を聞いてみた。
「トイレに行きたいときは?」
「普通にHMDを外してください。なお、これからプレイしていただくゲームは、トイレのドアがあるので開けてみてください」
「何が起こるのですか? そこに便器があって用を足せるとか?」
「さすがにそれは無理です」
「ですよねー」
「その辺が水浸しになります」
「ハハハ」
「ハハハ」
お互い、初めて意見が一致した。
山田さんは、またまじめモードの顔に戻る。
「食べるのもそうですが、こういう生理現象はまだ制御できません」
『まだ』なんて、この人、本気で尿意を制御しようとしているのだろうか。
恐ろしい話である。
「じゃ、ゲーム内のトイレはどうなっているのですか?」
「それは……ゲーム中に開けてみていただければ」
またか。
どうなるかも伝えず、やってみろと。
「やってみればと言われましても、仕様がわからないとデバッグできませんが」
「……仕方ないですね。このゲームの場合、トイレのドアを開けると、HMDの前に今自分の目の前にある光景が現れます。ルームビューみたいに画面にオーバーレイされます。これで、HMDをつけたまま自宅のトイレに行けることになります」
「そんな格好で家の中を歩き回る人はいないと思いますが」
「良いか悪いかは、実際にやっていただいて、ご意見をお聞かせください」
やっぱり、実験台じゃないか。
いい加減、はっきり言えばいいのに。
「トイレが終わったら?」
「右下に『戻る』の表示が出ているので、コントローラを使ってそこを選択するか、そこに視線を一定時間向ければ、トイレのドアの前まで場面が戻ります」
「なるほど」
「本当は、それをどうやってプレイヤーが見つけ出すのか、初めての人に試してもらって知りたかったのですが」
ついに、婉曲で実験台と白状したよ。
「すみません。でも、それってデバッグじゃないですよね?」
「……」
実験台という単語が喉から出かかったが、ここは大人の対応をする。




