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出勤二日目 公園→居酒屋 中編

公園にいても仕方がないので、まだ夕方に差し掛かるくらいではあるが、バーに向かうことになった、無論先輩の意見なのであるが。

「そういえば先輩って、ビールかワインしか飲んでませんよね、日本酒とか焼酎とかは」

「あー私、米の酒飲んだこと無くて、飲まず嫌いしちゃってる」

先輩のこの発言に、俺のお酒マニアとしてのアンテナがピンと反応してしまう、

剛の者ではないが、酒そのものには愛情を注いでいる俺からすれば、飲まず嫌いなどもっての他なのだ、

ここは、先輩に米酒の良さを分かってもらうしかない。

「今日は居酒屋いきますよ」

「ふぇっ!?」

もはや有無を言わさずに、手を取って走っていく、

先輩の手を取って公園を駆け抜け、

いつものルートを通っていく。

米酒の良さがわかる店は、公園のすぐ近くの商店街の中にある、

ここの亭主は、マスターとはまた違った良さを醸し出している人だ。

「ゼーゼー…いきなり手を握るなんて、意外と強引なんだね」走り疲れている恵美先輩に言われてようやくハッと気がつく、何てことをしていたのだ、まだ彼氏ですらないのに、手を繋いで商店街を歩くなんて。

「申し訳ございません、おごらさせてもらいます…」

「そんなことはどうでもいいよ、納得させられる米酒があるってことなんだから、ね?」

やや期待の度合いも高いが気にせずのれんをくぐると、亭主がこちらを見て爆発音のような大きな声で呼び掛けてきた。

「おお!古市じゃねぇか!久しぶりだなあ!隣の姉ちゃんは誰だ?…コレか?」

「いや?」「…ムッ、会社の上司です、今日は古市くんに美味しい米酒を飲ませてもらえる店があると聞いて、引っ張られてきました!」

今否定したとき、先輩が少し膨れ面になっていたのは何でだろうか、全く検討もつかない。

亭主も俺を見てなぜかやれやれといった様子。

「古市、じゃあ今日もあれにするか?」「ああ、宙弧頼む」

「古市くん、宙弧ってなに?」

「飲めば幸せになれる魔法の米酒です」

うたい文句がそうなのだから、そうなのだろう、

先輩は不思議がっている、当然だろう、飲めば幸せになるなんて、滅多にないキャッチフレーズであるし。

しょうがないので、ちゃんとした説明をする。

「この酒は、季節によって味わいが違うのです、新酒から始まって…そうですね、今なら生酒ですよ。」「どんな味なの?」

味も説明しようとすると、亭主が間に割って入ってくる。

どうやら、1度飲んでから確認してみろとのこと、これがこの亭主のいい所だ、

とりあえず酒を飲ませてくれるから、うんちくで満たされないですむ。

「それでは、頂きます…」「じゃあ松浦一も追加で」

松浦一は香りが芳醇で甘く、初心者にはピッタリな米酒となっている。

そして、宙弧を飲んだ先輩はといえば、信じられないといった様子の顔をしていた。

「これなら、米酒もっと早く飲んでおけばよかったわ」「でしょう?」

米酒が認められた節があって、俺も来た甲斐があったと言うもの、

亭主の選ぶ酒に間違いはなかった。

「次は松浦ー、どうぞ」

「よし!…甘い!甘くておいしい!」

亭主も嬉しそうな顔をしている、

ごたくを並べられるより、シンプルな感想が好きな人だから、余計にだろう。

先輩がそんなにごたくを並べて飲む人じゃないのは知っていたので、ここの店との相性は抜群である。

「それじゃあ飲むわよ!」「枝豆追加で…」


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