番外編 和歌山恵美の小さな出会い 前編
※時系列は本編より前
和歌山恵美は、少し疲れていた、
今年の新入社員のメンタルがことごとくある一人を除いて弱いので、その分のカバーを恵美一人が実質として背負っている状況なのだ。
「うむむむ…これは、今年の選考間違えたかなあ」
さすがにこれは業務が終わらないかな、そんなある日の事、
あまりの作業量に恵美は机に付していた。
限界が近づいて爆発しそうなほど蒸発している、
いよいよ怒鳴ろうかというより、皆がそうなると予測していたのだが。
「先輩、コーヒーどうぞ」
先程から作業を手伝ってくれていた後輩が、
いつのまにか冷たいコーヒーを買ってきてくれて、恵美の頭にコツンと当てている。
「俺が少しやっておきますから、先輩、休んでてください」
後輩の言葉に甘えることなど普段はないのだが、今日は日頃の疲れからなのか、
コーヒーを飲んで、ホッと一息つくことにした。
コーヒーの味が、自分が飲んでる銘柄と偶然一致していたので、恵美は不思議に思い、後輩に訊ねるも
「そうだったんですか?」
と拍子抜けな返事が帰ってきた。
あまりのおかしさからか、久しぶりに恵美は男に興味を持ち、
後輩に名前を求める、彼はこう答えた、
その名前は、どこにでもいるような普遍的な名前で、覚えやすかったという。
「古市です」
恵美もその名に覚えがあった。
ただ一人、手をかけてない有望な社員であったと




