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出勤七日目 グランドフィナーレ 前編

それから俺たちは、幾月もの時間を共に過ごすこととなった、と言うのも、付き合って即日先輩が家に転がり込んできたのだから仕方あるまい。

「今までと違ってグイグイ来ましたね」

「甘えさせてよマイダーリン?」

…俺が言うのもなんだけど、恵美は相当なやり手なのかもしてない、

最初からこういう展開で付き合うよう持っていったのではないかと。

社内でも持ちきりの話題となった、

当然だろう、堅物の美人部長をその部下が落としたとあれば、しかもお互いに休みの日。

うちの部署では

「太一が休んでる恵美の家に押し掛けた」事になっている。

「口先三寸は相変わらずですね」

「本当のいきさつを話して信じてもらえるとも私は思わないよ、どうせならとびきりのロマンスに仕立てあげないと」

その時はいたずらに、してやったりと恵美は笑っていた、

付き合い始めてからだろうか、こんな子供な一面を見れるのは俺だけの特権。


なんて事を思いながら、一人で事務作業を行っていると、突然額に冷たい感覚と水滴がやって来たので、上を見ると、鹿児島先輩の姿があった。

「いやはや、全くお熱いこって」

「ああ、鹿児島先輩」

鹿児島先輩だけはあの日の事を知ってる、

恵美を無断欠勤にするわけにもいかないので、何とか電話させて理由を話させたから、

最初は吹き出して電話の向こうで心配されていた様子であったが、すぐに咳払いをし、状況の確認をしてくれた、こう言うときに冷静な先輩がいると有り難いのだとつくづく感じる。

「…和歌山先輩の尻に敷かれてるのか?」

「今のところ、打つ手なしですね」

鹿児島先輩には、このような話をよく聞いてもらう、先輩は経験豊富とのことで、様々なアドバイスをしてくれたりするので、とてもありがたい。

「…床の上では?」「まだオープン戦もしてませんよ」

「案外そういうところで逆転できるもんだ、今日にでも公式戦を組んでみろ」

そう言って鹿児島先輩が密やかな声で策を授けてくれる、それはそれは、非常に的確かつ緻密な策を。




その夜、俺は恵美を誘って久々にバーへと足を運んだ、鹿児島先輩に授けられた策を実行するために、

何も知らない恵美を横目に、心は張り裂けそうになりながら。

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