出勤二日目 公園→居酒屋→公園 後編
以前の暴露があったことを自覚してか、今回は先輩の酒のペースがスローリーになってしまって、
話がメインとなり、
結局、俺もそこまで持つわけでもなかったので、
外で続きを話そうと、酔い、いつもより大胆な先輩により、お勘定をし、最初の公園へと、
よたよた歩く先輩の方を抱きながら、
そのかわいい横顔を独り占めして、歩いていった。
夜の公園はすっかり変わり、人気もなく、ただ数本の電灯が寂しく光り、その下のわずかな範囲を照らすのみである。
朝来たときには、子供の声で溢れていたのに、今は木枯らしが吹く音すら聞こえない。
電灯が照らしているベンチに先輩を座らせて、横に俺も座る、それは居酒屋にいたときとは違う、
酔って、いつもほどではなかったとは云えども、やはり酒が回るとキツくなるのか、先輩の体はぐったりとしていて、今は俺に任せられている。
「古市くんの体、暖かいね」
そう呟きながらその小さな顔を俺の肩に、
先輩の鼓動が俺に響く、優しく、ゆっくりと。
「このまんま、お話ししようよ」
「…はい」
「今日は、楽しかったよ、ありがとね、古市くん」
こう近くで囁かれると、何を言われたかも耳に入らないほど緊張してしまう、
俺の、早く加速した鼓動は恐らく先輩にも聴こえているだろう。
「こんなに男の人の近くにいるの、お父さん以来かなあ」「そんなですか」
抱きつかれているわけでもないのに、そう言われてしまえば、スゴいことなんだ、と意識せざるを得まい、
大好きな先輩を…恵美先輩が俺に、父親と同じくらいといえば傲慢だが、
少なくとも他の男より信頼を寄せてくれていると考えると、なんだかとても嬉しくなる。
「…古市くんは楽しかった?」
「はい!それはもちろん!」
「じゃあ、またどこかに誘ってくれるよね、
私の練習」
…私の練習。
そうだ、これは先輩が彼氏を作るために、と
二人で考えたことで、別に、先輩には俺がどうこうなんてことはまるっきり頭にはないんだ。
次の約束をしてから、先輩は立ち上がってタクシーを呼んだ。
俺は一人ベンチに残って、
もう少しだけ、この気持ちに浸っていることにした、
いつか来る終わりの時を、
このときばかりは頭からかき消して、
そうして最初のデートは終わりを告げた。
出勤二日目、終わり




